2011年07月27日

いとう:晴山(三田)

「御田町 桃の木」、中国料理とワイン、というと、ぼくも真っ先にこの店を思い出します。でも、そこまでオーストリアワインがあったとは、記憶に残っていませんでした。ウィーン滞在中も、ほとんどワインに親しむ時間がなく忸怩たる思いが続いたので、リベンジしてみようかなあ・・・。

さて今回は、「御田町 桃の木」と、目と鼻の先繋がり(笑)で、日本料理「晴山」を紹介します。「御田町 桃の木」とは三軒隣りぐらい、ビルだとまさにすぐ隣りの地下。ほぼ一か月前に「晴山」はオープンしました。板長は山本晴彦さんといって、それで「晴山」と名付けたそうです。

話は変わりますが、ぼくは以前、年に一度、岐阜市に出張していた時期がありました。体力的にもしんどくて割の悪い仕事だったんだけど、最初の日の夜に日本料理の名店「たか田八祥」へ訪れて以降、毎年そこに行くことが、この仕事を引き受けるモチベーションになりました(笑。

ただ「たか田八祥」は料亭ゆえ座敷の個室なので、出張終わりに一人でサクッと訪問するには少々緊張と退屈。いっぽう岐阜市内には、「こがね八祥」や「わかみや八祥」といった「たか田八祥」で修業を積んだ若い板長が営む割烹もあり、そこは大変威勢が良く一人でも快適に過ごせる空間。しかもアラカルトでウマイものをポンポンと出してもらえて短時間で勝負もつく。名古屋から最終間際の新幹線に飛び乗るときにも最適でした。

「晴山」の山本さんは、その「たか田八祥」で修業。その後、上記二軒の割烹にて店長も務めた後、もともとが関東の出身ということで東京にて店を出したとのこと。

「晴山」は、入口こそこぢんまりとして一瞬通り過ぎそうになるものの、店内は意外と広く、真ん中の厨房を隔てて左右にテーブル席とカウンターがあります(元々は寿司屋でした)。でもやはり特等席は板長の前でしょうか。さすがに活気ある割烹で店長も務めた実績からか、若いのに段取りもよく、包丁づかいも堂々としていて、客あしらいもうまいんです。

にもまして、久しぶりに西の日本料理を食べたなあ、との充実感。ぼくにとっての西の料理のカテゴリは、京都とは別次元の、滋賀や大阪や奈良や岐阜の料理だったりするんですが・・・。
絶妙なのに決して消え入らない主張のあるダシ加減、大胆な切り身のお造り、魚介のキモを使ったソース、そして「たか田八祥」の名物でもある「じゃがいものハリハリ」や「海苔茶漬け」も登場し、ニンマリの連続。でも、なんといっても圧巻なのは、郡上八幡の鮎。

日本各地に鮎の名産地はありますが、ピュアで香り高いことでも知られるこの地の鮎を、さすがに地元岐阜の名店出身ゆえか、キッチリと出してくれます。具体的に表現するなら、円筒形といっても大げさじゃないぐらいパンパンに身が詰まり、内臓はまったく濁りのないモスグリーン。食事中もパチパチと常に炭の弾ける音が響く細かい管理のもと、最高の火加減で登場します。もちろんタデ酢の必要はなく、頭からがりがりと食べられて背骨も十分に柔らかい。

会話のエッセンスとなる驚きの皿を交えながらも、鮎といった王道の食材はその極みまで追求する。オープン一ヶ月ながら、堂々たる風格です。

ただ、少し残念だったのが清酒の品ぞろえ。個人的な好みもあるんですが、繊細な料理の味付けの割に、香りや甘味の強い酒を置きすぎか、とも思いました。

そして、もう一つ気がかりなのは、オープン一ヶ月にしてすでに食べログの点がものすごく高いこと。食べログの点が高いというだけで、その店の実力とは関係なく全く予約が取れなくなってしまうことを、ぼくは密かに「バカール現象」と呼んでいますが(笑)、「晴山」は実力を蓄えているだけに、こうなって欲しくないなあと願うばかりです。
posted by 伊藤章良 at 00:27| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする