2013年12月30日

いとう:尾辰(銀座)

今年も最後ですね。
末長く、ぼちぼち続けて行きましょう。

「田中田」なんて文字を見ると、上から読んでも田中田、下から読んでも田中田、とか言いたがる世代です(笑。居酒屋、ぼくも大好きで頻度的には一番行くカテゴリかなとも思いますが、東京においても、どことも似てきている傾向ありますね。鮨屋もまた、若手が最近オープンする高級店は、残念ながらどの店もほとんど同じような内装に同じようなタネと風貌。チェーンかと思うぐらいです。

そして今回、築地の仲卸がオープンした魚料理専門の店を紹介したいんですが、一般的に、仲卸や問屋さんが始めた飲食店もどこか似ているように感じます。卸だからこそ、食材がとびっきり新鮮で最高級品であることを強調する。加えて安価も主張する。それは子供でも分かる「当たり前」なんだけど、客の立場からすると、さばいて高級店に卸した残りをうまく調理して使っていたり、高級というわけではないけど一般的にあまり出回らない希少品に出会えたりするのが、卸運営たる所以のような気もするんです。何より、料理人以上に食材LOVEな人や会社が運営をしていないと、卸直営の臨場感が出てきません。

今回取り上げる「銀座尾辰」は、築地の仲卸「尾辰商店」なる明治元年創業の老舗が母体ですが、飲食業界への進出は今回が初めての模様。飲食店が立ち並ぶ銀座の京橋寄りエリア地下。テーブル席、カウンター、そして掘りごたつタイプの個室と、なかなか使い勝手も良さそうなシンプル空間が広がっています。

使う魚を厳選しロスを出さないコンセプトでしょうか、10時までは三種類のコース料理のみ。ベースとなる5000円のコースは、最初に江戸野菜と数種の味噌ディップが出て、その後、刺身、焼き魚、煮魚、それ以外の酒肴、そしてご飯(ぼくの時は握りずし)。その構成の中で一番驚き惹かれたのは、一般的に好まれ喜ばれそうな高級魚・有名魚の類を多用せず、食材の質だけで勝負していること。そして、刺身、煮魚、焼き魚と、出される皿がそれぞれたっぷりで(刺身の切り方も分厚くて気持ちいいんです)、魚をたくさん食べてください、という情熱が伝わってくることです。もちろん割烹のように凝った料理を出すわけではないですが、煮たり焼いたりといったベーシックな調理がとてもキチンと施されていて、魚の旨味や持ち味が十分に引き出されます。

常勤の料理人やサービススタッフとは別に、仲卸の尾辰商店メンバーも顔を出して接客しておられるようで、そんな皆さんからの魚に対する豆情報が実に面白く、おいしさをさらに増幅させる効果絶大。

「銀座 尾辰」を訪れると、日本という国の周りがすべて豊富な漁場で、イワシやアジから、マグロ、クエといった高級魚まで、多くの種類を享受してきたという思いは錯覚で、もっともっと日常は目にすることのない(もしかしたら、あまり売り物にならないような)魚がさらにあって、実はそういった魚もとてもおいしいんだ、ということにも気づくと思います。
posted by 伊藤章良 at 17:00| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする