2015年11月30日

いとう:トラットリア・ダ・ディーニ(白山)

「今彩」、すごくいい感じですね。
神楽坂、最近かなり頻繁に行ってるのですが、なかなかこちらまで足が伸びませんでした。
さらにロブション出身者の新たな展開は、かなり注目です。フランスで店を開いたツワモノもいますし。大きな厨房ですから優れた料理人も数々排出するわけです。しかも皆さん、あまりロブション風をふかさず、そこに基軸のみを置いて、ご自身で個性的な展開を求めておられるところもかっこいいです。ロブションの名声にぶら下がって、やたらと高いレストランをやってる面々もいますが(笑。

さて、今回のぼくは、少しだけ矛先を変えてイタリア料理店にしてみます。
「トラットリア・ダ・ディー二」。
この名前でさとなおさんがピンときたらさすがですが(笑、そう、この対談で2007年にさとなおさんが紹介されていた、恵比寿の「リストランテ・ダ・ディーノ」のシェフが奥様と白山にオープンした店なんです。
と書くと、さとなおさんむちゃくちャ行きたいでしょ。
「ダ・ティーノ」お気に入りだったからなあ。

なぜか、最近文京区がいいんです。なんというか、形より質、な感じのレストランが文京区に続々と集まってきています。いずれの店も小さくてしかも少人数でのオペレーションですが、さまざまに個性やコンセプトや熱意がこもっていて、文字通りハッタリは一切なし、みたいな店ばかりです。
「ダ・ディー二」もまさにそんな形容がふさわしい一軒。一見すると本当に商店街の中に溶け込むふつうの喫茶店のようで(というか、この店が入る以前は本当に喫茶店だったのかも)、母娘が普段着で来てパスタ食べてコーヒー飲んで帰るとか、遅い時間に女性の一人客がカウンターで寛ぐ姿を見かけたり、まさに今のところは、近所使いがメインなのかもしれません。

でも、間違いなく「ダ・ディーノ」の料理は健在です。食材に対する焦点の当て方、味わいの引き出し方。付け合せのルーコラひとつひとつにまで、こまやかな気持ちを行き届かせた完成形へのこだわり。いやいや、久しぶりに本格的なそして気骨あるイタリア料理に相対したなあと嘆息するぐらいの、すぐれた皿の数々でした。

さとなおさんの前回の言葉、肉たっぷりのうはうは系ってオモロイなあ(笑。
「ダ・ディーニ」でその言葉を借りるなら、メイン久々に牛肉を頼んでみましたが、パチパチと炭の弾ける音が店内に響くあたりからもう待ちきれない。まさにうはうは。色、焦げ感、塩加減、歯触り・・・。
バスタまでの繊細さに加わる大胆さ。唸りました。

ワインも安価で、グラスやカラフェも豊富。ただ、最初にカラフェを頼んで後悔しましたが(笑。

さて、なぜ冒頭に「まさに今のところは、近所使い」と書いたかといいますと、先ごろぴあから発売された「東京最高のレストラン」冒頭、ニューカマーのコーナーで、選者の皆さんが絶賛されてるんですよ。なので、都内一円からイタリアン好きが訪れる日もあっという間かもしれません。
でも、あのシェフの、そしてマダムのスタイルは変わることはないとも確信します。

ところで、前回のさとなおさんの、相手の流れにただ乗って流されていく外食、というのが好きなので、という表現も、すごく気になりました。ぜひ次回はこのテーマで飲みましょう。
posted by 伊藤章良 at 15:50| イタリアン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月03日

さとなお:今彩(神楽坂)

「よねやま」、たしかに一時期ずいぶん露出してましたね。
ボクは新宿や四谷方面がわりと不得意で、荒木町をはじめ、そのあたりはあまり詳しくありません。
いまでは四谷三丁目の組織に縁ができ、週に一回は通っていますが、それでも仕事が終わるとそそくさと城西や城南のほうに戻ってきてしまいます。なんでなんでしょう? 大学時代はよく新宿で遊んだのに。

なので「よねやま」も、名前は知ってましたが、伺えてません。
いまはせっかく近くにいるので、今度伺ってみたいと思います。

そういう意味で、ボクにとって同じような方角にある神楽坂もそんなに足を踏み入れない地域です。
店数はそこそこ行ってますが、食べ終わったらそそくさと帰ってきてしまいますね(笑)

とはいえ、神楽坂は凄まじい勢いでいい店が増えていて(もしくは発掘されていて)目が離せません。

今回ご紹介する「今彩」は友人に連れて行ってもらった一軒。
ボクは知らなかったのですが、こういう店がさりげなく普通にあるあたりが神楽坂の凄みです。

ジャンルとしては、いわゆる創作料理系でしょうか。
シェフがロブション出身ということもあり、フレンチテイストを活かした和の創作系かと思います。

個人的には、創作料理系はあまり好きではありません。
たいていの創作料理店は芯がないというか、ある盤石な基礎の上に屹立しておらず、表面的な工夫が上滑っていて印象に残らないことが多いからです。

ただ、この店の場合、フランス料理の土台がきっちりあるのだけど、シェフの嗜好性・方向性がフランス料理からどんどん日本料理に移っていった感じで、これは好きでした。フュージョンですらない。なんというか、「和食シフト」的な。

なので、基本、和食です。
カウンター割烹に近い(内装はちょっと京都の暗い喫茶店みたいな感じだけど、長いカウンターが印象的です)。その底流にフレンチの基礎がある。でもシェフはそこにこだわらず、日本人である自分の個性も活かしながら、うまいもんを作っている。そういう印象を受けました。

そういう店は、わりとグルマン系というか、肉たっぷりのうはうは系だったりするのだけど、この店は(カウンターに野菜がずらりとディスプレイされているのですぐわかるのだけど)野菜重視の和食。ちょっとストイックな匂い。店名も根菜から取っているかと思われるし。

しかも、コースは大きめの籠に入った八品盛りで始まる。
この籠の設えがまたストイック感があり、シェフの嗜好がよくわかります。そしてだんだん「あ〜、この店はシェフがやりたい放題の個性的な店なんだな」とわかっていきます。

そうとわかれば、あとはシェフが作る小宇宙に乗っかるだけ。

ふと見回せば、そういうお客さんたちがたくさん笑顔で食べています。こういう店に批評やら食べログやらは関係ありませんね。

なんだかとってもロブションっぽい茶碗蒸しや、焼き加減が絶妙な肉料理などが、しゃくしゃくの野菜の合間に出てきます。
デザートも何種類もでて楽しかったし(すっごく凝っている)、ハーブティーに至るまでシェフの世界を楽しみました。こういう料理を広いカウンターで楽しめます。

すっと誰かの世界に乗っかってニコニコできる、そういう精神状態で行ってもらいたい店ですね。
ボクは最近、相手の流れにただ乗って流されていく外食、というのが好きなので、この店はとても好きになりました。
posted by さとなお at 18:58| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする