2012年04月08日

いとう:くろいわ(恵比寿)

少し間があいてしまいました。申し訳ありません。
さすがに、年度末から年度始めにかけての忙しさと、さとなおさんが書いてた金沢の「玉響」〜「一献」からのつながりにしばし悩んで、時間が経ってしまいました。そういえば、「たまゆら」って銀座にもありましたね。さとなおさんが10円のマジックを披露した店(笑。彼女も元気でやってます。

さて、夫婦で営まれるケースが多い割烹の場合、女性の役割というか、占める位置がとても重要ですよね。基本的には料理を楽しみに訪れているんだけど、女将さんがいるのといないのとでは、料理自体の印象にも影響が出るように感じてしまう。さとなおさんも高く評価していた神宮前の「樋口」も、女将が産休で不在の時に伺って以降、すっかり足が遠のいてしまいました。きっと今では復帰されていることとは思いますが。

四谷三丁目にある「車力門ちゃわんぶ」でも、新たにこの地に店をオープンしてすぐ女将さんがオメデタ。今では出産して不定期ながら復帰されてますが、おられる時といない時の居心地の差が大きいように感じます。居心地だけですめばいいんだけど、料理の味にも差があるように思えるのが不思議。

と、そんな流れで、恵比寿に昨年11月オープンした「くろいわ」を紹介します。ここも、以前の修業先で知り合った二人が夫婦で始めた店。オープンのとき、東京の名だたる割烹から多数の花が届いていて、新しい門出とともに二人を祝福するようなムードも感じ、開店当初から興味を持ちました。

そんなキッカケもあって早々に訪問を重ねたので、店主曰く、ぼくが最初の「くろいわ」のリピーターだそうです。もうすでに超人気店だしグルメサイトの評価も高いので、これから訪問する方は少々予約がしんどいかな。

この店のなにより面白いところは、店主の奥様は女将ではなく板前なんですね。今までの、ほぼすべての割烹では、男性が主人で花板で、女性は女将でホールのサービス担当と確実に決まっていたわけですが、「くろいわ」は二人が料理人であり、酒のサービスも下げ物も二人が交代でする。夫婦共々、料理のことも酒のことも器のことにも通じている。最後に出されるお菓子は、「ぼくにはとうてい作れません」と、主人は密かに妻の自慢をする(笑。

初めて訪れた時、奥様がぼくの目の前で魚を切り出して驚愕。板前の花形仕事であるお造りでさえ女性に任せているその度胸。これからの日本料理店として、すごい可能性を感じてしまいました。

さらに、「10年後には、彼女が着物を着てカウンターの外でお酒のサービスをしているかもしれません」と、オープン当初においても、10年後の構想までサラッと語ってしまうところにも敬服。

料理は、日本料理を食べ込んでいる人からすれば、まだまだ整えただけな感じの皿も混じるし、やりたいことや情報が多過ぎて、整理のついていない幼さも、もちろんあります。でも、料理屋における女性の立場を変えるかもしれない店であり、多くの先輩や同僚からも支持される素晴らしい二人の将来に、多大な期待を抱かずにいられない、と思っています。
posted by 伊藤章良 at 18:14| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする