2012年04月30日

さとなお:青山すし泉(青山)

「くろいわ」、たしかに割烹で奥さんも板前って珍しいですね。
小料理系は女性が多いけど、日本料理の厳しい修行の場に女性がいるのもまだまだ珍しいのでしょう。フレンチなんかでは女性シェフも増えてきましたが、なかなか割烹系では珍しい…。

ということで、女性板前の店に頭を巡らせたのだけど、思いつかず、普通に鮨屋をご紹介します。

東京は青山の「青山すし泉」
前から噂は聞いていたのだけど、訪問するのは初めてでした。

ベルコモンズ近くのスキーショップ・ジローがある通り。
いままで何度も通り過ぎていた足元の半地下にひっそりありました。「海味」のすぐ近く。もう12年もやっているというから、ずいぶん前からあったんですね。

18時くらいに入って、店を出るまで客はボクひとりだったので、店主といろいろ話をしながら食べられました。

一見話しかけずらい店主だけど、話すと優しくて居心地は至極よかったです。

印象に残っているのはタネの温度管理。
シャリとタネを同温度で握り、口の中での温度差をしっかりなくしてくれる。当たり前のようだけど、最近タネの温度管理がとても気になっているので(シャリに比べてタネの冷えすぎが多すぎる)、こういう基本的なところがとてもうれしかったりしました。

で、シャリは至極優しいんだけど、握り自体はしっかりイメージが屹立していて、店主の目指している方向性がくっきりわかる、そんな感じの鮨でした。優しいけど弱々しくない。

握りでは特にカスゴが印象的でした。
カスゴって皮を残して飾り包丁入れて軽く締めるのが普通かと思うけど、ここのは皮を残さず、しかも深めの締め。ちょっと歯ごたえがある普通のカスゴと比べて、とても柔らかく独特の食感。うまひ。こういう感じ、初めてだなぁ。

あと、トロの蛇腹。
脂の筋の部分を切ってバラし、三枚付けに握ってある。筋が口に引っかからず、すんなり喉に消えていく蛇腹。いいなぁ。

ちょっと失礼な言い方になるけど、「ちゃんと自分の頭で考えて追いこんである握り」って、やっぱりうれしいですよね。逆に好みが分かれる部分は出てくるかもだけど、ボク自身はとても幸せな時間を過ごせました。

店内、トンボの飾りがたくさんありますが、店主曰く「建築家が勝手にトンボを彫ったので、いっそのことトンボを象徴にしようかと」。特にトンボが好きってわけではなさそうでした。でもまぁ、青い山で泉だから、トンボがたくさん飛んでてもいいやねぇw 
posted by さとなお at 17:57| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月08日

いとう:くろいわ(恵比寿)

少し間があいてしまいました。申し訳ありません。
さすがに、年度末から年度始めにかけての忙しさと、さとなおさんが書いてた金沢の「玉響」〜「一献」からのつながりにしばし悩んで、時間が経ってしまいました。そういえば、「たまゆら」って銀座にもありましたね。さとなおさんが10円のマジックを披露した店(笑。彼女も元気でやってます。

さて、夫婦で営まれるケースが多い割烹の場合、女性の役割というか、占める位置がとても重要ですよね。基本的には料理を楽しみに訪れているんだけど、女将さんがいるのといないのとでは、料理自体の印象にも影響が出るように感じてしまう。さとなおさんも高く評価していた神宮前の「樋口」も、女将が産休で不在の時に伺って以降、すっかり足が遠のいてしまいました。きっと今では復帰されていることとは思いますが。

四谷三丁目にある「車力門ちゃわんぶ」でも、新たにこの地に店をオープンしてすぐ女将さんがオメデタ。今では出産して不定期ながら復帰されてますが、おられる時といない時の居心地の差が大きいように感じます。居心地だけですめばいいんだけど、料理の味にも差があるように思えるのが不思議。

と、そんな流れで、恵比寿に昨年11月オープンした「くろいわ」を紹介します。ここも、以前の修業先で知り合った二人が夫婦で始めた店。オープンのとき、東京の名だたる割烹から多数の花が届いていて、新しい門出とともに二人を祝福するようなムードも感じ、開店当初から興味を持ちました。

そんなキッカケもあって早々に訪問を重ねたので、店主曰く、ぼくが最初の「くろいわ」のリピーターだそうです。もうすでに超人気店だしグルメサイトの評価も高いので、これから訪問する方は少々予約がしんどいかな。

この店のなにより面白いところは、店主の奥様は女将ではなく板前なんですね。今までの、ほぼすべての割烹では、男性が主人で花板で、女性は女将でホールのサービス担当と確実に決まっていたわけですが、「くろいわ」は二人が料理人であり、酒のサービスも下げ物も二人が交代でする。夫婦共々、料理のことも酒のことも器のことにも通じている。最後に出されるお菓子は、「ぼくにはとうてい作れません」と、主人は密かに妻の自慢をする(笑。

初めて訪れた時、奥様がぼくの目の前で魚を切り出して驚愕。板前の花形仕事であるお造りでさえ女性に任せているその度胸。これからの日本料理店として、すごい可能性を感じてしまいました。

さらに、「10年後には、彼女が着物を着てカウンターの外でお酒のサービスをしているかもしれません」と、オープン当初においても、10年後の構想までサラッと語ってしまうところにも敬服。

料理は、日本料理を食べ込んでいる人からすれば、まだまだ整えただけな感じの皿も混じるし、やりたいことや情報が多過ぎて、整理のついていない幼さも、もちろんあります。でも、料理屋における女性の立場を変えるかもしれない店であり、多くの先輩や同僚からも支持される素晴らしい二人の将来に、多大な期待を抱かずにいられない、と思っています。
posted by 伊藤章良 at 18:14| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする