2015年05月31日

いとう;フロリレージュ(外苑前)

そういえば先日、四ツ谷の「ミタニ」の話になり、みんなであーでもない、こーでもないとか話していて、どうも内容がかみ合わないんですね。
挙句の果てに「予約取れないじゃないですか」と誰かがいい、「え、そんなに予約取れなかったっけ」と別のメンツが応える。そう、四ツ谷には鮨とフレンチ、二軒の「ミタニ」があるんですね。ご留意のほど(笑。

ではぼくも、フレンチ繋がりで「フロリレージュ」。
多くの方はご存知かと思いますが、「フロリレージュ」は移転しました。そして、移転してこんなに変わるか、というぐらい変わりました。
以前の「フロリレージュ」は、店のロケーション、エントランスの驚き、料理のホットさ複雑さ濃厚さ等々、間違いなく東京でもっともエッチな店(もちろんすばらしいという意味で)。店を辞した後、下る階段途中でチューしたくならなけれは大人じゃないよ(笑、というぐらい、心底フランス料理というよりフランスのエスプリを感じさせる唯一無比のレストランでした。

そんな店がなくなってしまう、というのもいささか残念でしたが、新生「フロリレージュ」、今度はフルオープンキッチンを新たな舞台として、彼らの動きに眼を奪われ言葉を失ってしまうぐらいの劇場型。この大胆な変革への驚きと、川手シェフの特徴やスペシャリテと言われてきた数々をあっさりと捨て去る潔さ。
フランス以外のフランス料理店を模範とした、というだけあって「NOMA」やシンガポールの「アンドレ」など、今、最先端を走ってる料理店のエッセンスが川手シェフ流に昇華されてぎっしりと詰まっています。

新生「フロリレージュ」の内容については書きません。予め聞いてしまうと楽しみも半減するかなと思うからです。料理の写真はおろか、メニューまで写真に撮って載せている人もいるけど、映画を観に行く人を前にそのストーリーを教えているのと同じ行為。あれはやめた方がいいなあ。

ぼくは、フランス料理店において、料理に手を付けることなくずっとジージー写真を撮っている人、ワインを一滴も飲まない人、その二つはご遠慮いただきたいと願ってきました。きっと川手シェフも同じ気持ちだったんでしょう。というのも以前の「フロリレージュ」では、ここはグラビアアイドルの撮影会場かい?というぐらいのカメラカメラ。そして、酒はほとんど売れることなくソムリエは廃業状態だったかと。

ところが、新生「フロリレージュ」は、このご遠慮いただきたい客がほとんど目立たない(視界に入ってこない)よう、座席のレイアウトやライティングが工夫されているのです。さらにそれらをカバーするスタッフの動きもまた、暗部を隠すことに一役かっています。感服しました。

食事をする自分たち、そして、川手シェフをトップとした目の前で展開されるドラマのような調理シーン。最後に、出来上がった料理を料理人自ら客前まで運ぶ導線の鮮やかさと彼らの情熱的な説明。新生「フロリレージュ」にいると、心無い客から発せられる雑念や自己顕示欲がまったく視野に入らず、純粋に食事を楽しめるんですね。幸せをたくさんもらいました。

食事をしない客、ワインを飲まない客・・・。店側もさまざまな来客を想定しつつ、店全体の士気が下がらないよう雰囲気が壊れないよう様々に工夫する。アイデアは料理にだけではない、ということを新生「フロリレージュ」は感じさせてくれました。

なお、フロリレージュという、フラワーを想起させるようなラブリーな店名にした結果、この店が本当にやりたい意図も、なかなか伝わりにくいのかなあと思ったりもします。ところがフロリレージュとは、フランスの高級コニャック(お酒)の名前なのです。
posted by 伊藤章良 at 09:38| フレンチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする