2016年03月31日

いとう:祇園MAVO(京都)

もう少し、ランチ特集で続けてみます。
といっても、店へのアプローチとか陽光とか、ましてや発見感とか、そういったものとは少し違って・・・。しかも12時一斉スタートという、あまりフレキシブル性にも富んでいない(笑。場所は祇園、しかも高名な「浜作」の前。おやおやという感じで恐縮ですが、京都のフランス料理店「祇園MAVO」のご紹介です。

もともとこの店は小田原にあり別の名前で営業していました。小田原時代に友人のsinpさんの誘いで訪れ、きめ細やかな食材へのアプローチや前衛的な料理との向き合いに驚き、共感したものでした。
そのときから、近々京都に移転して新たなコンセプトでレストランをスタートすると聞いており、やっと訪問することができた次第。八坂神社の近く、まさに高名な日本料理店が立ち並ぶエリアへの堂々たる参戦です。

「祇園MAVO」のステキなところは様々にあり、書くと長くなってしまうのですが、今回のテーマ、ランチに適したという面で言うと、ティーペアリングなる試み、つまりフランス料理とお茶のコースが選べるのです。
シェフも、京都で店を開いたからには、京都らしさを出したいとのコンセプトを掲げずっと試行錯誤されて来られたと聞いていたものの、ティーペアリングなる挑戦が、どこまで実現されているのかについては、ハッキリいって半信半疑でした。

ワインとお茶の両方出すコースもあるのですが、とにかくここはノンアルコールでいってみようとティーのみを選択。ちゃんとしたフランス料理の食事でワインを飲まなかったのは恐らく人生初、ですよ。ところが結論から述べると、あまりにも完璧にハマりすぎて、食後感としてはもしかしたら途中でワインを飲んでたのではないかと自問自答したほど。

これから試される方の愉しみをとっておくために中身を詳しく書くことはしません。世界中のお茶を抜群のセンスで何種類かブレンドしたり(それ自体が奇想天外なことですが)、抽出方法や抽出温度、抽出時間を変えたり(それを変えるだけで、まるでお椀のような旨味まで感じられるんです)。なにより特筆すべきは色。ほとんど全て(実は最後のコーヒーまで)ワイングラスで提供され、透明の中に色まで楽しませてくれます。例えば肉料理とのペアでは真っ赤なお茶だったり。

いやー、本当に驚き感激しました。そして、アルコール抜きでもフランス料理を愉しめることに気づかせてくださった、MAVOチームに大感謝です。
聞けば、こちらでブレンドしたお茶を何通りか小さな瓶に詰めて販売する計画もあるそう。酒飲みの妊婦さん、産後すぐのお母さんのために。というか出産のお祝いに今でもすぐにほしいですよ(笑。
また、このティーペアリングのみの店(アルコールを出さないレストラン)を東京に出す計画もお持ちのようで、そんな日が実現したら、また改めて、東京でのランチの名店として紹介させていただきます。

posted by 伊藤章良 at 17:55| フレンチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月29日

さとなお:ル・ビストロ・ドゥ・マ(南青山)

> 最近のイタリア料理店は、やっとトウキョウイタリアンの縛りから脱却し、それぞれがキチンとイタリアの地方色を出してくるようになりました

本当にそうですね。
一時期、東京の流行っているイタリアンって画一的でした。まさにトウキョウ風。でも最近は地方色がよく出てきていて食べていて楽しいですね。

あと、ランチ、わかります。

> ディナーの予習的な意味合いとかリーズナブルだからという観点ではなく、その店の個性や立地がランチに訪れたいと思うかどうか

これは意外とない。
ちょっと郊外に出るとわりとあるんですが、オフィス街や繁華街には特に少ないですね。すぐ思い浮かぶのは、築地「魚竹」とか西麻布「三河屋」とかの有名どころになりますが、意外と、駅の近くで老夫婦がやっている小さな定食屋さんなんかもボクにとってはそんな店かな。

去年の夏に、オフィスを乃木坂から骨董通りに引っ越して、まず探したのはそんな小さな定食屋さんです。でもまだ近くには見つかってません。ランチの名店としてはすぐ近くに「ふーみん」があるんだけど、ビルの地下という立地もあって伊藤さんが言う条件にちょっと届かない。

そういう意味で「ル・ビストロ・ドゥ・マ(Le Bistro de MA)」は、そんな感じに近いかもしれません。

 ※2016年にて閉店する予定らしいので、行かれる方はお電話を※

夜も行ったことがありますが、この店はランチかなぁ。
ちょっと天気のいい日の午後遅く、ひとりでふらりと訪れたい店だったりします。

骨董通りを青山通り方面からぶらぶら歩いて、小原流会館越えてスタバ越えて、最近よく行列ができている「クリントン・ストリート・ベイキング・カンパニー」を右手に見ながら左に曲がってひとつめの小道を右。その先に岡本太郎記念館があるのだけど、右に曲がってすぐの右側をよく見ると小さな小さなビストロがあるのです。

本当に小さいし、入り口が全く目立たないので、まず「発見感」があります。
入ってからもそのこぢんまりさに驚きます。小さなテーブルを無理矢理並べて12席ほど作ってる感じなので、人によっては落ち着かなく感じる方もいらっしゃるかもしれません。

混んでると確かに落ち着かない。
でも、すいているといきなり寛ぎの店に変わります。フランスの友人の部屋っぽくてちょっといいんです。耳を澄ますとBGMもフランスのラジオ。薄暗い奥のテーブルに陣取ってゆっくり時間を過ごしたくなります。

この店、素晴らしいことに、ランチを16時までやっているのですよ。
なので、15時くらいに行くとすいています。最近はカフェが増えてこの「午後遅めのランチ」需要を吸収してますが、ちゃんとしたビストロで午後遅いのはありがたいです。

ランチは夜のメニューをピックアップしたもの中心。
キッシュとかラタトゥイユとかの軽いセットがあってそんなに大量に食べたくない遅めのランチでも大丈夫です。
ちなみに夜は典型的なビストロ料理で美味しそうなメニュー名が安価に並びます。うれしいのは「オニオングラタンスープ」が「メインの前後に」という項目で常備されていること。最近ビストロから姿を消しているのでとてもありがたいです。

そして、この店の得意分野はこのあとに待っています。デザートです。

そう、この店、実はデザートがいいんです。
オーナーがパティシエで、もともと梅ヶ丘にあった「レ・トラス・ドゥ・マ(Les Traces de MA)」というパティスリーがレストランになったという経緯らしいので、まぁ想像つきますね。レジ横で焼き菓子やマカロンも売ってます。

でもって、ここのマカロンは「DEAN & DELUCA」でも売ってるとか。
外観が本当にさりげないので、そういう展開も意外性があって、これも「発見感」。

そんなこんなで、幸せな気持ちになってオフィスに戻る。
なかなか充実感ある、いい午後が過ごせます。

posted by さとなお at 22:46| フレンチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月31日

いとう: オストゥ(代々木八幡)

もう年明けから1ヶ月がたってしまい、おめでとうという感じは遠い昔ですね。
ここ最近も、対談を通じてさとなおさんから新しい刺激をたくさんもらっています。常に思考を止めない、いや刻々と変わるご自身の立ち位置に沿って思考を柔軟に変化されていくといいますか。食べ手としての次の段階を自分も模索している状況なので、今年もどうぞよろしくお願いします。

「ヴィノテカ・キムラ」、ずっと行きたい行きたいと、行きたい店リストの上位にいるんですが、未だ訪問叶わず。場所もいいので早々に訪問してみたいです。

ほくも、ニューヨークの「バスタ・パスタ」に行ったことあるなあ。東京の「バスタ・パスタ」にも、何度となく行きました。そういえば昨年でオープン30周年だそうですね。記念パーテイがあったらしく、そこに出かけた何人かに「バスタ・パスタ」に行ったことがあるの? と聞くと、誰もその存在すら知らなかったという。なんだかなあ・・・と、パスタ・バスタファンには悲しい感覚です。

ではぼくもイタリアン続きで「オストゥ」です。
ここは代々木八幡(メトロだと代々木公園)が一番最寄駅ですが住宅街の延長線上にポツリとあり、原宿から代々木公園沿いをぶらぶらと歩いてもたどり着く、なかなか得がたいロケーション。ぼくはかねてより、決してレストランの店内で待ち合わせはせず最寄駅から歩き、その間も食事の前哨戦として楽しんでほしいと言い続けてきました。そんな意味でも「オストゥ」へは、まずはアフーローチも含めて楽しんでいただきたいところ。

それとぼくは、ランチに格別に適したレストラン情報も密かに集めています。それはディナーの予習的な意味合いとかリーズナブルだからという観点ではなく、その店の個性や立地がランチに訪れたいと思うかどうか、という条件。
これも意外となくて、それこそビル内、特に地下の店は難しいし銀座や新宿等、人が多く行き交う場所も雰囲気的にきついかなと思うわけです。

「オストゥ」は、この二つの条件ともにぴったり合う、例えば立春の柔らかな日差しを浴びなから、原宿駅より代々木公園沿いを散策しつつたどり着けば、静かな住宅街の角、ガラス張りの店内にそそぐ陽光が絶妙のライティングとなるレストランに巡り合うんです。

もちろん、ただロケーションだけではなくて料理のすばらしさは言うまでもありません。最近のイタリア料理店は、やっとトウキョウイタリアンの縛りから脱却し、それぞれがキチンとイタリアの地方色を出してくるようになりましたが、「オストゥ」も、シェフが修業したピエモンテ州の料理と今月の料理の二本立てコース。まあ今月のコースもピエモンテの香りがプンプンする硬派な構成になっています。

ランチに最適、陽光きらめくコージーなレストランというキャッチを作ってしまうと、どちらかという女性向きとも受け取られがちなんだけど、特に夜のコースは、ここ最近のイタリア料理店の傾向と比較しても、嬉しいことに一皿の量がたっぷり。この「食べたなあ〜」感は個人的にはイタリアンに最も求めたい要素なんだけど、トウキョウではその現地的醍醐味がなかなか味わえず、皿の上の美しさ健康指向ばかりが求められるゆえか、どうも不本意だったんです。
ゆえ「オストゥ」のコースは、前菜にしろメインの肉にしろテーブルに置かれた瞬間おおっと心の中で快哉を叫びたくなるぐらいの幸せです。

肩肘張らない適度に個性や意志のつまったワインリストも好感。サービススタッフのバリトンボイスが、そんなワインと響き合ってます。
posted by 伊藤章良 at 18:02| イタリアン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月31日

さとなお:ヴィノテカ・キムラ(古川橋)

「ダ・ディーノ」の次の店、「ダディーニ」!

それはむちゃくちゃ行きたいです。
おっしゃるとおり、当時とても好きでした。
あの店がなくなって恵比寿に行く回数が減ったくらいは。

そうですかー。
ちょっと遠いけどいいなぁ。生きていく楽しみが増えましたw

さて、ではボクもイタリアンを。
古川橋の「ヴィノテカ・キムラ」です(白金高輪と言った方がわかりやすいかな)。

このお店、ここ2年くらい、わりと行っています。
好きな要素が揃っているんです。

お店なんかありそうもない路地にひっそり灯りがともってる外観の感じ。
ウッディな内装とその小さな規模の感じ。
カウンター中心で厨房の動きを見ながらゆっくり食べられる感じ。
ご夫婦でやっているとても親密な感じ。
ワインの揃えもよく良心的な感じ。

そしてシェフがフェイスブックをやっていて、日々の動向が伝わってくるのもうれしいです(ブログだと見に行かないといけないけど、FBだと日々の息づかいがさりげなく伝わってくる)。

ちょうど一昨日行ったのですが、シェフのフェイスブックで年末の余り物を心配してたので、年末の食材処理班として立候補したんですw
で、「余り物をおまかせで」ってお願いしたんだけど、逆に「いや、これ、余ってないでしょ」のオンパレード。いままではアラカルトで頼んでいたんだけど、これからもずぅっとおまかせにしようと決心するくらい、どれもこれもうまかったなぁ。

伊藤さんが引用したように、最近「相手の流れにただ乗って流されていく外食」が好きなんですけど、なんでしょうね、いままでは食べたいものが明確にあるときが多かったのだけど、最近は相手の世界観にゆったり乗っていたいんです。もうある程度食べたいものは食べた、という実感があるからかもしれません(生意気な言い方ですが)。

そんな流れのなか、「白トリュフのリゾット」(まぁ鉄板ではあるけど、これはマジでのけぞるくらいうまかった)、「牛頬の煮込み」(普段あまり頼まないんだけど、いやーうまかったなぁ)は、年末を飾る至極の逸品でした。

シェフの木村さんはニューヨークの「バスタパスタ」にいらしたことがあるらしく、ボクも2004年に二度ほどお伺いしててとても美味しかったから、そんな話も盛り上がりました。

パスタをお得意とするみたいですが、わりと話も合って、個人的にはとても楽しい店なのです。

ということで、2015年も月いち(いつも更新忘れがちですいません)ののんびり更新が終わりましたね。
伊藤さん、来年もよろしくお願いします!

posted by さとなお at 18:07| イタリアン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月30日

いとう:トラットリア・ダ・ディーニ(白山)

「今彩」、すごくいい感じですね。
神楽坂、最近かなり頻繁に行ってるのですが、なかなかこちらまで足が伸びませんでした。
さらにロブション出身者の新たな展開は、かなり注目です。フランスで店を開いたツワモノもいますし。大きな厨房ですから優れた料理人も数々排出するわけです。しかも皆さん、あまりロブション風をふかさず、そこに基軸のみを置いて、ご自身で個性的な展開を求めておられるところもかっこいいです。ロブションの名声にぶら下がって、やたらと高いレストランをやってる面々もいますが(笑。

さて、今回のぼくは、少しだけ矛先を変えてイタリア料理店にしてみます。
「トラットリア・ダ・ディー二」。
この名前でさとなおさんがピンときたらさすがですが(笑、そう、この対談で2007年にさとなおさんが紹介されていた、恵比寿の「リストランテ・ダ・ディーノ」のシェフが奥様と白山にオープンした店なんです。
と書くと、さとなおさんむちゃくちャ行きたいでしょ。
「ダ・ティーノ」お気に入りだったからなあ。

なぜか、最近文京区がいいんです。なんというか、形より質、な感じのレストランが文京区に続々と集まってきています。いずれの店も小さくてしかも少人数でのオペレーションですが、さまざまに個性やコンセプトや熱意がこもっていて、文字通りハッタリは一切なし、みたいな店ばかりです。
「ダ・ディー二」もまさにそんな形容がふさわしい一軒。一見すると本当に商店街の中に溶け込むふつうの喫茶店のようで(というか、この店が入る以前は本当に喫茶店だったのかも)、母娘が普段着で来てパスタ食べてコーヒー飲んで帰るとか、遅い時間に女性の一人客がカウンターで寛ぐ姿を見かけたり、まさに今のところは、近所使いがメインなのかもしれません。

でも、間違いなく「ダ・ディーノ」の料理は健在です。食材に対する焦点の当て方、味わいの引き出し方。付け合せのルーコラひとつひとつにまで、こまやかな気持ちを行き届かせた完成形へのこだわり。いやいや、久しぶりに本格的なそして気骨あるイタリア料理に相対したなあと嘆息するぐらいの、すぐれた皿の数々でした。

さとなおさんの前回の言葉、肉たっぷりのうはうは系ってオモロイなあ(笑。
「ダ・ディーニ」でその言葉を借りるなら、メイン久々に牛肉を頼んでみましたが、パチパチと炭の弾ける音が店内に響くあたりからもう待ちきれない。まさにうはうは。色、焦げ感、塩加減、歯触り・・・。
バスタまでの繊細さに加わる大胆さ。唸りました。

ワインも安価で、グラスやカラフェも豊富。ただ、最初にカラフェを頼んで後悔しましたが(笑。

さて、なぜ冒頭に「まさに今のところは、近所使い」と書いたかといいますと、先ごろぴあから発売された「東京最高のレストラン」冒頭、ニューカマーのコーナーで、選者の皆さんが絶賛されてるんですよ。なので、都内一円からイタリアン好きが訪れる日もあっという間かもしれません。
でも、あのシェフの、そしてマダムのスタイルは変わることはないとも確信します。

ところで、前回のさとなおさんの、相手の流れにただ乗って流されていく外食、というのが好きなので、という表現も、すごく気になりました。ぜひ次回はこのテーマで飲みましょう。
posted by 伊藤章良 at 15:50| イタリアン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月03日

さとなお:今彩(神楽坂)

「よねやま」、たしかに一時期ずいぶん露出してましたね。
ボクは新宿や四谷方面がわりと不得意で、荒木町をはじめ、そのあたりはあまり詳しくありません。
いまでは四谷三丁目の組織に縁ができ、週に一回は通っていますが、それでも仕事が終わるとそそくさと城西や城南のほうに戻ってきてしまいます。なんでなんでしょう? 大学時代はよく新宿で遊んだのに。

なので「よねやま」も、名前は知ってましたが、伺えてません。
いまはせっかく近くにいるので、今度伺ってみたいと思います。

そういう意味で、ボクにとって同じような方角にある神楽坂もそんなに足を踏み入れない地域です。
店数はそこそこ行ってますが、食べ終わったらそそくさと帰ってきてしまいますね(笑)

とはいえ、神楽坂は凄まじい勢いでいい店が増えていて(もしくは発掘されていて)目が離せません。

今回ご紹介する「今彩」は友人に連れて行ってもらった一軒。
ボクは知らなかったのですが、こういう店がさりげなく普通にあるあたりが神楽坂の凄みです。

ジャンルとしては、いわゆる創作料理系でしょうか。
シェフがロブション出身ということもあり、フレンチテイストを活かした和の創作系かと思います。

個人的には、創作料理系はあまり好きではありません。
たいていの創作料理店は芯がないというか、ある盤石な基礎の上に屹立しておらず、表面的な工夫が上滑っていて印象に残らないことが多いからです。

ただ、この店の場合、フランス料理の土台がきっちりあるのだけど、シェフの嗜好性・方向性がフランス料理からどんどん日本料理に移っていった感じで、これは好きでした。フュージョンですらない。なんというか、「和食シフト」的な。

なので、基本、和食です。
カウンター割烹に近い(内装はちょっと京都の暗い喫茶店みたいな感じだけど、長いカウンターが印象的です)。その底流にフレンチの基礎がある。でもシェフはそこにこだわらず、日本人である自分の個性も活かしながら、うまいもんを作っている。そういう印象を受けました。

そういう店は、わりとグルマン系というか、肉たっぷりのうはうは系だったりするのだけど、この店は(カウンターに野菜がずらりとディスプレイされているのですぐわかるのだけど)野菜重視の和食。ちょっとストイックな匂い。店名も根菜から取っているかと思われるし。

しかも、コースは大きめの籠に入った八品盛りで始まる。
この籠の設えがまたストイック感があり、シェフの嗜好がよくわかります。そしてだんだん「あ〜、この店はシェフがやりたい放題の個性的な店なんだな」とわかっていきます。

そうとわかれば、あとはシェフが作る小宇宙に乗っかるだけ。

ふと見回せば、そういうお客さんたちがたくさん笑顔で食べています。こういう店に批評やら食べログやらは関係ありませんね。

なんだかとってもロブションっぽい茶碗蒸しや、焼き加減が絶妙な肉料理などが、しゃくしゃくの野菜の合間に出てきます。
デザートも何種類もでて楽しかったし(すっごく凝っている)、ハーブティーに至るまでシェフの世界を楽しみました。こういう料理を広いカウンターで楽しめます。

すっと誰かの世界に乗っかってニコニコできる、そういう精神状態で行ってもらいたい店ですね。
ボクは最近、相手の流れにただ乗って流されていく外食、というのが好きなので、この店はとても好きになりました。
posted by さとなお at 18:58| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月30日

いとう:津之守坂 よねやま(四谷三丁目)

「シェ・ピエール」そんな思い出があったんですね。
ビゴの店からピエールについてのお話、なんとなくとても懐かしく聞かせていただきました。さとなおさんと出会った当初、まださとなおさんは関西に暮らしていて、すでに東京だったぼくに、よく関西の話をされていたことも強く思い出しました。独立して興した最初の事務所に結びついた記憶。決して消えることはないかと確信します。新しいオフィスでも、ご近所にお馴染みができたらいいですね。

ではぼくも、チャレンジつながりで続けてみます。

四谷三丁目と二丁目の、新宿通りから靖国通りへと下っていく坂を津之守坂といます。四谷市ヶ谷千駄ヶ谷と界隈は「谷」ばかりなんだけど、それでもとても坂の多いエリア。そしてまた、その坂のひとつひとつに情緒あるステキな名前がついていて、ぼくはこの界隈を散策するのが大好きなんです。

そしてここ、津之守坂の中腹から少し下がった辺り。ひっそりと、でも10年以上前から「よねやま」という割烹があったことをご存知でしょうか。店の雰囲気からすると、割烹というより小料理屋と称したほうがしっくり来るのかもしれません。オープン当時、価格を抑えつつも本格的な日本料理が味わえる店として評判を呼び、数々のグルメ誌にも掲載されていた記憶があります。

また、津之守坂の風情やお店に至るアプローチがとてもいいんです。
荒木町の映画のセットのようなレトロな雰囲気も好きだし、四谷駅前のごとく雑多な飲食店街も決して悪くない。でも津之守坂は、そのいずれにも属せず、静かで拡張高く、かつ「よねやま」は路面なので、タクシー等での行き来もとても楽。よくまあこんな場所を見つけたなあと、オープン当初「よねやま」の立地に感動を覚えたものでした。

個人的には、現状維持でも十分に継続していけるやに感じていたんですが、店主は、静かに静かに次の展開を考えておられたようで、飲食業界が決して安泰ではないこの時期に意を決してリニューアル。新しく「割烹」らしい割烹として生まれ変わりました。

もともと、ロケーションや佇まいは申し分なかったのですが、店主によると、京都で親父と若い弟子がふたりぐらいで営む、それこそリアルに割烹という言葉がふさわしい店にしたかったとのこと。
個人的には、木屋町の「やました」みたいな店かなあと思いつつ、でも「千花」なんかもイメージしながら、そんな話もふってみたら、当たらずとも遠からず。ぼくの持つ京都の割烹らしさと、店主の考えるこれからの「よねやま」が合致した瞬間でした。

ただ、あくまで東京の日本料理店なので京都のような薄味の料理を出すつもりはないと言い切ります。醤油の風味が利いた、あくまで輪郭のハッキリした料理。目指すもの、すべてのフレームをしっかりと確立させてのリニューアルだったんだなあと、改めて思い至る、そんな感じ。

そんな話を聞いたわけではなく、整然と食器が積み上がった棚を背にし、店主がてぎぱきと動き回る姿に、京都の割烹がシンクロしていました。料理は、ある種日本料理の華である八寸みたいな大仰なデコレーションを組むのではなく、適度な大きさの皿に、一盛り一盛り丁寧に食材を集中させながら、客が食べるペースに合わせて提供するスタイル。美味しさとともに、リズムを重視する流れは、まさに客の立場にたった展開で、本当に心地よい時間でした。

ただ、まだまだリニューアルオープンをしたばかりで、店主も慣れていない部分が少なからずあり、料理を提供することばかりに時間が取られている感じがしました。京都の割烹を目指すからには、京都の旦那筋のような、わがままな要求にをいなしつつ、適度に客とのコミュニケーションを取れるようになれば、晴れて願いの成就となるかなあとか考えています。


posted by 伊藤章良 at 23:50| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月01日

さとなお:シェ・ピエール(乃木坂)

伊藤さん、すいません、一日更新遅れちゃいました(最低でも月一更新は死守しようってこの前言ったばかりなのに・・・)。

その東麻布の店、当時よく行きました。当時の最先端でしたよね。そういうチャレンジがとても目新しく感じられる時代でもありました。

さて、では今回はチャレンジつながりで。
1960年代、まだ子供たちが駄菓子に夢中になっている時代、本格的なパンなんて望むべくもなかった時代、日本にフランスパンを広める、というチャレンジをしたフランス人がふたりいます。

ひとりは、関西のフィリップ・ビゴさんです。
芦屋に「ビゴの店」を開いて、それが当たったのでわりと有名ですね。

ボクは関西勤務時代、このビゴさんの本店兼レストランのすぐ近くに住んでました。で、大柄で朗らかなビゴさん自らの給仕をレストランでよく受けていました。なので、いまでも東京とかでビゴの店を見かけると、なんだかとても親密な気分になります。ビゴさん元気かなぁって。

でも、同じく立役者なのにビゴさんほどは知られてないのが、乃木坂の老舗ビストロ『シェ・ピエール』のオーナーシェフ、ピエール・プリジャンさんですね。

ボクは、東京に転勤で戻ってきて、長年勤めた会社から独立して事務所を開いたのが乃木坂でした。
その事務所がある小さなマンションの横が「シェ・ピエール」でした。
日本で、フランス人オーナーのビストロとしては一番古い(1973年創業)、ということは知っていたのだけど、このピエールさんが「日本にフランスパンを広めたもうひとりの立役者」とは知らなかったなぁ。

神戸の老舗(今年で創業110年)のパン屋「DONQ(ドンク)」に、このピエールさんとビゴさんのふたりがいたんですね。ドンクのサイトから引用してみます。

日本ではじめて本格的なフランスパンの製造、販売を開始した1965年当時、フランス産の小麦粉は輸入されておらず、良質のフランスパンを作るのは非常に困難でした。そこで、日清製粉株式会社様がドンクにフランスパン専用粉の開発を申し出、当時ドンクで働いていたピエール・プリジャン氏やフィリップ・ビゴ氏がテストを重ねながら、フランス国立製粉学校の教授レイモン・カルヴェル氏指導のもと、リスドオルと命名されたフランスパン専用粉を完成させました。用いられたのは、日本で手に入れることのできた小麦のみで、フランス産の小麦はもちろん入っていませんでしたが、そのクオリティは高く、はじめてフランスパンを口にした日本人を感動させただけでなく、在日のフランス人たちをも大いに喜ばせたのでした。
小麦が一部自由化された現在においてもリスドオルの評価は高く、焼き立てのパリパリ感と中身のしっとりとした甘さは、リスドオル特有のものといえます。

そう、このふたりが「日本のフランスパン」にものすごく大きく貢献しているのです。
ビゴさんは独立して芦屋に「ビゴの店」を開き、ピエールさんはビストロ「シェ・ピエール」を開いた、ということです。

ビゴ本店の近くに住んでいたのみならず、ピエールの隣にオフィスを持っているとは、なんとなく縁を感じます。フランスパン普及の苦労話をピエールさん本人の口から聞いて以来、ボクの大切なレストランのひとつになりました。

この店、2年前に40周年だったんですね(場所は一度移転している)。
40年、日本でビストロをやっていると、それなりに日本人の舌に合わせてきている部分はあるかもしれません。でも、外観や内装の本場っぽさ(本当にパリっぽい)も相まって、これこそフランスだなぁと毎回思います。

なんというか「ずっとずっと日本にフランスパンやフランス料理を広めるために営業しつづけてきてくれたピエールさんの日々の言いしれぬ努力がすべて入った滋味溢れる味」という感じ。飾らない、素朴で実質的な、でも奥の深い、長い歴史がじっくり煮込まれたようなありがたい味。そういう印象です。

この店でモンサンミッシェルから直送のムール貝とか、日本一のブイヤベースを食べてると、本当に日本にいることを忘れます。ピエールさん本人も頻繁に客席に顔を出してサービスしてくれるのも含めて。

そして、これはマダムのおかげだと思うけど、装飾品も多いのに、清掃が驚くほど隅々まで行き届いていて気持ちがいいです。本当に清潔でコージーな空間なのです。

この店に行くたびに、本質的な意味で「日本のビストロの先駆け」であり、「精神的支柱」なんだなぁ、と思います。新しい店も大切だけど、こういう店にもっともっと敬意を持ちたいですね。

実は昨日、乃木坂から表参道にオフィスを引っ越しました。
「あ、オフィスの場所? 青山葬儀場の真ん前の『シェ・ピエール』の隣のビルの4階だよ」とか、もう人に説明できないんだなー、ランチとかにふらっとピエールさんに会いに行くことももうないんだなー、と思うとちょっと寂しいです。

昨晩、そんなことを想いながら帰路についていたので、今回は「シェ・ピエール」を書いてみました。50周年、60周年と、ピエールさんに元気でいてほしいです。日本の宝です。

posted by さとなお at 06:55| フレンチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月31日

いとう:地中海料理「オリーヴァ」〔学芸大学〕

さとなおさんが前回書いておられた店、実はとても興味がありました。このごろ日本の料理人と接していても、ヴーガンを自分の店のメニューの一つとして取り入れたいとする意欲的な話を意外と聞くんです。
さとなおさんが書かれるように、ちょっと「肩凝りそう」とか「宗教的?」みたいな解釈が、いかにも日本人的だなあとも言えますが、食材を絞った結果生まれる面白みも、確実にあると思うんですよね。

それから、さとなおさんが語っていたもう一つのキーワード。レストランにしても人間にしても「自己模倣」が一番の成長の敵。本当にその通りです。そして今回は、その点に最大の個性を感じるといいますか、模倣せず名声にも拘らず、ごく自然な新しい立ち位置からスタートしたレストラン。

具体的に書くことがシェフの本意ではないかもしれないので〔検索すれば分かることですか〕詳しくは書きませんが、新感覚、最新の技法で高い評判や名声を得たイタリア料理店が東麻布にありました。変幻自在で知られる動物の名前を店名にしたところも料理の志向と合致。マスコミ相手にも気を吐く料理人で論争も絶えなかったような記憶があります

そんな料理人があっさり店を閉め、改めて世界中の料理を食べ歩いたと聞きます。そして、そんな店もあったなあと世間の印象もすっかり思い出と変わった今、学芸大学駅からすぐの好立地に、地中海料理と銘打った料理店「オリーヴァ」をオープンしました。

メニューを見ただけでも、エスプーマだの液体窒素だのといった〔記憶はすでに詳細ではありませんが〕過去のスタイルとは決別し、180度振り切ったといいますか、原点に回帰したと表現するのが適切なのか、まったく当時の片鱗を感じさせることはなく、骨太と形容するしか例えようのないドカンとくる地中海の料理。もちろんイタリア料理がベースですが、その殻まで破りたいというコンセプトでしょうか、地中海料理と称する点にも、昔の料理に対する決別を感じます。

くじらのフリットやお魚のミートソース、シンプルなメニューながら、食いしん坊ならたまらず食指が伸びるタイプのメニュー構成。メインは炭火焼ですが、でっかいウルメイワシには、本当に日本の焼き魚とは一線を画する、これぞヨーロッパというか、彼の地でムシムシと白ワイン片手に食べた極ウマなイワシを思い出しました。

この場所の店舗とはご縁もあったと思いますが、以前のカウンターの店とは違い、細長いダイニングエリアからは厨房が見える席も限られていて、多くのシェフが最終系としてカウンターの店を選ぶ傾向が顕著の今、そのスタイルも真逆。

でも、ぼく自身にしてみると、シェフの至った到達点に改めてご一緒できるという同時代感覚が、例えようのない心地よさだったりします。でもシェフは、そんなめんどくさいことをいちいち考えず、ストレートに素直に受け止めてくれという気持ちなのかなとは思いますが。



posted by 伊藤章良 at 23:39| イタリアン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月30日

さとなお:mique(荏原中延)

「フロリレージュ」、よいですねー。
移転前の店は一度だけ伺いました。ボクの中では「静」のイメージです。しかも周りの雑景が見えない「絵はがき的な静」。伊藤さんのを読むと、今度は「動」なんですね? それは楽しみ。

というか、レストランにしても人間にしても「自己模倣」が一番の成長の敵です。
あれだけ評判だった店の「型」をちゃんと壊して次に向かっているというだけで、スタッフたちの志が感じられます。さすがです。貯金して行ってみよ。

さて、今回ボクは「静」かつ「今年の2月にスタートしたばかり」というお店を紹介しようと思います。これから「動」に向かうポテンシャルを秘めた小さな店です。

荏原中延の「mique(ミケ)」
建具屋さんに嫁いだアートデザイナーが料理人に転じて「ヴィーガン(Vegan)料理」を作ってくれます。

Veganとは、ググればわかりますが、完全菜食とも言われるもので、乳製品なども含む一切の動物性の食品を避けて、可能な限り自然農法や有機農法で作られた食材を使った料理。

と、聞くと、ちょっと「肩凝りそう」とか「宗教的?」とか思いがちだけどさにあらず。
店主の瀬戸さんは、元々超忙しい広告業界にいたせいもあり「食事のときくらい、本当に健康にいいものをゆっくり食べてホッとして欲しい」という願いから、敢えてこの料理を選んだそうです。

だから、ワインもたっぷり飲めるし、全然堅苦しくない。というか、あまり菜食を感じさせないですね。モダンな創作和食という趣き。へー、ほー、と喜んでいるうちに心も身体も満たされます。

ちなみに、この6月7月の献立をご紹介すると(お決まりで3900円税別のみ)、「一ノ皿:作りたて胡麻豆腐&今日の野菜の昆布〆」「二ノ皿:三"種"のサラダ ミントの香り 蕎麦の実・ハト麦・枝豆」「三ノ皿:豆腐と季節野菜の揚げ浸し」「四ノ皿:トマトの炊き込みご飯&冷たい味噌汁」「おしまいの皿:無花果のアイスクリーム&ハーブティ」。

「これだけ〜?」と思う男性も多いかもだけど、実際にゆっくり食べ進めるとちょうどいい腹具合になります。

アートデザイナーだった彼女が手作りで作った空間はとても親密。
中延の昭和な路地にあることも相まって(この周辺の雰囲気サイコー)、なんだか懐かしく、優しい気持ちになれます。

彼女ひとりですべてをまかなうので、5人しか入れない予約制だけど、電話して是非行ってみて欲しいと思います。

posted by さとなお at 16:35| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする