2011年03月29日

いとう:暖(都立大学)

さとなおさん、本当に連日お疲れ様です。さとなおさんの震災に対する活動は今さらここで取り上げるまでもないと思いますが、ぼくも少なからず(特に「食」の面から)支援ができることをコツコツと進めてみます。

さて、少し滞ってしまたものの、対談もゆっくり続けましょう。
こんな時に食べ物の話・・・、という御叱りも受けそうだけど、ぼくはどんな時でも食べ物の話が人を幸せにすると信じているので。

今回取り上げる店は、東横線都立大学にある「暖(だん)」
なんとなく、いい名前でしょ。しかも「みのりの旬菜と鰆鰒鰍鮗」というサブタイトル。かなりそそりますよね。

東横線都立大学駅には、対談でも書いた「わさ」という有名な中国料理店がありますが、ソコとは反対方向に一本道をテクテクと歩きます。そして、かなーり心配になってきた辺りで(といっても「わさ」ほどは遠くありませんが)、やっと灯りが見えてきます。

本当に住宅街のど真ん中。初めて訪れた客は皆、どうしてここに? と店主に聞くに違いない。ただ、そんなウィークポイントも覆すほどの彼の人柄と料理の腕前に、「暖」はとても賑わっているようです。

都立大で食事をしようということで店を探していて、たまたま「暖」に電話をした際、ぜひこちらに行ってみたいと思うぐらい、電話に出たご主人の応対はすばらしいものでした。

「暖」は、元々スナックのような簡素な内装をそのまま居ぬきで引き継いだ風情で、料理店としては少々残念な感じ。加えて調理をするには狭く小さい厨房ながら、ご主人は一人で孤軍奮闘。実に多岐に渡る料理を提供しています。

ご主人の経歴をネット等で見ると、多種の業態を展開している大きな飲食運営会社にて、様々な店で研鑽を積んことが分かります。ご本人の談で、中国料理が一番長くメインとの聞きましたが、黒板に書かれたメニューの上段は、鮮魚のお刺身や和風のツマミ、コロッケなどの和食。そして下段に、中国料理の菜単が並んでいます。

どれもオイシそうなので悩んでいると、まずはお刺身はどうですか?と。ただ、中華のモードで来店したゆえ、鮮魚をできるだけ回したい店主には申し訳ないものの、すかさず遠慮。店主のオススメで選んだ「暖」の名物、「すき焼きコロッケ」や、きっちり仕込んであるツマミ系、そして中国料理の皿を数点。

どれも、狭い厨房でササッと作ったとは思えない出来栄えに酒もすすみます。一通り食べた後、まだまだいけそうなので、というかもっと彼の料理を食べたくなり、「酢豚みたいな、すっぱいくて温かい料理をお願いします」と、微妙な頼み方をしました。

てっきり酢豚を作ってくると思いきや、イカと海老を四川のレシピである宮保(唐辛子炒め)にし、そこに黒酢を加えてみました、という。そのアレンジもさることながら、ぼくが心の中で描いた通りのテイストでニンマリ。

もちろん、都立大駅の反対側にある「わさ」が誇る技の極みとは別物だけど、「暖」の個性を発揮すれば十分に対抗しうる良店と感じました。

ただ、ひとつ残念なのは、土地柄やむを得ないとも思いますが、常連客がカウンターを占拠して近所のスナック替わりになっている点。ほとんど食べずひたすら飲むばかりで、一夜のアバンチュールに興じる嬌声が店内に響き渡る・・・。ご主人の、真摯に料理を提供しようとする気概が空回りしています。

こんな店にこそ、例えば沿線の食べ好きに多く来店していただき、常連に占拠されない料理店へと客同士で作り上げたいと願います。
posted by 伊藤章良 at 15:46| 中国料理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする