2015年11月03日

さとなお:今彩(神楽坂)

「よねやま」、たしかに一時期ずいぶん露出してましたね。
ボクは新宿や四谷方面がわりと不得意で、荒木町をはじめ、そのあたりはあまり詳しくありません。
いまでは四谷三丁目の組織に縁ができ、週に一回は通っていますが、それでも仕事が終わるとそそくさと城西や城南のほうに戻ってきてしまいます。なんでなんでしょう? 大学時代はよく新宿で遊んだのに。

なので「よねやま」も、名前は知ってましたが、伺えてません。
いまはせっかく近くにいるので、今度伺ってみたいと思います。

そういう意味で、ボクにとって同じような方角にある神楽坂もそんなに足を踏み入れない地域です。
店数はそこそこ行ってますが、食べ終わったらそそくさと帰ってきてしまいますね(笑)

とはいえ、神楽坂は凄まじい勢いでいい店が増えていて(もしくは発掘されていて)目が離せません。

今回ご紹介する「今彩」は友人に連れて行ってもらった一軒。
ボクは知らなかったのですが、こういう店がさりげなく普通にあるあたりが神楽坂の凄みです。

ジャンルとしては、いわゆる創作料理系でしょうか。
シェフがロブション出身ということもあり、フレンチテイストを活かした和の創作系かと思います。

個人的には、創作料理系はあまり好きではありません。
たいていの創作料理店は芯がないというか、ある盤石な基礎の上に屹立しておらず、表面的な工夫が上滑っていて印象に残らないことが多いからです。

ただ、この店の場合、フランス料理の土台がきっちりあるのだけど、シェフの嗜好性・方向性がフランス料理からどんどん日本料理に移っていった感じで、これは好きでした。フュージョンですらない。なんというか、「和食シフト」的な。

なので、基本、和食です。
カウンター割烹に近い(内装はちょっと京都の暗い喫茶店みたいな感じだけど、長いカウンターが印象的です)。その底流にフレンチの基礎がある。でもシェフはそこにこだわらず、日本人である自分の個性も活かしながら、うまいもんを作っている。そういう印象を受けました。

そういう店は、わりとグルマン系というか、肉たっぷりのうはうは系だったりするのだけど、この店は(カウンターに野菜がずらりとディスプレイされているのですぐわかるのだけど)野菜重視の和食。ちょっとストイックな匂い。店名も根菜から取っているかと思われるし。

しかも、コースは大きめの籠に入った八品盛りで始まる。
この籠の設えがまたストイック感があり、シェフの嗜好がよくわかります。そしてだんだん「あ〜、この店はシェフがやりたい放題の個性的な店なんだな」とわかっていきます。

そうとわかれば、あとはシェフが作る小宇宙に乗っかるだけ。

ふと見回せば、そういうお客さんたちがたくさん笑顔で食べています。こういう店に批評やら食べログやらは関係ありませんね。

なんだかとってもロブションっぽい茶碗蒸しや、焼き加減が絶妙な肉料理などが、しゃくしゃくの野菜の合間に出てきます。
デザートも何種類もでて楽しかったし(すっごく凝っている)、ハーブティーに至るまでシェフの世界を楽しみました。こういう料理を広いカウンターで楽しめます。

すっと誰かの世界に乗っかってニコニコできる、そういう精神状態で行ってもらいたい店ですね。
ボクは最近、相手の流れにただ乗って流されていく外食、というのが好きなので、この店はとても好きになりました。
posted by さとなお at 18:58| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月30日

いとう:津之守坂 よねやま(四谷三丁目)

「シェ・ピエール」そんな思い出があったんですね。
ビゴの店からピエールについてのお話、なんとなくとても懐かしく聞かせていただきました。さとなおさんと出会った当初、まださとなおさんは関西に暮らしていて、すでに東京だったぼくに、よく関西の話をされていたことも強く思い出しました。独立して興した最初の事務所に結びついた記憶。決して消えることはないかと確信します。新しいオフィスでも、ご近所にお馴染みができたらいいですね。

ではぼくも、チャレンジつながりで続けてみます。

四谷三丁目と二丁目の、新宿通りから靖国通りへと下っていく坂を津之守坂といます。四谷市ヶ谷千駄ヶ谷と界隈は「谷」ばかりなんだけど、それでもとても坂の多いエリア。そしてまた、その坂のひとつひとつに情緒あるステキな名前がついていて、ぼくはこの界隈を散策するのが大好きなんです。

そしてここ、津之守坂の中腹から少し下がった辺り。ひっそりと、でも10年以上前から「よねやま」という割烹があったことをご存知でしょうか。店の雰囲気からすると、割烹というより小料理屋と称したほうがしっくり来るのかもしれません。オープン当時、価格を抑えつつも本格的な日本料理が味わえる店として評判を呼び、数々のグルメ誌にも掲載されていた記憶があります。

また、津之守坂の風情やお店に至るアプローチがとてもいいんです。
荒木町の映画のセットのようなレトロな雰囲気も好きだし、四谷駅前のごとく雑多な飲食店街も決して悪くない。でも津之守坂は、そのいずれにも属せず、静かで拡張高く、かつ「よねやま」は路面なので、タクシー等での行き来もとても楽。よくまあこんな場所を見つけたなあと、オープン当初「よねやま」の立地に感動を覚えたものでした。

個人的には、現状維持でも十分に継続していけるやに感じていたんですが、店主は、静かに静かに次の展開を考えておられたようで、飲食業界が決して安泰ではないこの時期に意を決してリニューアル。新しく「割烹」らしい割烹として生まれ変わりました。

もともと、ロケーションや佇まいは申し分なかったのですが、店主によると、京都で親父と若い弟子がふたりぐらいで営む、それこそリアルに割烹という言葉がふさわしい店にしたかったとのこと。
個人的には、木屋町の「やました」みたいな店かなあと思いつつ、でも「千花」なんかもイメージしながら、そんな話もふってみたら、当たらずとも遠からず。ぼくの持つ京都の割烹らしさと、店主の考えるこれからの「よねやま」が合致した瞬間でした。

ただ、あくまで東京の日本料理店なので京都のような薄味の料理を出すつもりはないと言い切ります。醤油の風味が利いた、あくまで輪郭のハッキリした料理。目指すもの、すべてのフレームをしっかりと確立させてのリニューアルだったんだなあと、改めて思い至る、そんな感じ。

そんな話を聞いたわけではなく、整然と食器が積み上がった棚を背にし、店主がてぎぱきと動き回る姿に、京都の割烹がシンクロしていました。料理は、ある種日本料理の華である八寸みたいな大仰なデコレーションを組むのではなく、適度な大きさの皿に、一盛り一盛り丁寧に食材を集中させながら、客が食べるペースに合わせて提供するスタイル。美味しさとともに、リズムを重視する流れは、まさに客の立場にたった展開で、本当に心地よい時間でした。

ただ、まだまだリニューアルオープンをしたばかりで、店主も慣れていない部分が少なからずあり、料理を提供することばかりに時間が取られている感じがしました。京都の割烹を目指すからには、京都の旦那筋のような、わがままな要求にをいなしつつ、適度に客とのコミュニケーションを取れるようになれば、晴れて願いの成就となるかなあとか考えています。


posted by 伊藤章良 at 23:50| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月30日

さとなお:mique(荏原中延)

「フロリレージュ」、よいですねー。
移転前の店は一度だけ伺いました。ボクの中では「静」のイメージです。しかも周りの雑景が見えない「絵はがき的な静」。伊藤さんのを読むと、今度は「動」なんですね? それは楽しみ。

というか、レストランにしても人間にしても「自己模倣」が一番の成長の敵です。
あれだけ評判だった店の「型」をちゃんと壊して次に向かっているというだけで、スタッフたちの志が感じられます。さすがです。貯金して行ってみよ。

さて、今回ボクは「静」かつ「今年の2月にスタートしたばかり」というお店を紹介しようと思います。これから「動」に向かうポテンシャルを秘めた小さな店です。

荏原中延の「mique(ミケ)」
建具屋さんに嫁いだアートデザイナーが料理人に転じて「ヴィーガン(Vegan)料理」を作ってくれます。

Veganとは、ググればわかりますが、完全菜食とも言われるもので、乳製品なども含む一切の動物性の食品を避けて、可能な限り自然農法や有機農法で作られた食材を使った料理。

と、聞くと、ちょっと「肩凝りそう」とか「宗教的?」とか思いがちだけどさにあらず。
店主の瀬戸さんは、元々超忙しい広告業界にいたせいもあり「食事のときくらい、本当に健康にいいものをゆっくり食べてホッとして欲しい」という願いから、敢えてこの料理を選んだそうです。

だから、ワインもたっぷり飲めるし、全然堅苦しくない。というか、あまり菜食を感じさせないですね。モダンな創作和食という趣き。へー、ほー、と喜んでいるうちに心も身体も満たされます。

ちなみに、この6月7月の献立をご紹介すると(お決まりで3900円税別のみ)、「一ノ皿:作りたて胡麻豆腐&今日の野菜の昆布〆」「二ノ皿:三"種"のサラダ ミントの香り 蕎麦の実・ハト麦・枝豆」「三ノ皿:豆腐と季節野菜の揚げ浸し」「四ノ皿:トマトの炊き込みご飯&冷たい味噌汁」「おしまいの皿:無花果のアイスクリーム&ハーブティ」。

「これだけ〜?」と思う男性も多いかもだけど、実際にゆっくり食べ進めるとちょうどいい腹具合になります。

アートデザイナーだった彼女が手作りで作った空間はとても親密。
中延の昭和な路地にあることも相まって(この周辺の雰囲気サイコー)、なんだか懐かしく、優しい気持ちになれます。

彼女ひとりですべてをまかなうので、5人しか入れない予約制だけど、電話して是非行ってみて欲しいと思います。

posted by さとなお at 16:35| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月30日

いとう:尾辰(銀座)

今年も最後ですね。
末長く、ぼちぼち続けて行きましょう。

「田中田」なんて文字を見ると、上から読んでも田中田、下から読んでも田中田、とか言いたがる世代です(笑。居酒屋、ぼくも大好きで頻度的には一番行くカテゴリかなとも思いますが、東京においても、どことも似てきている傾向ありますね。鮨屋もまた、若手が最近オープンする高級店は、残念ながらどの店もほとんど同じような内装に同じようなタネと風貌。チェーンかと思うぐらいです。

そして今回、築地の仲卸がオープンした魚料理専門の店を紹介したいんですが、一般的に、仲卸や問屋さんが始めた飲食店もどこか似ているように感じます。卸だからこそ、食材がとびっきり新鮮で最高級品であることを強調する。加えて安価も主張する。それは子供でも分かる「当たり前」なんだけど、客の立場からすると、さばいて高級店に卸した残りをうまく調理して使っていたり、高級というわけではないけど一般的にあまり出回らない希少品に出会えたりするのが、卸運営たる所以のような気もするんです。何より、料理人以上に食材LOVEな人や会社が運営をしていないと、卸直営の臨場感が出てきません。

今回取り上げる「銀座尾辰」は、築地の仲卸「尾辰商店」なる明治元年創業の老舗が母体ですが、飲食業界への進出は今回が初めての模様。飲食店が立ち並ぶ銀座の京橋寄りエリア地下。テーブル席、カウンター、そして掘りごたつタイプの個室と、なかなか使い勝手も良さそうなシンプル空間が広がっています。

使う魚を厳選しロスを出さないコンセプトでしょうか、10時までは三種類のコース料理のみ。ベースとなる5000円のコースは、最初に江戸野菜と数種の味噌ディップが出て、その後、刺身、焼き魚、煮魚、それ以外の酒肴、そしてご飯(ぼくの時は握りずし)。その構成の中で一番驚き惹かれたのは、一般的に好まれ喜ばれそうな高級魚・有名魚の類を多用せず、食材の質だけで勝負していること。そして、刺身、煮魚、焼き魚と、出される皿がそれぞれたっぷりで(刺身の切り方も分厚くて気持ちいいんです)、魚をたくさん食べてください、という情熱が伝わってくることです。もちろん割烹のように凝った料理を出すわけではないですが、煮たり焼いたりといったベーシックな調理がとてもキチンと施されていて、魚の旨味や持ち味が十分に引き出されます。

常勤の料理人やサービススタッフとは別に、仲卸の尾辰商店メンバーも顔を出して接客しておられるようで、そんな皆さんからの魚に対する豆情報が実に面白く、おいしさをさらに増幅させる効果絶大。

「銀座 尾辰」を訪れると、日本という国の周りがすべて豊富な漁場で、イワシやアジから、マグロ、クエといった高級魚まで、多くの種類を享受してきたという思いは錯覚で、もっともっと日常は目にすることのない(もしかしたら、あまり売り物にならないような)魚がさらにあって、実はそういった魚もとてもおいしいんだ、ということにも気づくと思います。
posted by 伊藤章良 at 17:00| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年02月24日

さとなお:縄屋(京丹後市)

>カタログ的な店ばかりが乱立してしまい、

その通りだと思います。
マーケティングされた店はつまらないですね。最近特にそういう思いを持ちます。少々品揃えが少なくても、ほとんど高級食材を使ってなくても、全然サービスが洗練されてなくてもいいんです。もっと別のところに感動の在処がある。

でも、それをちゃんと評価する大人が減っているんでしょう。

ただ、少しずつ元に戻りつつある気はしています。「そういうマーケティングされた店を追うこと」に疲れ始めた人が増えてきてますよね。

さて、ではボクは伊藤さんも言及された「縄屋」を書いてみます。

立地がありえない店、というのもわりと多く行きましたが、この店はその中でも最右翼のひとつでしょう。

一応、京都府なんだけど、京は京でも京丹後市。丹後半島の真ん中にあります。しかも店までの道が真っ暗。寂しい国道からさらに横道に入り、「まさかこんなところに?」と疑いも最高潮に達したあたりにポツリと高級割烹があるのだから驚きます。

暗い暗い細道にぽつりと小さな行灯みたいなものが置いてある。目印はそれだけ。
地元の人と一緒に行ったのだけど、その人が「ここです」とクルマを止めてもなかなか信じられないようなロケーションでした。これはよっぽど腕に自信がないと店を出せない立地だなぁ。

そして店に入って二度目のびっくり。
この立地にはありえないくらいモダンなんですね。もうちょっと田舎風日本家屋かと思っていたら、実にお洒落でセンスがいい。窓を大きくとってあり、天井も高く部屋も広い。とても伸び伸びした空間。ニューヨークのロフトを割烹に改装したようなイメージを想像していただくといいかもしれません。

どうやらご主人の出身地らしく、もともとご実家が仕出し割烹をしていた場所らしいですが、それにしてもこれをこの立地で新築したのかー、と驚きます。

ご主人はまだ若く、30代。白衣ではなくボタンダウンで現れました。料理人というより美大出身の絵描きという感じ。
室町和久傳で修行したあと、ここに2006年に店を開いたとのこと。和久傳かーと正統な割烹を想像して待っていたら、料理で三度目のびっくりでした。

なんというか、足かせがない自由さというか、「枠」がないですね。
もちろん日本料理なのだけど、基礎をしっかり固めた上で(創作料理みたいな薄っぺらいものではない、という意味)、いろんな変化球を投げられました。

それを支えているのが丹後の海の恵みと畑の恵み。
たぶん昔からの仕入れルートなのでしょう。地元の漁師・農家と信頼関係がないと成り立たないようなすばらしい食材が次々に並び、卓抜なセンスでそこから持ち味を引き出していきます。

美味しいなぁ。
今回に限っては焼き物がほんのちょっとだけ不満でしたが、椀物の素晴らしさ、ご飯までの流れの隙のなさ、野菜の使い方のセンスの良さなど、再訪を誓わせる素晴らしい料理群でした。

また行こう、と迂闊に言えない立地ですが、でもまた行こう!

posted by さとなお at 19:52| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年01月28日

いとう:うを徳(神楽坂)

さとなおさん、今年もよろしくお願いします。
そういえば、「縄屋」に行っておられましたね。新年早々さすがのフットワークです。

>二子玉川の「すしき邑」(きむら:きは七が3つ)。

いやあ、ここはいい店ですよね。
天ぷら店でも修業をしたという個性派で、その天ぷら店から紹介されて、ぼくも行きました。実は「東京百年レストランII」で紹介させていただこうかどうか迷いに迷い、ある事情で断念したんですが、直後にミシュラン初登場二つ星。ぼくが星を逃したような気分でしたw。

さて、さとなおさんのお鮨紹介に対抗して、ぼくもお鮨にしたいなあと想いをめぐらせていたんですが、なかなか取り上げたい店に出会わず・・・。ちょっと遠いものの、同じく江戸前つながりで、明治時代から続く神楽坂の料亭「うを徳」を取り上げます。

「うを徳」は、神楽坂から一本水道橋側、軽子坂と呼ばれる通り沿い。神楽坂から本多横丁を折れて軽子坂に出たら右折すぐ。軽子坂には居酒屋「ちょうちん」をはじめ馴染みのお店が多いのですが、回りとは一線を画する「うを徳」の荘厳な玄関は、いつも前を通りながら「こんな店にどんな人が来るのだろう・・・」とか考えていました。

ところが、ひょんなことで「うを徳」の女将さんと知り合いになり、とても気さくな方だったし、せっかくのご縁と思って予約を依頼。10年来続く食べ仲間との新年会となりました。

こういった料亭の引き戸を開ける瞬間って本当にワクワクしますが、さらに、洋服姿しか存じ上げなかった女将さんが、もちろん着物でびしっと正座して玄関で待ち構えておられる姿を見て、「やっぱり、違うなあ・・・」と嘆息。時が止まったような二階の大広間に通されて、食事がスタート。

「時が止まった」という表現は、感動のニュアンスとして料理にも当てはまります。しっかりとした味付け、迷いのないストレート香り、十分な量。
それぞれ全ての皿が、ブレのない潔さといいますか、代々受け継がれてきた東京の味とでも表現するか。そこには、ネットやマスコミの餌食にはならなかった孤高の強さや伝統が脈打っています。東京の日本料理も新しい世代に入って発展目覚ましいですが、こうして「うを徳」の料理に接すると、やはりそれらは京都の模倣でしたないんだなあ、とまで感じさせられました。

聞けば、他から人を雇うことなくずっと家族経営で、親子で代々引き継がれた味を守っておられるとのこと。清酒もワインも一種類ずつしかないし、料理はコース二種類のみ。不器用な経営といってしまえばそうなのですが、「うを徳」に清酒やワインが何種類もあっても、それは余計でしかない。というか、一時代前って、どんな店もたいていそうだったような気がします。ところが、店のコンセプトを理解しようとせず、「ここには鍋島を置かないのか」みたいなことを平気で言ったり書いたりしてしまう生半可な知識の持ち主が増えた結果、カタログ的な店ばかりが乱立してしまい、逆に「うを徳」のようなやり方が希少で貴重になった。そんなことを考えさせられました。

実体のないスピリチュアルな話を飲食店に対して持ち出すのは個人的に「否」としつつも、いつも以上に会話も弾み楽しい夜となったのは、「うを徳」に漂う「気」のようなモノが、ぼくたちを心底リラックスさせてくれたのではないか、と密かに感じて納得しています。


posted by 伊藤章良 at 22:27| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月20日

いとう:山灯(四谷三丁目)

昨日は台風の中、大変でしたね。

>代々木八幡の「和食 静流(しずる)」。
>女性ひとりでやっているカウンター割烹です。

あ、そうそう。ぼくもこの店を何かで知ってチェックしてたんです。
対談を見て、早々にだっちが行ってきましたよ。
さとなおさんには、ちと狭すぎるんじゃないかなw、とか言ってましたが。

実は、少し前になりますが、この「静流」並みの低価格で十分に飲み食いできる、というより、きちんとした懐石料理の、最後に炊き込みご飯や甘味まで付いたコースを純米酒の熱燗に合わせて、という日本料理店に行きました。
「山灯(やまびこ)」といいます。

四谷三丁目、いわゆる荒木町と呼ばれた界隈は、一時、昔の色町の活気を失いつつあったんですが、最近、特に若い料理人がここで店を開きイキオイが戻ってきました。もともと大好きなエリアなので、とてもうれしく感じています。特にこの街並みの特徴でもある和系の充実ぶりは、目を見張るものがあります。

「山灯」はそんな中の期待の一軒。山形の鮨店の次男坊として生まれた店主は、キチンと築地の日本料理店で修業をしての独立。すごく若いんだけど、料理にも酒にも、随所に個性を主張する姿は、すでにいっぱしの花板。カッコいいです。

もともとこの場所は、海外での和食店修業経験のある方が営んでいたこともあり、作り自体がモダンな感じだったのですが、それをほとんど居ぬきで引き継ぎながらも、若い店主の立ち姿は、さらに店全体のフレッシュ感を膨らませます。

料理は、本当に八寸から始まるきちんとした懐石料理で、一つ一つ土鍋で炊いたご飯や甘味までで4200円。なんちゃってな和風の低価格コースなら、もしかしたらあるかもしれません。でも、お椀もお造りも、そして米沢牛を使った料理までアリ。

というのも、山形のご実家が料理店を営む関係で、そこから直送されてくる食材を使うことによって、この価格が実現できるとか。まさに、築地に頼らない、若い料理人ならではの展開でしょうか。特に、東北の魅力である山菜を多用して、塩ではなく食材の力で強い料理を表現し、それを彼自身が大好きな、純米酒の熱燗に合わせていく、といったコンセプトなんです。

客によっては、「獺祭」はないのか、とか、「鍋島」を置くべきだとか、香り高い吟醸が好みとか、いろいろと言われるそうです。でも、彼は(今のところ)そういった客のわがままにもぶれることなく、濃い純米酒を熱して提供するスタイルを崩しません。

この低価格で、荒木町という素敵な場所ゆえ、今後は客も殺到し、純米酒が全く出ない・・・、吟醸酒をワインを出せと言われる日々との闘いが待っているんじゃないかと、本当に心配。
でも、ガンバレガンバレと口に出して、カウンターで応援し続けてきましたw。
posted by 伊藤章良 at 10:55| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月03日

さとなお:和食 静流(代々木八幡)

その通りですね。ボクも「もう少し安価でチェーンでない店」を探しています。
伊藤さんに教えてもらった、恵比寿に移転してきたあそこも近々行こうと思ってます。他にもどっかないかなぁ。ありそうなものだけど。でも安価だとある程度の仕入れ量じゃないと経営が大変なんだろうな…。

ということで安価でいい鮨屋はまだ見つかってませんが、この前、ある友人に連れて行ってもらった「1万円前後で飲み食いして十分満足できる店」をご紹介します。いや、1万円なんかかからないな。かなり飲んでも6000〜7000円くらい。ありえないほどのコストパフォーマンスです。

代々木八幡の「和食 静流(しずる)」
女性ひとりでやっているカウンター割烹です。

半地下のとても小さな店で、天井もとても低いので閉塞感がある部分はありますが、逆に妙に落ち着ける空間でもあります。隠れ穴でひそかに美味しい物を食べている感覚。8人で目一杯のカウンターを、静かで落ち着いた若い美人料理人がひとりで切り盛りしています。

お決まりが3500円。
とてもじゃないけどその値段とは思えない料理群で楽しませてくれます。旬の山菜や刺身、お椀に焼き物など、心のこもった上品で親密な料理が流れるようなタイミングで出て来ます。混んできても慌てず騒がずマイペースでひとつずつこなす彼女の所作が美しい。

で、ひと通りのお料理が出た後、ごはん。
これは追加料金600円かかりますが、釜炊きで実にうまいですね。ご飯のお供にジャコやメンタイなども次々出してくれます。卵がけご飯もしてくれます。

まぁ総じて料理は満足でした。なにしろ3500円だからなぁ。驚異的です。
彼女の故郷の関係でしょうか(聞かなかった)、食材もお酒も新潟のもの。日本酒は緑川と鶴齢と八海山のみでした。こうして絞っている感じがまた好ましい。そんな店です。

残念ながら(?)旦那さんもいて、違う店で和食料理人をしているとか。
ふたりで一緒にやらず、別々に「自分の料理」を目指しているのがとてもいいと思ったですね。一緒にやるとどちらかが主になってどちらかが従になるのが普通だけど、そうじゃないところがいいし、なんか新しいと思いました。

ちなみに店内に小さな木彫仏像などが飾ってありますが、旦那さんが彫ったものらしいです。玄人はだし。なかなか良いです。

寡黙な女将と向き合って美味しい日本酒と親密なお料理…。
家が代々木方面だったら通うなぁ。静かに流れる。店名そのまんまの、小体ないい割烹でした。
posted by さとなお at 17:54| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月08日

いとう:くろいわ(恵比寿)

少し間があいてしまいました。申し訳ありません。
さすがに、年度末から年度始めにかけての忙しさと、さとなおさんが書いてた金沢の「玉響」〜「一献」からのつながりにしばし悩んで、時間が経ってしまいました。そういえば、「たまゆら」って銀座にもありましたね。さとなおさんが10円のマジックを披露した店(笑。彼女も元気でやってます。

さて、夫婦で営まれるケースが多い割烹の場合、女性の役割というか、占める位置がとても重要ですよね。基本的には料理を楽しみに訪れているんだけど、女将さんがいるのといないのとでは、料理自体の印象にも影響が出るように感じてしまう。さとなおさんも高く評価していた神宮前の「樋口」も、女将が産休で不在の時に伺って以降、すっかり足が遠のいてしまいました。きっと今では復帰されていることとは思いますが。

四谷三丁目にある「車力門ちゃわんぶ」でも、新たにこの地に店をオープンしてすぐ女将さんがオメデタ。今では出産して不定期ながら復帰されてますが、おられる時といない時の居心地の差が大きいように感じます。居心地だけですめばいいんだけど、料理の味にも差があるように思えるのが不思議。

と、そんな流れで、恵比寿に昨年11月オープンした「くろいわ」を紹介します。ここも、以前の修業先で知り合った二人が夫婦で始めた店。オープンのとき、東京の名だたる割烹から多数の花が届いていて、新しい門出とともに二人を祝福するようなムードも感じ、開店当初から興味を持ちました。

そんなキッカケもあって早々に訪問を重ねたので、店主曰く、ぼくが最初の「くろいわ」のリピーターだそうです。もうすでに超人気店だしグルメサイトの評価も高いので、これから訪問する方は少々予約がしんどいかな。

この店のなにより面白いところは、店主の奥様は女将ではなく板前なんですね。今までの、ほぼすべての割烹では、男性が主人で花板で、女性は女将でホールのサービス担当と確実に決まっていたわけですが、「くろいわ」は二人が料理人であり、酒のサービスも下げ物も二人が交代でする。夫婦共々、料理のことも酒のことも器のことにも通じている。最後に出されるお菓子は、「ぼくにはとうてい作れません」と、主人は密かに妻の自慢をする(笑。

初めて訪れた時、奥様がぼくの目の前で魚を切り出して驚愕。板前の花形仕事であるお造りでさえ女性に任せているその度胸。これからの日本料理店として、すごい可能性を感じてしまいました。

さらに、「10年後には、彼女が着物を着てカウンターの外でお酒のサービスをしているかもしれません」と、オープン当初においても、10年後の構想までサラッと語ってしまうところにも敬服。

料理は、日本料理を食べ込んでいる人からすれば、まだまだ整えただけな感じの皿も混じるし、やりたいことや情報が多過ぎて、整理のついていない幼さも、もちろんあります。でも、料理屋における女性の立場を変えるかもしれない店であり、多くの先輩や同僚からも支持される素晴らしい二人の将来に、多大な期待を抱かずにいられない、と思っています。
posted by 伊藤章良 at 18:14| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月18日

さとなお:一献(金沢)

「ふしきの」予想外なほど最高そうですね。

寒いうちに行きたかったけど、でも、春のちょっと寒く感じる日に絶妙なぬる燗を呑むのもまた一興。
ぜひ行ってみます。

さて。金沢に数年ぶりに行ってきました。

金沢って料亭はとてもいいし、居酒屋の名店も多いし、鮨もとてもいいけど、気軽に行けるカウンター割烹がもっとあるといいなぁと思っていたですね。

こないだ行った「一献」は、そういう意味では素晴らしい店でした。
でも、人気が出すぎて、いまや「予約が取れない店」らしいので、気軽に行けないのが難ですね。

4年前だったか、金沢市街からちょっと離れた丘陵地の住宅街にある隠れ家風の割烹「玉響(たまゆら)」という店に行ったですね。
そこは店員が美人ばかり、ということで有名な店で、カウンター割烹とバーが合わさったようなイメージ。薄暗く秘密めいた店内には長いカウンターが伸びており、その後ろは全面ガラスで金沢の夜景が一望できるロケーション。料理も良くて「また来たいなぁ」と思わせるいい店でした。たしか本にも書いた気がする。

そこの美人店員のひとりが結婚し、旦那さんと一緒に始めたのが「一献」です。
奥さんとはボクが「玉響」に行ったときにお会いしているそうなのですが、美人ばかりで目移りして覚えていないw でも、そういう文脈とともに店を訪れると印象はより深くなりますね。「一献」ではとてもいい時間が過ごせました。

丁寧で誠意に満ちた料理群。
インパクトこそ強くないものの、滋味溢れてカラダに染み渡ります。
春のこごみ、つぼみ菜、うるい、白アスパラのお皿にはしびれました。焼き物から土鍋ご飯に至る流れも秀逸。全体にうるさいところは何もなく、静かに淡々と進む印象の料理なので、もっと強い印象を求める方もいらっしゃるかもしれないけど、ボクは最近こういう静かな流れが好きです。

ご夫婦ふたりの接客もとてもよく、日本酒も厳選されていて良かったです(地元中心)。

開店直後からこうも人気が出てしまうとその後が少し心配になりますが、あの真面目そうなご主人ならきっと淡々と成長しつづけるんじゃないかな。奥さんと二人三脚で長く続けて欲しいいい店でした。

posted by さとなお at 18:41| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月02日

いとう:ふしきの(神楽坂)

さらなる九州の店、こちらも「きたうら善漁。」と双璧ですね。
(多少、行きやすいでしょうか 笑)

さとなおさんの文脈から感じられる空間の広さや奥行も、地代の高い東京ではなかなか実現しにくいところだし、芸術家のお宅ならではのセンスの良さにも惹かれます。

こんな店に匹敵する、というか繋がる場所がなかなか思いつきませんが、

>ただ、この店の場合、料理より「時間」が主役ですね。

というさとなおさんの言葉に反応して、つい先日、ステキな時間を過ごしてきた「ふしきの」を紹介します。

「ふしきの」は、燗番のいる日本料理店とカテゴライズするのが一番分かりやすいですが、それだけの言葉ではまったく表現しきれていない、すばらしい「清酒とのひととき」を体験させてくれる空間です。
燗番とは、その字のごとくお酒の燗をする人のこと。清酒を提供する店におけるソムリエのような存在。ただ、提供する酒について厳密な温度管理が要求される点で、ソムリエよりもさらに繊細な仕事のように思えます。なにより、ぼくの憧れの職業のひとつであります(笑。

燗番のいる居酒屋として、門前仲町の「浅七」や神楽坂の「伊勢藤」などが知られますが、店のセンターに陣取っている名物親父な存在感は否めず、こだわりゆえか様々な制約もあって今一つ寛げない。

一方「ふしきの」は、所作も話口調もとても柔らかくて上品な燗番が実にきびきびとカウンターの客を仕切り、特に酒を準備する際の動きやその道具の美しさは、ホレボレと見とれてしまうほど。

その燗番の方が作り出す「時間」が、本当に心地よいのです。

場所は神楽坂。メインストリートから少し脇にそれたビルの2階。とても飲食店とは思えない非常階段のようなステップを上がりスチール製のドアを開けた先に、想像もつかない静謐で小さな別空間がつながります。

料理は十数皿用意され、まずは燗番が客の酒量を聞く。そして、それぞれの料理に合う清酒を、各人の酒量に応じて全く違う温度と異なる形の酒器で提供。ときには熱く、ときには冷たく。何度も温めたり冷ましたりを繰り返すことも、二種類の清酒をブレンドしたりも。そうやって、それぞれの酒が持つ最高のポテンシャルが引き出された状態で口に含むたび、どうしてこんなにおいしくなるのだろうかと首をひねることになります。それはもう、空気や時間経過で変化するワインどころではない、驚きの連続。

飲んだ清酒をとりあえず記録しておきます。「みやさか」「遊穂」「喜久酔」「王禄」「扶桑鶴」「高津川」「達磨正宗 辰年ブレンド」「惣誉」「鶴齢」「大治郎」「saika」「悦凱陣」「群馬泉」「竹鶴」「七本槍」「百」

3人で17合。1人6合弱。でもまだまだ飲めた感じでした。

これだけの清酒と、料理とのマリア―ジュを愉しみ、酒の状態・温度・生い立ち、そして酒器の逸話等を燗番と語り合いながら時が過ぎていく。

どうです、最高でしょ。

特に今回印象に残ったのが、滋賀は近江の「大治郎」と鴨との組み合わせ。ここまで鴨と組み合わせてウマイ清酒は初体験でした。うちの鴨と日本酒は合わないよ、という「鷹匠寿」に持ち込みたいなあ(笑。

最後に、「ふしきの」は今月から、1日〜5日をバーディとして、メニューから清酒を選び(普段は癇番におまかせ)、つまみ程度の料理で楽しむ店となるそうです。その理由は、料理人を休ませるため、だそう。そんな対応も、今までの料理店にはなかった試みですね。

posted by 伊藤章良 at 17:09| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月20日

さとなお:手島邸(福岡)

「きたうら善漁。」、気になるでしょう?
そのうち、ここで食べるためだけに旅行をしましょう。ここ以外にも宮崎はうまいものだらけ。ぜひご一緒したいものです。

さて今日は同じ九州でもう一軒。
福岡の「手島邸」をご紹介します。早良区の住宅街にポツンとある一軒家レストランです。

ジャンルとしては創作日本料理ですね。伊藤さんもそうだと思いますが、「創作」とジャンルはたいていおいしくない。基礎がしっかり出来ていない言い訳のように使われている場合も多く、恐る恐る伺うことになります。でもこの店は大丈夫。きちんとした日本料理に工夫が加わった楽しい料理が並びました。

ただ、この店の場合、料理より「時間」が主役ですね。

ここがボクがとてもこの店を気に入った理由なのですが、実にゆったりした極上の時間が過ごせるのです。
手島貢という洋画家の一軒家を、趣やアトリエの雰囲気をそのままにリノベーションして利用しており、そこら中に彼の絵が飾られています。彼が生きていたころの空気もそのまま残っています。その一角、庭に面した窓前をカウンターに作り直して料理を提供してくれます。ノスタルジックでアーチスティックでクリエイティブ。とてもいい雰囲気。そして時間。

暗い住宅街の一軒家の階段を上がって小さな玄関に入ると、まずアトリエに通されてウェイティング。
残念ながらすぐにカウンターに通されましたが、このウェイティングで食前酒でも飲みたいくらいいい雰囲気で(たぶん頼めば出してくれる)、カラダがゆっくりこの空間に馴染んでいきます。

カウンターは広い庭が見える場所。庭のライティングをもっと凝ってくれるといいなぁ。
まずは水出しの最高級煎茶をゆっくり飲んで、お任せコースに入ります。

それぞれ工夫に満ちた品々が続きます。全体に繊細で穏やかな料理群。ちょっと印象が弱い部分もあって、たとえばメインの焼き魚なんかはもっと強く印象を残してほしかったりするけど、ここはあくまでも時間が主役。このバランス感は絶妙だと感じました。

ちなみに、ボクは九州の甘い醤油がちょっと苦手なのだけど、この店はわさび漬けを混ぜて刺身を食べさせてくれました。これがとても相性よくて感心。甘い醤油とわさび漬けと刺身。細かいところだけど、こんな発見を教えてくれる。そんな店です。

メインが終わると場所を移して(違う部屋に行って)、ソファでくつろぎながらデザートと珈琲をいただきました。

趣がある部屋がいろいろあって面白いです。
昭和の「ある時間」にタイムスリップして、手島貢という洋画家のセンスある暮らしに溶け込ませてもらった感覚。贅沢ですね。

こういう店、地方にも少しずつ増えています。「きたうら善漁。」も含めて、まだまだ知らない名店が多いんだろうな。ちょっと飽和しつつある東京の食シーンを脱出して、地方でゆったりとした時間を演出している名店たちをもっともっと訪ねてみたいと思いました。

posted by さとなお at 08:50| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月10日

いとう:鹿角(西麻布)

>80歳まで続けたら膨大なコンテンツになりますしw

いやいや、とても勇気が湧いてくる言葉。まずは、80歳まで健康で文化的なチョットイイ生活が営めることを目標に、こちらこそよろしくお願いします。

>さて、新年一回目は、驚異的体験だった宮崎県延岡市の「きたうら善漁。」

この店はすごいなあ。全く耳にしたこともありませんでしたし、さとなおさんの熱い筆にもおおいに心が動かされました。本当に興味津々です。その店に食べに行くためにのみ旅行をすることも年に何回かあるけど、その中の有力候補にしたくなってきました。というか、またさとなおさんが食べに行かれる時があったら、ぜひぼくにも声をかけてください。

さて、さとなおさんが地方の名店なら、ぼくは東京で食べられる地方料理繋がりにしてみます。西麻布の秋田料理店「鹿角」です。西麻布には通算1000回以上行っている気がしますがw、ここは今回初訪問、しかも、この店の前を通ったこともありませんでした。

場所は、外苑西通りから、青山墓地や星条旗通りへと分かれる多差路の交差点(「かおたんラーメン」がある)を墓地側に進んで最初の道を左に曲がったところ。西麻布ながら、見渡すところ飲食店はこの「鹿角」一軒のみ。といっても、すでにこの地で20年以上営んでおられる実績は只者ではありません。

こういった地方料理の店は、デフォルトとして「民芸風」みたいな外観や内装がつきものですが、「鹿角」はいたってシンプル。清潔で明るゆったりとしたダイニングに、普通にカウンターがありテーブル席が設けてある。美しい女性が待ち構えていると銀座のクラブ風とも言えそうw。そんなテーブルの一角に座ってメニューを見ると、それはもう自分の知っている秋田料理が全て並んでいます。

白マイタケ、セリ、じゅんさい、とんぶり、ハタハタ、比内地鶏、いぶりがっこ、そしてきりたんぽ鍋。もうこれだけでフルコース。酒のツマミとしても、真冬に心から温まりたいときも、そして低カロリーの食材をお腹いっぱい食べたいときにも、このフルコースはすべてに最適。しかも、東京西麻布にいながら、マイタケ、セリ、ハタハタなどの食材は超逸品。普段、ふつうに口にするモノとは生命力の違いを感じます。

なんといっても、この時期のメインデッシュはきりたんぽ鍋。注文をしておくと、女将さんがいい頃合いでじっくりと煮込んでいる様子がすでに視野の中に。お野菜やきりたんぽとともに、比内地鶏の身ばかりかレバーや玉ひも(内臓卵)などもどっさりと入り、素朴で変わらない(アレンジを加えていない)味。寒い地方の食文化にも改めて感謝の気持ちが湧いてきます。

酒は、秋田の清酒が数種類。店名と同じ鹿角という初トライの清酒は、冷や(常温)でとのお店側からの注釈つき。これが秋田料理と絶妙の相性で、やはりその土地の料理はその土地の酒、というのが世界共通ですね。
posted by 伊藤章良 at 17:54| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月29日

さとなお:きたうら善漁。(宮崎県延岡)

伊藤さん、みなさん、いまごろですがあけましておめでとうございます。
伊藤さん、今年もマイペースで更新していきましょう。こんなペースでも、80歳まで続けたら膨大なコンテンツになりますしw

伊藤さんが想像してたとおり、まぁ去年はいろいろあって、ある意味「自分らしくない」一年だったのかなと思います。でも、ものすごく貴重な体験をたくさんしました。というか、一時期「おいしい」という感情から離れてましたからねw 食に向き合えないというか。それはそれで数年経つとボク独自の見方になっているのだろうとは期待したいところです。今年もよろしくおつきあいください。

さて、新年一回目は、驚異的体験だった宮崎県延岡市の「きたうら善漁。」を書こうと思います。「きたうらぜんりょうまる」と読みます。各地から食べ好きがその噂を聞いてわざわざ訪れるという最近有名な割烹です。

延岡というのは宮崎市から北へ電車で1時間半くらいかな。
高千穂に抜ける海沿いにあるのですが、まぁ特に観光地というわけでもありません。駅も小さく、「こんなところに東京からわざわざ食べに来る人がたくさんいる店が??」と疑ってしまうほど不便な場所。九州新幹線も通ってないし、本当に行きにくい町なんですね。こんなところで経営していけてるのかなぁと心配になります。

駅からタクシーで5分ほど。飲食街にひとつだけ超モダンな和風建築一軒家がポツンとある。ここが「きたうら善漁。」です。いや、たしかに、これはタダモノではないかも…という雰囲気を醸し出してます。

中に入ると広いカウンターが6名くらい、奥にテーブル席が4つほど。それと2階もあります。延岡にしたら大箱だと思いますが、とても親密な雰囲気が漂っていて「あぁここは間違いなくいい店だ」とカウンターに座った瞬間にわかる感じ。

メニューは毎日変わるし、お客さんによっても変化をつけているみたいです。
ボクたちは何度か来たことある方と一緒だったので、その方のリクエストも取り入れたコース構成でした。

この日は粕汁から始まりました。
暖まったし新年っぽいけど、でも料理長はこの後いったいボクたちをどこに連れて行こうとしてるんだろうと少し不安になりながらのスターターではありました。

でもこのあとがすごい。メニュー(ひとりひとり刷り物をくれます)に書かれた文章を抄録しながら書いていくと、

尾長ぐれ(硬直の直前を狙い十二時間前に〆た)
サンノジ(あまり注目されない魚をおいしく焼っ切り)
寒ブリ(三日間風干しした活〆を燻し焼き)
白菜(鰹と昆布のお出汁で)
安納芋(低温で二ヶ月寝かせて低温で二時間焼いたもの。マスカルポーネなどと)
吉玉家の豚フィレ(低温で三週間熟成した肉を六種類の熱源で火入れ)
ご飯(無農薬栽培の米を土鍋で)
ぶえん汁(自家製味噌の汁)

どれも素晴らしかったけど、特に印象的だったのは、出汁の味とサンノジと安納芋。そして、なんといっても豚フィレ肉。

この豚フィレ肉、まずは「吉玉家(一部「よっとん」と呼ばれてます)」の豚がすごい。育て方も相当すごいらしいのだけど、味が超繊細で飲み込むのが惜しい感じ。それを六種類の熱源で慎重に長時間火入れしてあるわけです。

ここまで繊細かつ完璧な火入れをする店は、他に白金の「カンテサンス」くらいしか思い浮かびません。そのくらいは繊細だし、そのくらいはおいしい! というか、これはもう和食というかフレンチというか、ジャンルも思い浮かびませんね。盛りつけも含めて、とても都会的なことは確か。

調味料も厳選したものを使っていて安心できるし、日本酒やワインもちゃんとしたものを置いています。従業員の意識も高いし、ご主人もマダムも素敵。いやー、ここ、ホントに延岡?? 

で、驚きは、このコースが5500円であること。
客観的に言って、東京なら12000円のコースだとしても文句はないです。そのくらいレベル高かったし美味かったし楽しかったです。また季節ごとに行かなくちゃ!

地方都市での高級店経営は大変です。お客さんの数もそうだけど、たとえば鮨店なら「酢で締めてるなんて古い魚使ってるんだろう!」とか言われたりすると聞いたことがあります。そういう意味で、こういう店を地方都市でやっていくのは本当に大変だとは思いますが、この日も満席、予約が絶えないそうで、ご同慶の至りです。

なお、以前は善漁丸という船からの仕入れだったそう(いまは大日丸という船からのもののようです)。
延岡を離れないのは、この辺の素材の良さから離れられないから、だそうです。勝手知ったる延岡の魚や野菜や肉。それらと末永くつきあっていくのだ、という気概を店の外観・内装・料理・従業員から感じました。

東京もんには不便だけど、また行きたい良店です。

posted by さとなお at 21:04| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月06日

さとなお:魚菜工房 七重(八戸)

なるほど岐阜ですか。
岐阜市はあまり縁がないのですが、その店に行くためだけに行きたいなぁ。でもそこの味が東京で食べられるのもうれしい限り。ぜひ行ってみます(食べログのほとぼりが冷めてから)。

さて、せっかく西の味に行きかけたのに申し訳ないのだけど、本州の東の端っこの方、八戸の食を書いてみたいと思います。

先週行ってきて、かなりおいしいものに出会って、八戸の食に開眼したのだけどw、特に鯖はうまかったですね。まだ旬には少し早いのだけど、これで旬が来たらどうなるのか、ってくらいはうまかった。

もともと八戸はイカの漁獲高日本一の街なので、イカはそりゃめちゃくちゃうまいわけ。
でも、地元に行くと皆が「鯖もいいよ」「鯖が最高!」と勧めてくれる。八戸沖さば、と呼ばれてブランドになっているんですね。

で、今回ご紹介する「魚菜工房 七重(ななえ)」
かなり年季の入った小さなホテル「八戸ニューシティホテル」の七階最上階にあって、「まさかこんなところに美味しい店が?」と思いつつ入ったのだけど、いやいやどうして、素晴らしいおいしさでした。

ここは「虎鯖棒すし」が名物。
料理長の谷口さんが、20本に1本しか獲れない600グラム前後の厳選した八戸産の鯖を「虎鯖」と名付け、独自の工夫の末、塩・酢のみを使用して締め、作り上げた一品。「すっぱい固い甘い〆鯖は嫌い」と言うだけあって、すっぱくも固くも甘くもない絶妙なバランスの味。というか、酢締めしている感じがしないほど生っぽい。それが適量のご飯と出会って実においしい棒すしになっています。

当然これは人気が出て、首都圏の物産展の常連でもあるようですね。
知らなかったんだけど、船橋東武の物産展ってものすごく充実しているらしいですね。そこをはじめ、高島屋系とかにも出展しているとか。今後調べて買いに行ってみたいと思っています。その場で作ってくれるそうなので、作りたてを家族に食べさせてみたい。

この店、鯖のみそ造り(3日かけてゆっくり煮込む。パサパサではない味噌煮)も実に良かったし、他の一品類もそれぞれ美味。
かなりカジュアルな居酒屋なんだけど、味はとてもいい店だと思いました。

なお、鯖だと、八戸市内の「サバの駅」という店もとても良かったです。
この店の絶品は「鯖の串焼き」。そして「鯖の味噌締め」。どちらもひっくり返るくらいうまい。オススメ!


posted by さとなお at 15:53| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月27日

いとう:晴山(三田)

「御田町 桃の木」、中国料理とワイン、というと、ぼくも真っ先にこの店を思い出します。でも、そこまでオーストリアワインがあったとは、記憶に残っていませんでした。ウィーン滞在中も、ほとんどワインに親しむ時間がなく忸怩たる思いが続いたので、リベンジしてみようかなあ・・・。

さて今回は、「御田町 桃の木」と、目と鼻の先繋がり(笑)で、日本料理「晴山」を紹介します。「御田町 桃の木」とは三軒隣りぐらい、ビルだとまさにすぐ隣りの地下。ほぼ一か月前に「晴山」はオープンしました。板長は山本晴彦さんといって、それで「晴山」と名付けたそうです。

話は変わりますが、ぼくは以前、年に一度、岐阜市に出張していた時期がありました。体力的にもしんどくて割の悪い仕事だったんだけど、最初の日の夜に日本料理の名店「たか田八祥」へ訪れて以降、毎年そこに行くことが、この仕事を引き受けるモチベーションになりました(笑。

ただ「たか田八祥」は料亭ゆえ座敷の個室なので、出張終わりに一人でサクッと訪問するには少々緊張と退屈。いっぽう岐阜市内には、「こがね八祥」や「わかみや八祥」といった「たか田八祥」で修業を積んだ若い板長が営む割烹もあり、そこは大変威勢が良く一人でも快適に過ごせる空間。しかもアラカルトでウマイものをポンポンと出してもらえて短時間で勝負もつく。名古屋から最終間際の新幹線に飛び乗るときにも最適でした。

「晴山」の山本さんは、その「たか田八祥」で修業。その後、上記二軒の割烹にて店長も務めた後、もともとが関東の出身ということで東京にて店を出したとのこと。

「晴山」は、入口こそこぢんまりとして一瞬通り過ぎそうになるものの、店内は意外と広く、真ん中の厨房を隔てて左右にテーブル席とカウンターがあります(元々は寿司屋でした)。でもやはり特等席は板長の前でしょうか。さすがに活気ある割烹で店長も務めた実績からか、若いのに段取りもよく、包丁づかいも堂々としていて、客あしらいもうまいんです。

にもまして、久しぶりに西の日本料理を食べたなあ、との充実感。ぼくにとっての西の料理のカテゴリは、京都とは別次元の、滋賀や大阪や奈良や岐阜の料理だったりするんですが・・・。
絶妙なのに決して消え入らない主張のあるダシ加減、大胆な切り身のお造り、魚介のキモを使ったソース、そして「たか田八祥」の名物でもある「じゃがいものハリハリ」や「海苔茶漬け」も登場し、ニンマリの連続。でも、なんといっても圧巻なのは、郡上八幡の鮎。

日本各地に鮎の名産地はありますが、ピュアで香り高いことでも知られるこの地の鮎を、さすがに地元岐阜の名店出身ゆえか、キッチリと出してくれます。具体的に表現するなら、円筒形といっても大げさじゃないぐらいパンパンに身が詰まり、内臓はまったく濁りのないモスグリーン。食事中もパチパチと常に炭の弾ける音が響く細かい管理のもと、最高の火加減で登場します。もちろんタデ酢の必要はなく、頭からがりがりと食べられて背骨も十分に柔らかい。

会話のエッセンスとなる驚きの皿を交えながらも、鮎といった王道の食材はその極みまで追求する。オープン一ヶ月ながら、堂々たる風格です。

ただ、少し残念だったのが清酒の品ぞろえ。個人的な好みもあるんですが、繊細な料理の味付けの割に、香りや甘味の強い酒を置きすぎか、とも思いました。

そして、もう一つ気がかりなのは、オープン一ヶ月にしてすでに食べログの点がものすごく高いこと。食べログの点が高いというだけで、その店の実力とは関係なく全く予約が取れなくなってしまうことを、ぼくは密かに「バカール現象」と呼んでいますが(笑)、「晴山」は実力を蓄えているだけに、こうなって欲しくないなあと願うばかりです。
posted by 伊藤章良 at 00:27| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月23日

いとう:山ね家(赤坂)

そうですか。「かみはら」、行かれましたか。
ぼくはずっと「かみはら」応援団なんですが、つい最近まで食べログにすら書き込みがなく、女将さんから弱気な発言を聞いたりして、心配していました。

健在、のようで安心です。あの隠れ家感、低価格で飲み放題というオペレーション、そしてカントリーが流れる不思議な店内と女将さんのホスピタリティ。東京では唯一無二の店ですね。

カウンターのうまい店。けっこう悩むお題なので、「まぁ割烹とはいえ居酒屋的な雰囲気」みたいな繋がりで。「山ね家」を。ちなみにこの店も食べログの書き込みは一件だけです(笑。

「山ね家」は赤坂なんですが、いわゆる一ツ木通りとか飲食店密集エリアではなく、赤坂のTBS前あたりから乃木坂へと抜ける道をしばらく行き右に折れてすぐ。昔は「コロンビア通り」と確か呼んでいた、タクシーの抜け道のような通り沿いです。

割烹を意識して作られたレイアウトではなく、おそらく元々はバーとかスナックだったであろう店内に手を加え、食事処としてもくつろげるように工夫されています。およそ料理人とは思えない長身で色白のご主人と、笑顔がさわやかな女性とで営む居心地のいい空間で、月並みですが「時の経つのを忘れる」寛ぎがあります。

俺の料理はスゴイだろうという構えもなく、ウチの酒は天下一品だとの驕りも、微塵もない。でも、丁寧に仕込みがされて、ご主人の人柄を具現化するようにやさしく仕上げられた料理には幸せを感じます。また、メニューアイテムをやたら広げるのではなく、一人でまかなえる範囲に絞って提供される様にも賛同。

酒も、比較的有名な地酒と、ご主人の出身地広島を中心にレアで純米酒好きが飛びつく系の酒が半々ほど。どちらの嗜好にも満足できるように工夫されてるなあと、さらりとしたこだわりも垣間見て感心。

〆には、その日の炊き込みご飯と豚汁をぜひ。高額日本料理店並みのクオリティを実に安価に楽しめます。

交通至便な場所ではありませんが、逆に赤坂〜乃木坂界隈ではピンポイントでチョイスできる店だと思います。深夜までやさしいご飯が食べられることも大きな魅力かな。
posted by 伊藤章良 at 14:11| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月12日

さとなお:割烹かみはら(恵比寿)

古いカウンターイタリアンっていいですね。
東京の歴史的イタリアンとしては「キャンティ」「ニコラス」「アントニオ」「チャオ」とか指折れますが、1976年開店とすると、その「ピエモンテ」もほぼ同じ頃の草分け店ですね。すばらしい。すぐにでも行ってみたいw

では、ボクもコントワーつながりで。
恵比寿の松坂屋ストアの地下にあるカウンター割烹の「かみはら」を。

恵比寿南から近いところにある古いスーパー「松坂屋ストア」はご存じですよね。
あの地下にバーとか割烹とかいろいろお店があるのだけど、行ったことなかったのです。友人に連れられなかったら一生行かなかったかもなぁ。

で、その奥まったところにある店がここ。10席のカウンターの中に若く美しい女将さんがひとり割烹着を着て待っていてくれます。まぁ割烹とはいえ居酒屋的な雰囲気。決して高級なわけではなく、カジュアルです。

値段もカジュアル。なんと「5500円のコースのみで飲み放題」。
これって一瞬「大丈夫かな」な世界ですが、料理を食べるとそのギャップに驚きます。なかなかなのです。

丁寧に丁寧に作られた野菜中心の優しい料理群。かなり繊細に素材に気を遣ってるのがわかります。小鉢3品を先付に、魚も小鍋もちょっとした素揚げも全部おいしかったな。だいたい7品でお決まり。お腹もちょうどいい感じ。ラストの完全無農薬の炊きたて土鍋ご飯まで隙なくうまいです。

そしてお酒は、ビール(黒ラベル)が2本までと決まってますが、それ以外は本当に飲み放題。
女将が「利酒師」らしいのですが、日本酒は宮城の「宮寒梅」のみ3種類。焼酎は「黒霧島」と「てっぺん」。厳選された緑茶で割ってくれたりもします。他にビワエキスを配合したビワミン割りという珍しいものもある。ただ、飲み残しは600円、と厳しいので(笑)、適量を頼みましょう。

こういう一品のおいしい店は、ちょっと来てちょっと食べてちょっと飲んだりしたいけど、たぶん女将ひとりだとそういうアラカルトは手が回らないのでしょう。コースのみなのがちょっと残念。しかも基本的に予約制だそうです。まぁ30分くらいまえに電話くれればいい、ということですが。

でも隠れ家的に知っておくといい店だと思います。
カントリーの楽器が隠して置いてあったりして(オーナーが演奏家だとか)、ちょっと不思議な雰囲気でもあります。
posted by さとなお at 19:05| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月10日

いとう:美鈴(四谷三丁目)

あけましておめでとうございます。
さとなおさん、今年もよろしくお願いします。

年が開けて、あっという間に10日も経ってしまいました。更新さぼってしまってごめんなさい。今年もぼちぼちやりましょう。

川口に、坂本龍一・大貫妙子のコンサートですか。
大人・・・な感じですねえ。この二人って、昔付き合ってたんですよね。ラジオ番組でユーミンにバラされちゃった場面をリアルタイムで聴いてました。何十年も前のことですが・・・。

といいますか、ぼくにとっての坂本龍一は、1980年代初頭に京都会館別館ホールで観た、EP-4とのジョイントコンサート以来止まっている(笑)かなあ。アレ以来、立ってタテノリで演奏している教授を見ていないような気もします。

>こういうとき、ネットで検索して店を探すのもいいけど、
>初めての街では「歩いて探す」というのがわりとイイですね。

とても同感です。
また、そんな時にナカナカの店を引き当てると、すごく得した感がありますよね。あえてその店は検索等の復習をすることなく取っておく、みたいな。

では、ちょっとニュアンス違いですが、ぼくもタナポタ的な話を。
年末に四谷三丁目、いわゆる荒木町で飲もう、ということになって、場所だけ決まったんだけど、店選びは相手に任せたんですね。で、四谷荒木町商店会の公式マップで見つけたという「美鈴」に決めたとの連絡。

ぼくはなぜか「美鈴」と聞いたときに、以前ここでも紹介したこともある「鈴なり」と勘違いして、「あ、いい店だよ。了解」と答えてました。

直前に間違いに気づいたんですが、予約の電話の際とても感じがよかったとのこと。検索してみたら食べログに一件の口コミもない! これはいい店だと確信し、迷わず「美鈴」へ訪問しました。

がらっと開けると、カウンター席と小上がり。荒木町で40年の女将さん(ただし、この店は十数年と言っておられました)。そしてその姪の二人で切り盛り。ここが東京のど真ん中かと、自分の位置を見失うほどの穏やかな空気。場末感漂う中にきらめく気品。

優しいべらんめえ口調というか、女将さんのつかづ離れずの絶妙な接客と、意外ときちんと仕込みがされた手料理。そして、決して新しいわけではないけど、隅々まで日々磨かれているであろう恐ろしいほど清潔なカウンター。

何か、飲食店とはこうあるべき、の原点を見たようで、年末に心が洗われました。
また、一人で訪れる中年男性や、年配者と若者のイイ関係のグループなど、新橋や新宿では見失いつつある上客の常連も多い様子。

店を辞した後、集まった仲間と毎年年末にここに来ようか、みたいな話になりました。
posted by 伊藤章良 at 10:47| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月14日

さとなお:蔵(八戸)

毎回謝っている感じですが、更新できずすいません。
この2週間、本当に忙しくバタバタしてました。貴重な休みの土日も先々週は十勝、先週は八戸で講演。ちょいと疲れてしまいました。

それでも十勝や八戸は、講演の前後に遊べるのでリフレッシュはできました。
今日はその中から八戸の「蔵」を書いてみます。

八戸では「ばんや」をいろんな人に勧められたのですが、あいにくお休み。で、地元の方に南部民芸料理「蔵」という店に連れて行ってもらったのです。南部とは南部藩のことですね。

ビルの中にあるのに内部は完全に一軒家風。南部の民家を再現していて、2階は天井も低い屋根裏になっています。黒くて太い梁が縦横に走り雰囲気は抜群。囲炉裏も再現されています(炭火ではなくガス使用なのが残念ですが)。囲炉裏端にあぐらをかいての食事になります(腰が痛い方には辛いかも)。

料理は郷土料理ですね。
まず、八戸は八戸港がありますから、魚は抜群の質。特にイカ、サバは素晴らしい(沖前サバと呼ぶらしい)。関サバなどに比べると脂質が多いもので、口溶けが官能的。

刺身を盛り合わせてもらって、きんき(現地ではキンキンと呼ぶ)を焼いてもらって、独特の南蛮味噌をつまんで、ホヤ(残念ながら旬は過ぎてましたが、でも上質でした)を味わって、と、これだけでも十分満足な流れなところに、八戸名物せんべい汁、そして蕎麦かっけ。すばらしい。

せんべい汁は、B級グルメ選手権で一気に全国区になった食べ物だけど、まぁちょっと侮ってましたね。これには逆らえないうまさがある。八戸は米どころじゃないせいか、せんべいは米でなく小麦粉で作られます。つまり麺と同じ方向性。ダシが染みこんだもちもちのせんべいは、なんというか、ちょっと「ほうとう」に近い印象でした。うまひ。
蕎麦かっけは、蕎麦のかけら、という意味。蕎麦を薄くのばしたものを「そば切り」にせず、三角形に切って、汁の中に入れて供するもの(ネギや豆腐なんかも入ってます)。まぁそばがきを薄くしたものを想像してください。香りが強くなかなか美味。いいなぁ蕎麦かっけ。

地酒は八仙がおいしかったですね。接客も丁寧で親切。囲炉裏上の板木を鳴らして呼び出します。雰囲気もいいし郷土料理はひと通り揃っているし(いちご煮なんかももちろんある)、観光客も楽しいでしょう。

八戸は奥が深そうだけど、入門編的にとてもいい店だと思うです。
posted by さとなお at 06:49| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする