2008年11月29日

さとなお:ICARO(中目黒)

「アッラ・バーバ」、先に行かれてしまいました。
ちょっと前から「行こう行こう」と思っていたところ。さすがに早いですね。

じゃあ、イタリアン&白金つながりで、「ICARO」にしてみます。
正式には「ICARO miyamoto」かな。イカロと読みます。ギリシャ神話のイカロスからのネーミングらしい。今年の春にオープンしたばかりの新店です。

レストランの場所は中目黒なんですが、なぜ白金つながりかと言うと、ここ、白金の「ロマンティコ」で半年ほど修業した宮本シェフの店なんですね。
この前「ロマンティコ」に行って「今年の夏、ベネト州とかトレンティーノ・アルト・アディジェ州に行ってきたんですよ」とシェフに話したら、「ボクのところで働いていた若者がトレンティーノの料理を作っているので行ってみてください」と勧められたのでした。「ロマンティコ」ってずっとシェフひとりかと思ったら、弟子がいた時期があったんですね。中山シェフの元で修業したあと、トレンティーノ・アルト・アディジェ州で7年修業して、帰ってきて店を中目黒に開いたとか。とはいえ、あっち行っている間もドロミテ(アルプスのイタリア側の山脈)でスノボーばかりやっていたという噂も(笑)。
ドロミテ、行ったことありますか? あそこに行ったら冬はスノボーしかしないのはよくわかります。ま、夏に行った興味もあって、勧められた翌週だかに行ってきました。

お兄さんがホールでサービス担当、弟さんが厨房で料理を担当している兄弟営業の店です。
弟さんが「ロマンティコ」出身。さっそく「ロマンティコの中山シェフに言われて来てみました」と告げたら、「中山シェフがしゃべりかけるなんて珍しいですね」と。確かに無口なシェフですもんね。弟さんとも話しましたが、おふたりとも外見はともかく内面はかなり男っぽい感じで好ましかったです。

メニューは聞いたとおりトレンティーノ・アルト・アディジェ州の料理が中心。ワインもその州のものが多かったかな。ベネトなんかの周辺や南の州のももちろん、フランスワインも数多く揃えてありました。4500円〜6500円あたりを多く取り揃えているので安心です。ワインリストをいま作り替えているとかで、リストにないワインもいろいろありました。相当ワインを重視している模様。ラストオーダーが深夜1時なので、ワインバー的に使うのもありかもしれません。

やんちゃっぽい硬骨漢という外見の弟シェフの料理は、その外見をいい意味で裏切る繊細でやさしい感じ。もっとガツンと来るかと思ったら、すぅっとやさしいので逆に印象深かったです。「ロマンティコ」のような追い詰めたシンプルさはないけれど、味の感じは似てるかなぁ。ちょっと謙虚で引っ込んでいる。でもちゃんと滋味がある。そんな印象でした。

いただいた中では、名物らしい「熊本産馬肉のタルタル」が美味。「パッパルデッレ 蝦夷鹿の煮込みソース」は手打ちでこれまた美味。メインで取ったローストもとても美味しかったな。量もしっかりあるので、ふたりで数品とってシェアしてちょうどいい感じ。この辺は親切な女性のサービスの人に相談して決めるといいですね。ちなみにおまかせコースは5000円で前菜、パスタ2種にメイン、デザートと多皿系のようでした。

店内は奥に喫煙席が個室っぽく設けられていますが、メインのダイニングは禁煙。落ち着いた色調の店で、カジュアルイタリアンの明るさはないけど大人っぽくていい感じです。
場所は中目黒駅の南側の「びーふてい」がある商店街を奥に入っていって、路地を右に曲がった左側のビルの4階。通りかかってふっと入店する、というタイプの店だけど、通りかかってふっと入店するような立地ではないですね。ホントは近所で普段使いするようなタイプの店です。近所にあったらうれしいだろうなぁ、と。そんな感じ。
posted by さとなお at 18:00| イタリアン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月24日

いとう:アッラ・バーバ(白金台)

>で、骨酒。
>これ、骨酒というよりトサカ酒で、要するに「比内地鶏の頭の
>部分をちょっと炙って、そこに日本酒の熱燗を注ぎ込み、ラップ
>で蒸したもの」なんですね。

比内地鶏の骨酒、初めて知りました。いやあ、片口の中で笑っているんですか・・・。ホントにグロそうですけどうまそー。東京で飲めるトコはないんですか。というか、秋田に行かねばなあ。

そこで今回ですが、鶏の頭に関するところでいろいろと考えてみたものの(ジビエのベキャスなんかは「脳ミソも味わってください」と、頭ごと料理されて出てくるので、そんなのもいいかなあと思いつつ、記憶は昨シーズンまでさかのぼってしまうことになりまして・・・)、うまい酒繋がりで、すぐれた個性的なワインを提供するイタリア料理店にします(あまり繋がってない? 汗)。

白金台はプラチナ通り。有名ストリートの目黒通りとの交差を基点とし一本自然教育園側に並行して走る200メートルほどの小道に、なんと今や4軒ものイタリア料理店がひしめきます(プラチナ通りも入れるともっとスゴイ数になるとは思いますが)。「ロマンティコ」「ボスケッタ」「アンティーカ・ヴィネリア・ジュリアーノ」(はじめの2軒はこちらて紹介したことがあります。3軒目はあまり特筆すべき印象がなかったので紹介は控えました 笑)。そして今回お伝えするところの「アッラ・バーバ」

最初の3軒ともに相当深く奥まった印象で、チープな表現を使えば隠れ家風なんだけど、それにも輪をかけて「アッラ・バーバ」は渋いロケーション。
ちょうどこの美食ロードの真ん中辺り、対談でも紹介した鮨店「岡部」のあるビルの地下。昔は画廊等で使われていた記憶があるのですが、よくここにリストランテをオープンしたなあと、まずは驚き。

もともと一目で見渡せるワンルームのような場所だったはずなので、決して広いスペースではなく席数も20に満たないダイニング。ところが、壁面や間仕切り、家具、照明等がニクイほどかっこよく、ちょっとした個室の延長線上のような感覚で大人のくつろぎに満ち溢れます。

こちらは、西麻布の「ヴィーノ・デッラ・パーチェ」におられたシェフが移られた店とのこと。「ヴィーノ・デッラ・パーチェ」は、料理ももちろんワインも悪い記憶はまったくなかったので、さらに期待は高揚。

案内され座ってみると、最近のモダンなレストランに多くなってきた、テーブルクロスがなく黒革のランチョンマットが各自の前に渋くセットされているタイプ(個人的にはやはりレストランば白いクロスじゃないとなあとは思うのですが)。

まず、お酒つながりで紹介したごとく、ワインリストは圧巻です。もちろん「ヴィーノ・デッラ・パーチェ」の姉妹店ということで、かの店の名物ソムリエ内藤氏がセレクトしたのかと思いきや、こちらに新しくサービス兼ソムリエとして入店した方が、新たに自分の個性でリストアップしたとのこと。

「アッラ・バーバ」のソムリエも、イタリアはローマでのレスランで勤務経験もあるそうで、美しく整然とした(そしておもろいワインがざくざくある)リストを用意。オススメを伺っても、お手ごろ価格で料理に合う地域のものを数々オンテープルしてくださいます。同席したワインのウルサ方も納得させつつ楽しませるトークも抜群。

料理は7500円と10000円のコースのみ。「ヴィーノ・デッラ・パーチェ」のメニューを期待していくと少し肩透かしかな。かなり高級でストレート嗜好です。気合は凄く入っているものの逆に実力を出し切っておられない、この金額のコースにしては少々華がない、というか物足りなさを感じました。

それと、まあオープンしたてということもあるけど料理の流れ、言い換えればリズムにも課題を残したかなあ。というのも、個人的にイタリア料理店へ望みたいことのひとつに、お店が客と作り出すリズムがあるんですね。それこそラテン民族の食べ物だからというわけで・・・。イタリア本国で食事をしているとリズムが悪いなあなどと感じたことは全くないですか、トウキョウでは、特に「アンティーカ・ヴィネリア・ジュリアーノ」を筆頭にこの通りの店はなぜか、(カウンター中心の「ロマンティコ」は除き)リズムが悪いと感じました。

シロガネーゼが闊歩する高級エリアなので、そんなことに拘らない、ゆったりさも魅力としなければいけない、のかもしれませんが。
posted by 伊藤章良 at 13:23| イタリアン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月22日

さとなお:味の蔵(秋田)

11月12月はやっぱり気分的に日本酒ですね。読んでいてすぐ行きたくなります。「ざんぐり」良さそう。名古屋コーチンもおいしいですしね。

じゃ、酒と鶏つながりで、比内地鶏の骨酒を書いてみます。

秋田の「味の蔵」
ここは秋田名物の比内地鶏を食べさせる店です。

比内地鶏は、名古屋コーチン、薩摩シャモと並んで日本三大鶏と言われてますね。
よく誤解されるけど「比内鶏」と「比内地鶏」は違います。比内鶏は天然記念物なのであまり流通していません(食べられないことはないらしい)。ただ、カラダが小さく食用には向いていないので、アメリカ産ロードアイランドレッドをかけあわせて比内地鶏が作られたらしいです。
味の特徴としては「歯ごたえがあり、加熱しても固くならない」「加熱してもグルタミン酸の遊離が少なくうま味が長く保持する」「うまみ成分であるイノシン酸がブロイラーの1.6倍」だそうです。150〜180日もの長い期間、クローバーを主体とした放牧地で放し飼いにしている上に、比内地方の黒土が第三期古層腐植土というやつで、これがまた鶏を美味に育てると言われているとか。

秋田ではたいていどの郷土料理店でも比内地鶏を置いています。
というか、きりたんぽ鍋は比内地鶏のガラでダシをとるので、必需品ですね。

この店はその比内地鶏の焼き鳥が主体のカジュアルな店。街場の居酒屋系焼き鳥という感じで、長いカウンターと奥に座敷がある典型的な焼き鳥店ですが、味はなかなかです。丁寧に炭火焼きされた地鶏刺身、皮、ボンチ、ハツ、つくね、ネックなど、どれもおいしいですね。自ら「究極の親子丼」と名付ける親子丼も、究極かどうかはわからないけど、ネットリとろとろで良い感じ。ハーフサイズもあるので〆に良いですね。秋田名物「かやき」など、鶏以外の一品もいろいろあります。

で、骨酒。
これ、骨酒というよりトサカ酒で、要するに「比内地鶏の頭の部分をちょっと炙って、そこに日本酒の熱燗を注ぎ込み、ラップで蒸したもの」なんですね。

片口の器がラップされて出てきて「少し蒸らしといてください」と言われます。ラップが蒸気で曇って最初は何かが浮いていることしかわからない。飲んだら実に香ばしくてうまいのだけど、そろそろいいかとラップを外すと、トサカが小さい比内地鶏が中で笑ってます…。
そう、要するに比内地鶏の頭が正面からタテに半分に割られてふたつ浮いているわけ。頭の中身はとって骨と皮のみになっている。目も取ってあり、まぶたが締まってはいるんだけど、それが妙に笑っているように見える…。

なかなかグロい。けどうまい。
骨酒というとイワナとかのがまず思い浮かぶと思うけど、鶏の骨酒(というかトサカ酒)、一度いかがでしょ?
posted by さとなお at 08:45| とり料理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月17日

いとう:ざんぐり(恵比寿)

>仙台の「一心」。
>今年の春に一回行って、つい先週再訪しました。

ううむ。今度は仙台ですか。仙台も久しく行っていないなあ。
「日高見」はいいですね。東京でもそこそこ見かけるようにはなってきましたか、お膝元で飲みたいなあ。

お刺身を、ドンと突き出しとして提供するのも自信のあらわれでしょうか。きっと、最初にビールを頼んでいると後悔しそうです(笑。

では、ぼくは、もう一軒東京の日本酒の店「ざんぐり」を紹介します。ここは恵比寿と広尾のちょうど中間ぐらい。カリフォルニア料理のパイオニア「フミーズグリル」の地下といえば、なんとなく地理的にはご理解いただけるでしょうか。

普段頻繁に通る道ではないんですが、ああ「フミーズグリル」の地下の焼鳥店の名前が変わったんだな・・・、外に置かれたメニューを見るとウマそうな酒にありつけそうだ、と目を付けていて、先日飛び込みで入ってみました。

入った瞬間かなりの違和感。焼鳥店とは思えないキラキラ系の女性に迎え入れられ、端正で寡黙なご主人とカウンターを挟んで向かい合う。メニューを見ると、ナント焼鳥店ではなかった・・・(汗。

店の入口に掲げられたメニューに純系名古屋コーチンの文字が躍っていたので疑うことなく階段を下ったものの、朝獲りの名古屋コーチンをつぶして、一羽丸ごと調理するのがウリのよう。となれば、気持ちを切り替えて、お刺身、つくね、炙り等を注文してみます。

さて、酒はどうしようかと思案中、たまたま同席者に「今冬用に注文していた悦凱陣が今日4本届いたんだよ」としゃべっていたら、突然ご主人が「凱陣はなにを買われましたか。ウチにもイイのがあるんですよ」と、相好を崩して会話に参加。

となれば、そこからはもう酒談義が止まりません。無口に見えたご主人も、珍しい・うまい・そして食中にこそ飲むべき日本酒を次々と出しては、楽しそうに解説。

悦凱陣は「攻めブレンド」を体験。その他にも新聞紙に巻かれた「長珍」、「旭若松」などを薦めていただくままに。それと、東京にもうまい酒があるんですよと「喜正(銘柄不確か?)」も。

料理も、先ほどの純系名古屋コーチンのバリエーション、そしてワタ入りスルメイカ、アンチョビ入りのポテトサラダなど、強烈に日本酒がススむものばかりチョイス。入店当初はちょっとシンプルに見えたメニューも、日本酒とともに味わうとなれば、あれもこれも注文したいものが後を絶ちません。

聞くところによれば、「ざんぐり」はもともと恵比寿の代官山側で営んでおられその後麻布十番に移転。今も十番での営業もされていますが、恵比寿の店を愛してくださったお客様からの帰って来いコールに応えて、料理人のご主人だけが恵比寿に小さな店を再び出されたとのこと。

まあ、その経緯でも理解できるとおり、相当個性と趣味性の強い店だよなあ・・・と思っていたら、深夜近くに常連とおぼしき面々が続々と現れ、梅酒やコーチンのスープで作ったラーメンなどをどしどし注文。

なんだ、それほど強面の店でもないんだ、と、気持ちを軽くしながら店を後にしました。
posted by 伊藤章良 at 16:59| 居酒屋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月13日

さとなお:一心(仙台)

じゃ、ボクももう一軒、日本酒の名店をご紹介します。

仙台の「一心」
今年の春に一回行って、つい先週再訪しました。再訪してみたくなるような店なんですよこれが。

「酒盃」が秋田の地酒なのに対して、こちらは宮城の地酒の名店です。
とはいえ、「酒盃」が秋田の地酒のみなのに対して、「一心」は宮城の酒を中心に、東北地方全般に強い。いや、全国の銘酒もそこそこ揃っています。お酒のメニューを見ていると楽しいですよ。

仙台の繁華街、国分町の端っこのビルの地下にある店なんですが、ビルの地下1階に下りると、「一心」(本店)、「一心 加減 燗」(別館)、「光庵」(離れ)と3店あるんですね。どれがどれなのか初心者にはわかりにくいのが難ですが、一番手前左にある「一心」が本店です。

カウンターと小上がりふたつの小さな店。
全体に黒っぽい木造で雰囲気はとてもいいです。カウンターの中が見えにくい作り(カウンター前の仕切りが高い)なのが一人客には多少さみしいですが、まぁそれはそれで落ち着けるとも言えます。

お酒のメニューを見てどれを飲むか決めてオーダーすると(時間をかけてゆっくりやりたいところ)、突き出しが出てくるんですが、これがほとんどメインディッシュのような一品。マグロとボタン海老とホタテの刺身三種がドンッと出てくるのです。しかも突き出しにありがちな乾いたような刺身ではなく、三種がどれもこれもおいしいのです。ボタン海老など活けでびたびた暴れる新鮮さ。まずはそれを肴に一杯楽しむ趣向です。

他にも「ばくらい」「十穀みそ」「厚揚げ」「珍味盛り合わせ」「穴子白焼き」「茹でダコ」「野菜の炊き合わせ」など、どれをとっても美味美味。酒がうまい上に料理がうまいとくるとたまりません。しかも酒が進むようにかどれも少し塩がきつめ。

いただいた日本酒の中で印象的だったのは、「一心」のラベルがついている「伏見男山 純米大吟醸 中汲み」ですね。この店でしか飲めないらしいこの酒の鮮烈なこと。それと「日高見 純吟 愛山」。このフルーティさはたまりませんでした。

店内はオススメの品書きがいろいろ貼られています。多少この貼り紙の多さをうるさく思う部分もありますが、逆に「おいしそう」と酒が進む部分もありますね。サービスの女性(女将?)は親切でいろいろ教えてくれます。
まぁ敢えて言えば全体に少し高いかな。料理も酒も質が高いので仕方ないかもしれないけど、仙台ではかなり高めの店だと思います。銀座なら普通だけど、という感じ。

居酒屋放浪の先達、かの太田和彦氏はこの店を「東の横綱」と呼んでいます。それもよくわかります。
仙台に行かれたら、ぜひ一度は寄って下さい。
posted by さとなお at 09:27| 居酒屋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月08日

いとう:おの寺(神楽坂)

秋田、いいですね。ぼくはフライベートでは一度しか行ったことがないです。桜のシーズンに角館を訪れたのですが大雨で・・・(泣。

山菜・きのこ・日本海の魚と、秋の秋田は、日本の旬を感じさせる食材が山盛りですね。先日新潟で秋田産のハタハタを食べました。子を持っているメスで、身はさすがに痩せ気味でしたがその卵のウマさはたまりませんでした。

>秋田の地酒を中心に、50種類以上の日本酒が最高の状態で
>保存され、料理メニューも酒が進む系ばかり。

このラインナップも凄いなあ。秋田の地酒自体4〜5種類ぐらいしか思い浮かばないので、「酒盃」の棚だけでも見てみたいです(笑。

さて、ではぼくは、東京神楽坂で酒の品揃えがすばらしい日本料理店「おの寺」を。

ここは、飯田橋駅から神楽坂を少し上がった右側のビル2階にあり、L型カウンターとお座敷のみの小さな空間。ご主人と女性スタッフのお二人で切り盛りします。

コース料理6800円のみ(少々の季節のアラカルトあり)。このグットバリューが日本料理店がひしめく神楽坂でも高い魅力で、多くの女性客で賑わっています。でもぼくは、この「おの寺」を、日本の料理に合うすぐれた酒を店主のオリジナルな感性で揃える店として賞賛したいのです。

取り揃える酒には固定メニューを設けておられないようですが、ぼくが訪れた日は、季節がら、宝剣・加茂金秀・鳳凰美田などの冷やおろしを飲み比べたり、白岳仙のライトなスタートから東北泉のずしんと来るしんがりまで、それはそれは食中酒としての日本酒を縦横無尽に楽しみました。コース料理の価格がリーズナブルなこともあって、あれもこれもと日本酒を選ぶのにも拍車がかかってしまいましたが・・・。

お料理についても、盛り付けのひとつひとつは有名京料理店で何十年修業みたいな巧みさは感じないんだけど、食べてみると、不必要な主張がなく、さりとて酒を多く飲ませようとの意図も見えてこない。ただただ素直に料理と向き合っているご主人の人柄がにじみ出る皿。自分を高みに置かず、安価で安心できる食材を工夫と努力で安く提供しようとの高い志も感じ取れ、おいしさがさらに増す秘訣ともなっています。

靴を脱いで上がりゆったりとしたカウンターに座る。盛り付けの合間にご主人が選んだ(ときには自ら注いで下さる)酒をチビリと飲みつつハートのこもった料理に舌鼓を打つ。東京の神楽坂とは思えないアットホームさながら、決して家庭では実現不可能な貴重な時間が「おの寺」にはあります。

ぜひ日本酒好きを自称する同輩にこそ、暖簾をくぐって欲しい一軒です。
posted by 伊藤章良 at 17:25| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月07日

さとなお:酒盃(秋田)

「ラ・シャッセ」は暗いですね。でも「ジョージアン・クラブ」ってあそこまで暗かったでしたっけ? 適度な暗さ、っていうイメージと、ホールへのあの階段を下りてくるドレスアップした女性たちの姿が記憶の中でキラキラしていて、そこまで暗かった印象がないなぁ。記憶って都合のいい方に書き換えられてしまいますからね。

「ル・レカミエ」は25年前(!)に一度行ってます。大学4年のとき、卒業記念みたいな感じで。
25年前って自分で書いてビックリしました。めっちゃ昔だなぁ。あの頃行った一軒家レストランってその造りから空気感、料理まで意外と覚えています。「ル・レカミエ」「マダム・トキ」「ラ・コロンバ」…、学生にしては相当勇気のいる、贅沢な夜だったから異様に印象深いんでしょう。

じゃ、ボクも暗い店つながりで。

秋田の「酒盃」です。

秋田で日本酒を楽しみたいなら必訪の名居酒屋ですね。
「酒を楽しむ店」というよりは「酒を味わう店」です。秋田の地酒を味わうなら日本トップの名店でしょう。

暗いというか、全体に黒っぽいです。黒くくすんで、なんだか暗い。でもとても落ち着ける。
古民家を改装して使っているような店で、玄関で靴を脱いで上がるのですが、全体に凛とした空気が漂い、空間全体、ちょっと居心地悪いくらい完成度が高いんです。そのうえBGMは静かなジャズ。なので「わいわいと居酒屋で楽しもう」と思って来店した人はびびるかも。

秋田の地酒を中心に、50種類以上の日本酒が最高の状態で保存され、料理メニューも酒が進む系ばかり。
坊主頭に作務衣のご主人はニコヤカだけど、どこか近寄りがたい雰囲気を醸し出しています。知ったかぶりをせず素直に日本酒の感想などを言うとニコヤカに応えてくれますが、ちょっとでも半可通を気取った会話をするとすぐ見透かされる感じ。

ただ、決して気むずかしいご主人というわけではなくて、秋田の酒を愛し、それをおいしく飲んで欲しいという情熱が一挙手一投足に感じられてボクは好きですね。たぶんご主人の作り出す流れに気持ちよく身を任せてしまうのがこの店を楽しむコツなのだと思います。

料理は、まず6種の小鉢がお盆に載せられた突き出しが素晴らしい。酒が進むものばかり。
一品もハタハタの飯寿司や燻りがっこ、比内地鶏、きりたんぽやしょっつるなども厳選されて揃っていて、どれも美味。どこか他の料亭にわざわざ行って秋田の郷土料理を食べなくても、この店ですべて味わえます。しかも最高のコンディションの地酒と合わせてくれる。文句なし。

また、秋田名物の貝焼き(かやき:一人前の鍋料理)がちゃんと貝殻を使って給されるのがうれしかったです。他の店でも「かやき」を食べたけど、たいていは一人用鍋を使ったものでした。ここのは語源通り貝を使ってくれます。ちょっとしたことだけど、意外と印象深いんですね。

酒は「半合おまかせ」というコースがあり、少しずついろんな地酒を試したい人には打ってつけ。ちょうど冷やおろしの時期に行ったのでどれもこれもおいしかったし、秋田でしか流通していないような小さな蔵のものも多くあって実に楽しく飲み比べしました。

こういう日本酒の店は、ご主人も日本酒好きが多く、カウンターの向こうで酔っぱらったりしていたりしてどこかベタッとした距離感の店が多いんだけど、この店は素っ気ないくらい客観的。ある意味都会的なあっさりした距離感。ボクにはこの距離感が気持ちよかったです。
秋田っぽい店かと言われるとたぶん違いますね。旅の地での暖かさに触れるとかではなく、ちゃんと酒と料理に向き合う感じです。東京にあったとしてもトップクラスの居酒屋として知られることでしょう。

ちなみに店員さんは秋田美人でした。見惚れるくらい。
そういう意味では秋田っぽいか(笑)。ほの暗いあの空間。また行きたいな。
posted by さとなお at 06:10| 居酒屋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月05日

いとう:ダム・ジャンヌ(神泉)

以前、札幌を訪れるたびフランス料理店ばかりに行った時期がありましたが、最近は一人で行く機会が多いので(お鮨屋ばかりになってしまい 照)少し遠のいていました。

「ビストロ・ヴァンテール」よさそうですね。というか、札幌でじっくり腰をすえてフランス料理を食べたいなあ、と久々に思いました。

ではぼくは、逆にいかにも東京らしいフランス料理店「ダム・ジャンヌ」を。場所は神泉。井の頭線の踏切りすぐ近くにあるコンビニの横の小さな扉を開けると、ほのかに薄く灯りだけが見える真っ暗な世界。まるでグレゴリオ聖歌が聞こえてきそうな空間へと突入です。

目が慣れてくると、なかなか燻し銀な雰囲気。高い天井を効果的に使って店内に段差を作りダイニングを狭く感じさせない工夫や、アンティークの家具など細かいところまで現地のエスプリを散りばめつつ、フランス語の音楽で近くの踏み切りの音を消す・・・。

油断するとフランスの田舎にでも見つかりそう、と書きたくなりますが、恐らく世界中探してもこんな店はトウキョウにしかないでしょう(笑。

それにしても真っ暗です。久々に「ラ・シャッセ」や、今は無き「ジョージアン・クラブ」ほど暗い店に行き着きました。40代後半の視力ではメニューはほとんど読めません(汗。でもそこを何とか紐解けば、とてもかわいい冊子(ただし一冊しかない〜現在は改善されたかもしれません)&充実のラインナップです。

白レバーのリエット、フォアグラのサラダ、南仏風のピザ、豚足と砂肝のソーセージ、コンフィ、カスレなど、堂々たるフランスの地方料理が並び、こちらはリアルにフランスの田舎を表現。どの料理もていねいでソツなく味わい深く仕上がっており、ワインも進みます。

スタッフの人員的にはギリギリな感じで、決してテンポよく食事ができるリズムではありませんでしたが、接客も付かず離れずの真摯な応対。といいますか、コレだけ暗い店なのであんまり「つかず」ではない方がいいのかもしれません。

食事の後半、客がぼくたちだけになったので、店主に「場所柄、やはり若い人が多いですね」と聞くと、「早い時間帯は若い人が多いですが、ウチは深夜までやっているので、これからはまた違った方々で賑わうんですよ」とのこと。まるまる2回転とは大変なご苦労です。

またシェフは、麻布にある大御所の一軒家フレンチ「ル・レカミエ」と「土火土火」で修業されたそう。双方のすばらしいところを吸収しつつ若い力で発展させれば、この「ダム・ジャンヌ」のようになるんですね。
そう考えると、これからも相当ワクワクするレストラン。次回は深夜に訪れてみたいです。
posted by 伊藤章良 at 22:25| フレンチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月03日

さとなお:ビストロ・ヴァンテール(札幌)

「レストランひらまつ」、長いこと行ってないなぁ。
ボクもこの店はとても好きです。いい思い出しかありません。と、自分で言いながら、「いい思い出しかありません」と断言できる店ってすごいですね。グランドメゾンはそうあるべきです。(※追記:昔一度がっかりしたことを先ほど思い出しました。でもその後のいい印象で払拭され、記憶から飛んでいたようです)

では、ボクもフレンチを。
札幌の「ビストロ・ヴァンテール」

ビストロと名前はついてますが、完璧にレストランですね。
ただ、正面きってフレンチ・レストランという看板を掲げると札幌ではまだまだ集客が厳しいのかもしれません。環境はレストランのそれ。料理も(クオリティ的に)レストランのそれ。サービスもレストランのそれ(いや、高級レストランのそれ)。だけど料金がビストロなんですね。そうしないと客が集まらないということでしょう。素晴らしいサービスをしながらサービス料をとらないし、料理もレベル高い。札幌の方々は恵まれています。

この店には「ちゃんとしたフレンチを札幌の繁華街で成功させる!」という強い意志を感じます。
10年前より格段に美味しい街になった札幌ですが、まだまだ鮮魚系居酒屋が多く、料理より素材勝負という店が多いのですが、すすきのの路面店でこういう店が勇気を持って引っ張ってくれるともっともっと美味しい街になるんじゃないか、と、そんな予感すらさせるレストランでした。

いただいた中では、「ズワイ蟹とアボカドのラ・トゥール」「タラバ蟹と北の鮮魚のクネル」が特に印象に残っています。
「ズワイ蟹とアボカドのラ・トゥール」は、要するに「蟹の塔」ですね。普通は高い塔らしいですが、少なめにとお願いしたら「では低い塔を」とアレンジしてくれました。フレンチで使われる蟹ってそんなに魅力に思わないのですが、味のまとめ方が上手でおいしかったな。
「タラバ蟹と北の鮮魚のクネル」。これまた蟹ですが、蟹は脇役にまわります。なんといってもクネルの食感が素晴らしい。ふわふわでキュヌキュヌ。ソースも抜群。クネルって大好きなんですが、ここのは一頭地抜けてます。会話が盛り上がっていたのだけど、一瞬全員黙ってクネルに身を任せた感じ。

前菜もメインも隙なく美味しかったです。
料理は他に、いわゆるビストロ料理も多く並びます。アンドゥーイエットやブーダンノワールなど、今回は食べなかったけど試してみたい料理が多かったな。アンドゥーイエットは日本で「これは!」と思う店に出会ってないのだけど、もしかしたらこの店なら…。次は試してみよう。

サービスは繊細で謙虚で丁寧なもの。出過ぎず引っ込みすぎず楽しい時間を過ごせました。
これでサービス料なしだったら他の店どうするんだろう、と思っちゃいます。プロデュースとして関わったという中村ソムリエのサービスもさすがなものだったし。 彼らが次々と繰り出す「いい時間を過ごしてもらおう」オーラに客はそのまま乗っていればいいんです。このオーラはビストロというよりほとんどグランドメゾンですね。

ワインセラーのディスプレイも美味しげ。ワインの品揃えも納得。
敢えて言えば料理もサービスもレストラン的すぎて、ビストロな感じを予想してきた客は戸惑うかもしれないけど、まぁ贅沢な戸惑いでしょう。

こういう店をその地に根付かせられるか。札幌の方々が試されている気がします。そんな店でした。

posted by さとなお at 22:16| フレンチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする