2013年09月30日

さとなお:ひな鳥 そのだ(大井町)

伊藤さん、ありがとうございます。

長い時間軸で見ると、東日本大震災のあと、何かが自分の中で途切れているんですよね。
阪神大震災を神戸で実体験したあともかなり生活習慣が変わりました。毎週あんなにスポーツしてたのに、以降、まったくしなくなったとか、そういう習慣的な何かが激変する。

今回の大震災では、「食」についてちょっとそんなところがあり、自分をうまく扱いかねています。もちろん興味も関心もある。相変わらず新規店は開拓してるし楽しんでいる。ただ、なんだか「書けない」んです。「自分」と「食」との距離感を測りかねている・・・そんな感じです。

すいません、ゆっくりリハビリしております。

そんな今日は、どうしようかな、大井町の「ひな鳥 そのだ」を。

ここ、小石原さんから教えてもらったんだけど、いわゆる鳥の素揚げ系です。
丸ごとの国産鶏を、骨付きのまま岩塩で味付けして、衣をつけずに素揚げする。こういうお店、最近じわじわ増えてますが(「とよ田」あたりがルーツでしょうか)、この手の店では特にお気に入りです。

素揚げの火の入れ具合が絶妙なのは言うまでもなく。
この店は特に他の一品が充実していて、しかもどれもこれもうまいのがすごいです。

基本は「むね・ももセット」(1400円)で、これが素揚げ(品切れの場合があるので電話予約時に人数分予約しておくことをお勧めします)。

あとは、「砂肝素揚げ」「ギョソ揚げ(魚肉ソーセージ揚げ)」「せせり山椒揚げ」「にんにく丸揚げ」「安納芋揚」などの揚げ物がたくさん。どれもこれもあっさりしてるのでもたれない。
そのうえ、野菜系の一品も充実。「巨大万願寺」「手作りポテトサラダ」「たたQ」などなど。もちろん「鳥刺し」「もつ」なんかもあるし、「豚足」やらもある(というか、店の壁がメニューで埋まってます)

お酒は鹿児島(店主の故郷らしい)の焼酎。いいの揃ってます。前割もあったりします。

そのうえ、このお店がいいのは、「人」がいいですね。店主も奥さんもお店のお客さんも。

伊藤さんも書かれてるように、「店」じゃなくて「人」なんですね。「食」じゃなくて「人」なんです。
さりげない小さな小さなお店だけど、そしてとてもシャイなご夫婦で、一回目二回目だとその「人の良さ」がわかりにくかったりするのだけど、なんだか通えば通うほど味が出て来そうな、いいご夫婦です。

あー、書いてて気づいた。2ヶ月ほど行ってないわ。そろそろ行こうっと。

posted by さとなお at 07:08| とり料理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月29日

いとう:イバイア(東銀座)

さとなおさん、こちらこそよろしく。
時々読み返すんですが、すでに対談した店もかなりの数に上っていて、それだけでも財産です。
元々「おいしい店リスト」で名を馳せたさとなおさんですから、特にオールドファンは、食べ物について語ってほしいと真に思ってます。

シャオヘイくんも、以前ほど食べ物しなくなった感じだけど、元気でなにより。友人から「広島に行くので、どこかいいお店を紹介して」と頼まれ、店じゃなくとヒトを紹介するよと、カレに一任しました(笑。

さて、相変わらず地方のお店は思いつかないので、肉中心のうまいもん屋つながりで。まさに「男たちが数人で食べるにふさわしい」店、東銀座の「イバイア」を紹介します。と聞いても、さとなおさんも読者の方もほとんどご存じないかと思いますが、肉で有名なビストロ「マルディ・グ」の元マダムが出した店、といえば、なんとなくイメージがつくかな。

実は不思議なご縁で、フラワーコーディネーターの妻のところに、オープン祝いの胡蝶蘭のオーダーが入り、「イバイア」の存在を知りました。妻が花を届けたレセプションの日には、銀座の有名なバー「オーパ」や「マルディ・グラ」からもお手伝いの方が来られていたようで、なかなか銀座らしい門出だった、とのこと。

場所は東銀座。裏歌舞伎座(そんな言葉はあるのか 笑)といいますか、マガジンハウス裏。廉価で良質なこぢんまりとした飲食店が密集するエリアで、確かこの場所は以前、中華料理店だったような。近くにある「スモールワンダーランド」も以前は中華料理店だった記憶があり、なんとなく歌舞伎座のリニューアルに向けアフターシアターにふさわしい店が出来始めたかなと、少しうれしくも思います。
ちなみに朗報ですが、「イバイア」もそれを考慮に入れてか、日曜夜も営業されています。

「イバイア」という、スペインっぽい語感からも想像されるように(ちなみに、IBAIAで検索すると、フランスとの国境付近にあるホテルが一番にヒットします。2013年8月現在)、バスク地方の料理を中心としたビストロ、とのこと。
シェフも、「マルディ・グラ」のオープンからずっと和知シェフの元で肉焼きを学んできたツワモノ。メニューに並ぶ肉々のおいしそうなこと。最初にオーダーしたシンプルなハムから、おいしくてあっという間になくなりました。

そして、料理の感じも「マルディ・グラ」なものを少し想像して訪問したんですが、ハーブの使い方や焼いた肉の塊などに片鱗は感じられるものの、バスクを意識したソースの展開やマダムのご実家から送られるという野菜の扱い等に、早くも「イバイア」らしさが存在していて頼もしい限り。

ワインリストは、もう少し種類に幅があればもっといいかなと感じますが、それはこれから徐々に増やしていかれるかと期待します。

お盆の時期のように強烈に暑いと、肉塊という感じではないかもしれませんが、これから近づいてくる食欲の秋には、恰好の一軒となることでしょう。
posted by 伊藤章良 at 15:09| フレンチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月30日

さとなお:カジーノ(広島)

伊藤さん、一ヶ月あいてしまって本当にすいません。

あちゃー6月をあけちゃったー、と思ってからすでにまた1ヶ月。なんでかしらないけどこのところ余裕がなくて申し訳ありません。でもこれは続けましょう。って「お前が言うな」って感じではあるけど。

ええと、前回の伊藤さんが地方だったので、ボクも地方に行こうかな。
先週、シャオヘイくんたちに連れて行ってもらった広島の「カジーノ(CA'GINO)」にします。

肉中心のうまいもん屋、という、オヤジたちにはたまらないレストラン(一応区分としてはイタリアンかな)。たぶん伊藤さんも好きですよ。で、店内の感じも男たちが数人で食べるのにぴったり合う感じ。こういう店、いいですね。

料理はそれぞれドカンと迫力あって、味付けもシンプルで力強くて余計なことをしていない。何も言うこと無し。

いわゆるシャルキュトリー、「加工肉盛り合わせ」からのスタートだったのだけど、どれもこれも地元の肉を使った自家製でなかなか上手。あぁこの店は何を食べてもきっと美味しいんだろうなあと、その時点で安心してくつろいじゃいました。

特に印象的だったのは「和牛のドイツ式生コンビーフ」と「もみじ豚のアイスバイン」。それに「もみじ豚スネ肉の低温ロースト」もよかったなぁ。

生コンビーフはでかくて丸い形状で、深いうまみがあって感心したし、くどくなりがちなアイスバインは逆にシンプルで飽きが来ない味。うまみ凝縮。スネ肉は肉の香りが実によかった。

他にも「生マッシュルームとチーズのサラダ」もよかったし、付け合わせの焼きポレンタやクミンシードのポテトなんかもちゃんと美味しい。うーん、いい店だ。

ワインが残念ながらあまり印象に残ってないんだけど、品揃えはいい感じ(あんまりくわしくリストを見てないんだけど)。気の合う仲間とわいわい「肉を喰らう」という日にうってつけだと思うです。

広島だから東京からは遠いし、せっかく広島行ったら他にもいろいろ食べたいものがあると思うけど、変化球としてぜひ覚えておいてください。

posted by さとなお at 10:06| イタリアン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月30日

いとう:男子厨房 海の家(気仙沼)

「我路」とは、昭和なネーミングですねえ。お店の雰囲気も、とても落ち着けそうな感じ。銀座では貴重です。これはメモメモ。

さて、ぼくも同じ居酒屋なんですが、気仙沼の復興屋台村で見つけた「男子厨房海の家」という店を紹介します。

今年のゴールデンウイークに、さとなおさんのこのページを参考にして、宮城・岩手の被災地を回ってきました。さとなおさんがお嬢さんと訪れたルートは、とても分かりやすく写真も入って簡潔で、大変参考になりました。ありがとうございました。
さとなおさんは日帰りのスケジュールゆえ南三陸から仙台に戻られたようですが、ぼくはさらに北上して気仙沼に一泊し岩手の陸前高田まで足を延ばしました。その際、気仙沼の地で一度訪れてみたかった復興屋台村を訪問しました。

気仙沼には、仮設の屋台による商業施設が二カ所あり、ぼくが目指したのは気仙沼横丁。こちらの方がなんとなく飲食店に特化した印象を持ったからです。ただ訪れてみると、残念ながらすべての店が夜の営業をしているわけではなく、雨だったせいもあり人影もまばらで寂しく感じました。一軒一軒のぞきつつも、最初から行こうと決めていた店があって、迷わずドアを。そこが「男子厨房海の家」です。

こちらは、気仙沼で旅館や民宿を営んでいた方が、震災で仕事場やご自宅を失いつつも三人で集まって再スタートされた希望の店。津波でも料理の腕前は流されなかったと自負する面々による、地元の食材を高い鮮度のままに提供する貴重で希少な空間です。テーブル二卓、カウンター6席ほどの店ですが、横丁の外も中もほとんど人影がまばらな中、すでに7割程度埋まっていました。

入った瞬間に、ここはいいなあと感じる空気感。復興屋台村気仙沼横丁として、ある種観光名所的な打ち出し方をしながら、「海の家」は地元の面々ばかりでにぎわっています。中にはケーキを持ち込んで誕生日祝いをするグループも。そんな中で、明らかによそ者のぼくも参加させてもらいました。

というのも、「海の家」スタッフの皆さんは、笑顔を絶やさず温かい接客で、こちらからの料理やお酒に関する質問にも具体的に丁寧に答えてくださる、それはもう快適の一言。
そして、高級魚介を扱うことで有名な漁港の町だけあって、名物料理も豊富。
「モーカの星」と呼ばれる、モウカザメの心臓の刺身は、ピュアな赤い色が目を引き、絶妙の弾力が口の中で踊って強烈にウマイ。さすがフカヒレの本場といった感じ。また、「まつも」なる栄養価の高い海草も美味。高級料亭にしか卸されないものを「海の家」では山盛りで。気仙沼の家庭の味として出された「あざら」は、白菜の古漬けや酒粕等を煮込んだ料理。これもまた酒がすすみます。

仮設の店内ですが、それを感じさせない気仙沼らしいアイテムも目を引きました。特に、地元で「風の広場」というワインバーを営む伊藤雄一郎さんが撮影されたという、気仙沼の被災現場と星空との写真があまりにも美しく忘れられませんでした。
posted by 伊藤章良 at 18:10| 居酒屋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月28日

さとなお:我路(銀座)

エスキス行きたいんですよねー。

でも、会社を辞めて独立してからジーンズにシャツが基本になり、なんとなく高級フレンチは行きにくくなっています(まぁ在職中もジーンズが主でしたがw)。昔はフォーマルっぽい格好して出かけるのが好きだったけど、いろいろ変わりますね(まぁ世の中の流れも大きくカジュアルに向かっていますが)

ということで、同じ銀座のちょっとカジュアルな居酒屋をご紹介します。

三原橋の「我路」。たぶん「がろ」と読みますね。

歌舞伎座こけら落とし公演を観たあとに「近場でどっかないかな」と歩いているうちに見つけ、「まぁここでいいか」とわりと仕方なく入った店です。正直いうと、22時と時間も遅かったのでどこでもよかったんですね。入り口の看板の感じから言って、チェーン店に毛が生えたくらいな感じかなと(失礼!)

でも、入店してすぐ認識を改めました。
いや、かなりカジュアルなことは確かだし、店内も趣きがあるタイプでもない普通の居酒屋風なのだけど、日本酒の品揃えやメニューを見たらすぐ「これは当たりかも!」とわかる感じ。

オーナーはバンダナにジーンズの70年代っぽい親父さん。
若く見えるけどたぶんかなりお年上。でもとても親密で「よく来てくれたー」とニコニコで迎えてくれます。

店は広くはないけど、22時なのに満席で活気溢れ、みんなに愛されている感じが伝わってくるし、頼んだ「野菜のさっと煮」や「ヤリイカの刺身」「さつま揚げ」「あら煮」など、どれもこれも実に真っ当かつ旨い。カウンター内の板前がかなりちゃんとしてますね。いやー意外性もあって堪能しました。

オーナーはポイントポイントで接客に(雑談に)くるのだけど、彼の感じも素晴らしく、あーいい店だなぁと。

日本酒もうまいし、全体に安価。銀座というよりは新宿値段ですね。

銀座でカジュアルで気楽な店を探していたので、とてもいい出会いでした。
なくなってしまったシネパトスから歩いて30秒くらいのところ。二葉鮨の数軒となりです。おすすめ。

posted by さとなお at 20:19| 居酒屋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月26日

いとう:エスキス(銀座)

>さて、ではボクは伊藤さんも言及された「縄屋」を書いてみます。

ぼくの行きたい店リストの中でも、ずっと上位にいる「縄屋」なんですが、未だ訪問がかないません。ツイッターでさとなおさんが「縄屋」に向かっているつぶやきを読んで、正直「誘ってよ!」と思いました(笑。

こういう店こそが、本来タイヤメーカーの販促目的だったミシュランガイドが選ぶべき三ツ星店かと、思ったりもします。

さて、「縄屋」に対抗できるようなトコロには、最近、東京と大阪往復ばかりの日々が続いているぼくには見当たらず、真逆に東京の中心、銀座のフランス料理店「エスキス」を紹介します。

銀座並木通りで、比較的高級な飲食店ばかりが入っているビルの上層階。
2012年にオープンした高級フランス料理店の中でも、シェフ、ソムリエ、パティシェに3人のスタープレーヤーを集めた話題のレストランです。以前立ち読みした「東京カレンダー」の予約の取れない店特集に載っていたので、満席かなあと思いきや、金曜の夜なのに5割程度。

各スタープレーヤーwの仕事は、以前の環境で別々に体験したことはあったのですが、「エスキス」では、逆にそれぞれの個性を押さえ、融和や流れを重んじた印象を受けました。最高級の料理やワインやお菓子だからこそ、何か一箇所だけが突出している訳ではないので、それを理解している面々による構成やマリア―ジュは、バランスがよく優雅で、すばらしいものでした。

よく言われるフランス人シェフの和テイストは、「春の苦み」を幾層にもたたみかけてくる創意と工夫にあふれ、日本人でありなからも驚きの連続。合わせるお酒も、こちらは若干セオリー通りですが、日本酒の「獺祭 磨き二割三分」が登場。

デザートもおいしかった。特に、ミニャルディーズを全て残さず食べたのは、フランス料理店ではほとんど記憶にないぐらいです。

それにしても、こういった和のエスプリさえも感じられるフランス料理を体験すると、いかにフランス料理店のバリューが高いかを改めて認識します。同じレベルの食材や手を加えた料理を都心の日本料理店でいただくと、料理だけで1.5倍ぐらいするのでは、とも思いますね。料理以外のスタッフや内装の経費も考えると、高級フランス料理店の経営も大変だなあと、そんなことも感じてしまいました。

唯一残念な点。
ぼくは、客それぞれのプライバシーを最大限に配慮することが、一流レストランとしての証だと考えています。ゆえ、「カンテサンス」や「京味」のような店を例にとっても、メインダイニングにカメラを持ち込ませず、写真撮影を禁止にしています。
「エスキス」でも、食べログの「エスキス」のページを見ると、個室以外は原則として写真撮影禁止と記されていたんですが、ずっと奥のテーブルで、ピッ、シャカッ、ピッ、シャカッと、写真を撮る大きな音が響いてました。

料理もワインもデザートも一流ですが、惜しむらくは、サービスのみ一流と言えないところが、満席に届かない理由かもしれません。
posted by 伊藤章良 at 17:57| フレンチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年02月24日

さとなお:縄屋(京丹後市)

>カタログ的な店ばかりが乱立してしまい、

その通りだと思います。
マーケティングされた店はつまらないですね。最近特にそういう思いを持ちます。少々品揃えが少なくても、ほとんど高級食材を使ってなくても、全然サービスが洗練されてなくてもいいんです。もっと別のところに感動の在処がある。

でも、それをちゃんと評価する大人が減っているんでしょう。

ただ、少しずつ元に戻りつつある気はしています。「そういうマーケティングされた店を追うこと」に疲れ始めた人が増えてきてますよね。

さて、ではボクは伊藤さんも言及された「縄屋」を書いてみます。

立地がありえない店、というのもわりと多く行きましたが、この店はその中でも最右翼のひとつでしょう。

一応、京都府なんだけど、京は京でも京丹後市。丹後半島の真ん中にあります。しかも店までの道が真っ暗。寂しい国道からさらに横道に入り、「まさかこんなところに?」と疑いも最高潮に達したあたりにポツリと高級割烹があるのだから驚きます。

暗い暗い細道にぽつりと小さな行灯みたいなものが置いてある。目印はそれだけ。
地元の人と一緒に行ったのだけど、その人が「ここです」とクルマを止めてもなかなか信じられないようなロケーションでした。これはよっぽど腕に自信がないと店を出せない立地だなぁ。

そして店に入って二度目のびっくり。
この立地にはありえないくらいモダンなんですね。もうちょっと田舎風日本家屋かと思っていたら、実にお洒落でセンスがいい。窓を大きくとってあり、天井も高く部屋も広い。とても伸び伸びした空間。ニューヨークのロフトを割烹に改装したようなイメージを想像していただくといいかもしれません。

どうやらご主人の出身地らしく、もともとご実家が仕出し割烹をしていた場所らしいですが、それにしてもこれをこの立地で新築したのかー、と驚きます。

ご主人はまだ若く、30代。白衣ではなくボタンダウンで現れました。料理人というより美大出身の絵描きという感じ。
室町和久傳で修行したあと、ここに2006年に店を開いたとのこと。和久傳かーと正統な割烹を想像して待っていたら、料理で三度目のびっくりでした。

なんというか、足かせがない自由さというか、「枠」がないですね。
もちろん日本料理なのだけど、基礎をしっかり固めた上で(創作料理みたいな薄っぺらいものではない、という意味)、いろんな変化球を投げられました。

それを支えているのが丹後の海の恵みと畑の恵み。
たぶん昔からの仕入れルートなのでしょう。地元の漁師・農家と信頼関係がないと成り立たないようなすばらしい食材が次々に並び、卓抜なセンスでそこから持ち味を引き出していきます。

美味しいなぁ。
今回に限っては焼き物がほんのちょっとだけ不満でしたが、椀物の素晴らしさ、ご飯までの流れの隙のなさ、野菜の使い方のセンスの良さなど、再訪を誓わせる素晴らしい料理群でした。

また行こう、と迂闊に言えない立地ですが、でもまた行こう!

posted by さとなお at 19:52| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年01月28日

いとう:うを徳(神楽坂)

さとなおさん、今年もよろしくお願いします。
そういえば、「縄屋」に行っておられましたね。新年早々さすがのフットワークです。

>二子玉川の「すしき邑」(きむら:きは七が3つ)。

いやあ、ここはいい店ですよね。
天ぷら店でも修業をしたという個性派で、その天ぷら店から紹介されて、ぼくも行きました。実は「東京百年レストランII」で紹介させていただこうかどうか迷いに迷い、ある事情で断念したんですが、直後にミシュラン初登場二つ星。ぼくが星を逃したような気分でしたw。

さて、さとなおさんのお鮨紹介に対抗して、ぼくもお鮨にしたいなあと想いをめぐらせていたんですが、なかなか取り上げたい店に出会わず・・・。ちょっと遠いものの、同じく江戸前つながりで、明治時代から続く神楽坂の料亭「うを徳」を取り上げます。

「うを徳」は、神楽坂から一本水道橋側、軽子坂と呼ばれる通り沿い。神楽坂から本多横丁を折れて軽子坂に出たら右折すぐ。軽子坂には居酒屋「ちょうちん」をはじめ馴染みのお店が多いのですが、回りとは一線を画する「うを徳」の荘厳な玄関は、いつも前を通りながら「こんな店にどんな人が来るのだろう・・・」とか考えていました。

ところが、ひょんなことで「うを徳」の女将さんと知り合いになり、とても気さくな方だったし、せっかくのご縁と思って予約を依頼。10年来続く食べ仲間との新年会となりました。

こういった料亭の引き戸を開ける瞬間って本当にワクワクしますが、さらに、洋服姿しか存じ上げなかった女将さんが、もちろん着物でびしっと正座して玄関で待ち構えておられる姿を見て、「やっぱり、違うなあ・・・」と嘆息。時が止まったような二階の大広間に通されて、食事がスタート。

「時が止まった」という表現は、感動のニュアンスとして料理にも当てはまります。しっかりとした味付け、迷いのないストレート香り、十分な量。
それぞれ全ての皿が、ブレのない潔さといいますか、代々受け継がれてきた東京の味とでも表現するか。そこには、ネットやマスコミの餌食にはならなかった孤高の強さや伝統が脈打っています。東京の日本料理も新しい世代に入って発展目覚ましいですが、こうして「うを徳」の料理に接すると、やはりそれらは京都の模倣でしたないんだなあ、とまで感じさせられました。

聞けば、他から人を雇うことなくずっと家族経営で、親子で代々引き継がれた味を守っておられるとのこと。清酒もワインも一種類ずつしかないし、料理はコース二種類のみ。不器用な経営といってしまえばそうなのですが、「うを徳」に清酒やワインが何種類もあっても、それは余計でしかない。というか、一時代前って、どんな店もたいていそうだったような気がします。ところが、店のコンセプトを理解しようとせず、「ここには鍋島を置かないのか」みたいなことを平気で言ったり書いたりしてしまう生半可な知識の持ち主が増えた結果、カタログ的な店ばかりが乱立してしまい、逆に「うを徳」のようなやり方が希少で貴重になった。そんなことを考えさせられました。

実体のないスピリチュアルな話を飲食店に対して持ち出すのは個人的に「否」としつつも、いつも以上に会話も弾み楽しい夜となったのは、「うを徳」に漂う「気」のようなモノが、ぼくたちを心底リラックスさせてくれたのではないか、と密かに感じて納得しています。


posted by 伊藤章良 at 22:27| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月23日

さとなお:すし㐂邑(二子玉川)

伊藤さん、「東京百年レストラン ll」出版おめでとうございます。

前作同様、すばらしいと思います。
少なくともボクは名作だと思うなあ。こんな本の巻末に対談出演させていただき、光栄でした。ありがとうございました。

あと、「香住 北よし」も良さそうですね。
香住っつうとすぐ「カニ」を想起しますが、干物とへしこがうまいのがいい。へしこだけで5合くらい飲めますw

さて、ボクは久しぶりに鮨屋を書いてみようと思います。

二子玉川の「すし㐂邑」(きむら:きは七が3つ)。

京都の飯尾醸造の富士酢はボクの家の愛用品でもありますが、こちらの五代目と話しているときに「東京でうちのお酢を使ってくださっているお店」ということでいくつかご紹介していただいたお店のひとつ。

この店、なんと富士酢に出会って酢飯を根本から作り変えたそうです。
酢飯の味を根本から変えるって握りの味の方向性を変えること。大変なことです。そこから数年は試行錯誤して苦労したけど富士酢を使い続け、ようやく最近、思ったような味にまとまったとか。

白酢と赤酢をブレンドした酢で握った酢飯がこれまた驚きのアルデンテ。
このくらい固く仕上げてある酢飯は、数年前の蔵前「松波」くらいしか記憶がありません。そして「握りを食べ終わった後、三粒口の中に残ることを目指しています」とご主人が言われるように数粒だけ最後に口に残る量。この名残の数粒をぷちぷち食べる喜び(当初は十粒くらい残ったのでそう伝えたらすぐ修正されました)。

きれいにパラけると同時に歯がうれしい固さ。
固めの酢飯が好きなボクとしては堪えられない握りなのでした。

タネはタネでほとんどすべて「熟成」を考えられており、ぎりぎりまで寝かしてあります。
腐る寸前まで寝かし(何度も失敗して魚を捨てないといけなくなったとか)、表面を削って中の方だけ握りに使う周到さ。その魚の個性とうまみが最大限絞り出されています。そういうタネに合わせて味が作られた酢飯と合わさって、ほぼ完璧なバランスに仕上がっています。

うまかったなあ。

ちょうど早い時間で貸切みたいなものだったので、ご主人といろんな話ができました。そしてその情熱に圧倒されました。

二子玉川は少し遠いけど、また行きます。

posted by さとなお at 17:45| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月28日

いとう:香住 北よし(大阪・天満)

谷町の「味酒かむなび」、と書くところも、郷愁と幼児体験の違いがあるかもしれませんね。大阪人は、谷四、谷六、谷九といいますが、谷町とは言いません(笑。

この「味酒かむなび」は未訪です。しかもミシュランで★を獲得していることも知りませんでした。これはまた一つ、貴重な情報です。最近仕事の関係で頻繁に大阪に行くので、ぜひ行ってみます。

さて、ここで少し告知をさせてください。
「百年後も、同じ場所にて営業していてほしい」と願う店を綴った本「東京百年レストラン」を2年前に出版し、「さなメモ」にも取り上げていただきましたが、このたび、その2作目「東京百年レストランII」を上梓いたしました。

この本も、コンセプトは前作とまったく同様で、百年続いてほしい店を独自の視点で40軒選び、紹介しています。マスコミもブロガーもレビュアーも、新規にオープンした店ばかりを追っかける今、こういったテーマでの活動も地道に続けていきたいと思っています。
なお巻末には、お忙しいさとなおさんにも協力いただき、佐藤尚之×伊藤章良の対談「外食はどこへ向かうのか?」も収録しました。

そして今回のうまい店紹介。続いて大阪でいきます。
天満にある居酒屋「香住 北よし」。
香住とは、日本海にも瀬戸内海にも接している意外と広い兵庫県の、日本海に面する町。カニでその名を馳せる漁港で知られています。
その香住で、明治12年以来干物店として営業している「北由商店」にて加工された干物類や、香住漁港で獲れた魚介をメインにした店なんです。

と、聞いただけでも、特に関東の食べ好きにはたまらない店だと思いませんか。

天満は、大阪の中心から近く、しかもリーズナブルに飲み食いできる店が集中する幸せなエリア。独自の感覚で立ち上げる新しい店も集まり始めています。
「香住 北よし」は、恐ろしく長い天神橋筋商店街から一本脇に入った路地沿い。カウンター10席ほどの小さな店を、日本料理出身の店主と女性で仕切っています。

なんといってもここでいただく2トップは、干物とへしこ。へしことは、魚の糠漬けのこと。本来は若狭湾の名産とされますが、香住も、隣り町といってもいい陸続き。強めの塩加減と独特の香りを持つこのへしこをつまみに清酒を飲む、という至福は、それはもう何ものにも代えがたいマリア―ジュであります。
そして干物。ぼくたちが東京で普段食べている、熱海・伊豆あたりで産出される干物とは、魚の種類も大きさも味わいも異なる逸品揃い。全体的に小さくて味が濃くて、こちらもまた酒がすすみます(笑。
他にも、サラダ類や干物類と炊き込んだご飯も多種あって、喜ばしい限り。まさに清酒好きには、大阪でも筆頭にあがるべき店でしょうか。

そうそう、清酒については、意外にも人気地酒も豊富に取り揃えるものの、ここでは、同じテロワールの「香住鶴」を。この酒、初体験でしたが、でしゃばらず香住の魚に寄り添う感じが品よく、大ファンになってしまいました。

posted by 伊藤章良 at 11:36| 居酒屋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする