2012年03月02日

いとう:ふしきの(神楽坂)

さらなる九州の店、こちらも「きたうら善漁。」と双璧ですね。
(多少、行きやすいでしょうか 笑)

さとなおさんの文脈から感じられる空間の広さや奥行も、地代の高い東京ではなかなか実現しにくいところだし、芸術家のお宅ならではのセンスの良さにも惹かれます。

こんな店に匹敵する、というか繋がる場所がなかなか思いつきませんが、

>ただ、この店の場合、料理より「時間」が主役ですね。

というさとなおさんの言葉に反応して、つい先日、ステキな時間を過ごしてきた「ふしきの」を紹介します。

「ふしきの」は、燗番のいる日本料理店とカテゴライズするのが一番分かりやすいですが、それだけの言葉ではまったく表現しきれていない、すばらしい「清酒とのひととき」を体験させてくれる空間です。
燗番とは、その字のごとくお酒の燗をする人のこと。清酒を提供する店におけるソムリエのような存在。ただ、提供する酒について厳密な温度管理が要求される点で、ソムリエよりもさらに繊細な仕事のように思えます。なにより、ぼくの憧れの職業のひとつであります(笑。

燗番のいる居酒屋として、門前仲町の「浅七」や神楽坂の「伊勢藤」などが知られますが、店のセンターに陣取っている名物親父な存在感は否めず、こだわりゆえか様々な制約もあって今一つ寛げない。

一方「ふしきの」は、所作も話口調もとても柔らかくて上品な燗番が実にきびきびとカウンターの客を仕切り、特に酒を準備する際の動きやその道具の美しさは、ホレボレと見とれてしまうほど。

その燗番の方が作り出す「時間」が、本当に心地よいのです。

場所は神楽坂。メインストリートから少し脇にそれたビルの2階。とても飲食店とは思えない非常階段のようなステップを上がりスチール製のドアを開けた先に、想像もつかない静謐で小さな別空間がつながります。

料理は十数皿用意され、まずは燗番が客の酒量を聞く。そして、それぞれの料理に合う清酒を、各人の酒量に応じて全く違う温度と異なる形の酒器で提供。ときには熱く、ときには冷たく。何度も温めたり冷ましたりを繰り返すことも、二種類の清酒をブレンドしたりも。そうやって、それぞれの酒が持つ最高のポテンシャルが引き出された状態で口に含むたび、どうしてこんなにおいしくなるのだろうかと首をひねることになります。それはもう、空気や時間経過で変化するワインどころではない、驚きの連続。

飲んだ清酒をとりあえず記録しておきます。「みやさか」「遊穂」「喜久酔」「王禄」「扶桑鶴」「高津川」「達磨正宗 辰年ブレンド」「惣誉」「鶴齢」「大治郎」「saika」「悦凱陣」「群馬泉」「竹鶴」「七本槍」「百」

3人で17合。1人6合弱。でもまだまだ飲めた感じでした。

これだけの清酒と、料理とのマリア―ジュを愉しみ、酒の状態・温度・生い立ち、そして酒器の逸話等を燗番と語り合いながら時が過ぎていく。

どうです、最高でしょ。

特に今回印象に残ったのが、滋賀は近江の「大治郎」と鴨との組み合わせ。ここまで鴨と組み合わせてウマイ清酒は初体験でした。うちの鴨と日本酒は合わないよ、という「鷹匠寿」に持ち込みたいなあ(笑。

最後に、「ふしきの」は今月から、1日〜5日をバーディとして、メニューから清酒を選び(普段は癇番におまかせ)、つまみ程度の料理で楽しむ店となるそうです。その理由は、料理人を休ませるため、だそう。そんな対応も、今までの料理店にはなかった試みですね。

posted by 伊藤章良 at 17:09| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする