2017年05月31日

いとう:キッチン富ヶ谷(代々木八幡)

さとなおさん、南インド料理の力作、ありがとうございました。
やはり現地で体験すると違いますね。ぼくはインドには未訪なので、とても参考になりました。
かくいうぼくも、東京でインド料理といえば、南インド料理店しか行かないんです。でも中野の店は未訪でした。

ぼくの友人にも、手でインド料理を食べるつわものがいますが、彼は実に巧みに(かなり練習したとのことだけど 笑)指を動かすので、どんな店でも堂々たる姿。全く違和感がありません。あそこの領域まで達すると、きっと勇気など不要になるのかもしれませんよ。

もう一点なるほどと思ったのは、北インドのカレーは油や塩を多用するということ。ぼくも日本でカレー全般を食べるときにもいつも同じことを考えていて、カレーは、日本でいうところのダシや食欲のわくスパイスで食べるべき。日本の一般的なカレーは塩辛くて閉口します。

特に焼肉店などで、肉の切れ端を煮込んだと胸を張るカレー。そこそこ肉からのダシは出ているでしょうけど、ものすごく塩辛い。また塩辛くすればヒトは単純においしいと錯覚しゴハンもすすむので、評価も上がる。
でも、個人的には違うと言うか、真逆と思っています。

そこで、ずっと塩辛さではなくおいしく食べさせるカレーを探していて密かに発見した店を今回は紹介します。代々木八幡の「キッチン富ヶ谷」です。

ここって、かなり不思議な店。好立地なのにランチしか営業せず、スタッフは全員女性。スカーフを巻いた外国の方もおられて説得力も十分です(笑。謎は謎でいいと思い、持前の好奇心は発揮せず、毎回ゆるゆると楽しんでいます。

カレーの種類もいろいろで、個々には書きませんがすべて試してみました。中には少々塩味の濃いものもあります。なのでまずは「チキンカレー」をぜひ。上記したように、これぞスパイスとスープの妙味でゴハンを食べさせる、個人的に思うプロのカレーとしての、あるべき姿です。

カレーのスープを熟成させるためという理由で毎週水曜日はカレーがなく、その日のみラーメンを提供します。もちろんラーメンも食べましたが、内緒にしたいぐらいの美味しさ(笑。

スタッフは女性のみで全体的にラブリーな店内。カレー以外にヘルシー感あふれるサラダとか飲み物とかも付いてカフェ風の展開。もちろん女性の一人客多しとくると、個人的には苦手なタイプなんですが(笑、男性でも十分な量もあり、ここのカレーは病みつきです。

posted by 伊藤章良 at 11:25| カレー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月30日

さとなお:南印度ダイニング(中野)

伊藤さん、「くろいわ」すばらしいですね。
って、まだ行ってないのですが、読んでいるだけで伝わってきます。ありがとうございます。

日本料理つながりも考えたのですが、今回はまだ新鮮なところで「インド料理」を書いてみたいと思います。

3月にインド(デリー)に仕事で行ったんです。
で、いまさらですが、“南”インド料理に目覚めまてしまいました。

日本では、昭和時代から、基本的に「インド料理=北インド料理」でしたよね。
カレーも(北インド経由でイギリスで発展した)欧風カレーが多く、意外と南インド料理風なカレーは日本には入ってきてなかったと思います。

銀座で「ダバ・インディア」とか「ダルマ・サーガラ」とかが開店したころからでしょうか。南インド料理を日本の食べ好きたちがちゃんと認識しだしたのは(もうちょい前かもしれません)。北と南で料理が違う、という認識は、ちょっと前まで、一部のマニア以外ほとんど具体的には知らなかったと思います。

で、デリーの話。
最初の夜は北インド料理店に行ったんだけど、現地在住の人に「北インド料理は油と塩を多用して胃にもたれるから意外とインド人は食べない(日常的には)」とか言われて、それからは南インド料理が多くなりました。

確かに、比べると北インド料理は(特にカレーは)油と塩がきつい。
そして日本のカレーに近い。
でも、南インド料理はそれがなく、胃にもたれないんですね。野菜を多用するし。

また、北インド料理はナンやチャパティが中心なのに対して、南インド料理はライス(ジャスマティ・ライス)中心です。
※ちなみに日本では普通に出るナンですが、インドでは高級料理店でしか出ないらしく、普通はもっと薄いチャパティ。

そして、北インド料理は、定食をターリーと呼びますがが、南インド料理は定食をミールスと呼びます。

あと、北インドはノン・ベジ(ノン・ベジタリアン用料理)も普及してますが、南インドはベジ(ベジタリアン用の料理)が多いようですね。これはヒンドゥー教が基本ベジなので、ヒンドゥーの方が多い地域はその傾向にあるようです(ノン・ベジを食べられる店も多いです)。

などなど。
他にもいろいろあるのですが、なんというか、いろいろ違うものですねぇ。

こうして、現地在住の日本人に「デリーでのオススメの店」を次々に回らせていただきながら、北、南、東、タンドリー、ビリヤニ、ドーサ、独特のデザート群、屋台のチャイ、などなどを味わっていったわけです(一番印象的でうまかったのは、アーンドラ州がやってる食堂で食べた安いミールスでした)。

現地では、基本、朝からカレーです。
泊まったホテルの朝食もカレーでした。

日本の味噌汁にあたるような日常食「サンバル」(野菜ダールカレー)が常備され、そこに「本日のカレー」みたいのが並び、あとはおかず、って感じです。

そのサンバルに、ラッサム(野菜スープカレー)とポリヤル(野菜のスパイス炒め)を揃えて、バナナリーフのお皿の上に並べると、もうほとんど南インド料理のミールスになるわけです。

さて、インド現地での話は長くなるのでこの辺にするとして。

ボクは現地で南インド料理を食べ、北インド料理やベンガル料理などと比べた上で本当に大好きになりました。

そのうえ、ここでも書きましたが、カレーって手で食べるとおいしいんですよ!
http://www.satonao.com/archives/2017/03/post_3594.html

だから、日本に帰って、「南インド料理を手で食べられる店はないものか」と探しました。

有名なところでは大森の「ケララの風」でしょうか。
ここは客席横に手を洗うところがついている本格的なもの。

まぁ他の南インド料理店でも、手で食べれば良いんですが、やっぱりみんながスプーン使っているところで手で食べるのって、勇気いりますよね。うーむ・・・

とか考えているうちに友人が見つけてきてくれたのが、今日ご紹介する『南印度ダイニング』(中野)です。

堂々と手で食べられるカジュアルな名店ですね(それでもランチで手で食べるのは勇気がいると思いますが)。

この店は夜のミールスを予約して行くことをオススメします。
予約すると、本場さながらにバナナ・リーフをお皿にした本格ミールスが食べられます(本物のバナナリーフを使う店は日本でも数少ないと思います)。

そうなると、当然、手で食べるのが似合うわけです(バナナリーフの上でスプーン使うのって逆に難しいかも)。

バナナリーフをお皿に、右手だけを使って(左手は不浄なので使わない。右手も小指は使わない)食べるその楽しさ、うれしさ、アーンド「インドに小旅行してる感」と言ったら!

上にリンクしたブログでも書いたように、手で食べるときにトスすることによってカレーの混ざり方が深く均一になります。これでカレーが3倍うまくなる! 手を使っているおかげで「工作感」もあり、なんだか楽しいんですよ。

ただ、手で少量ずつ食べるせいでしょうか。わりとすぐお腹いっぱいになります。

スプーンだと大きな塊を食べられるけど、指だけだと小さなスプーンほどの量しか掬えず、掬ってはトスし、トスしては捏ね、捏ねては掬い、掬っては食べ、食べてはトスし、と忙しく繰り返しているうちに満腹中枢が「もうたくさん食べたよ、そろそろ満腹だよ」って信号送ってくるんですね。

だから最後のころはみんな無言でミールスと闘う感じになりました。腹一杯すぎて動きたくないとか、久しぶりに経験しました。これで定食3000円なんです(インドの定食は基本、おかず食べ放題のわんこそば状態ということもあります)。

なので、この店で夜のミールスを頼むなら、追加メニューを注文しないことです。
「最初にビールに合う何か一品でも頼んで」とか段取り踏んでると、ミールスを食べるころには後悔することになります。もう最初からミールス行っちゃってくださいね。

それと、どうせなら、サンバル、ラッサム、ダールを混ぜる妙味を経験していただきたいので、予約時に「ベジ」を予約するのをお勧めします。チキンやマトン入りの「ノンベジ」だと、サンバルが出てこなかったりするので、南インド料理のおいしさを十二分に楽しめません。

ということで、長くなりましたが、南インド料理、深いです。楽しいです。美味しいです。

伊藤さん、そのうち是非、ご一緒しましょう!

posted by さとなお at 20:01| カレー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月31日

いとう:くろいわ(恵比寿)

「㐂邑」って、少し前ですが一時期低迷してたことがありましたよね。木村さん自身にも迷いがあったと思います。でも、ミシュランで突然二つ星を取って話題をさらい、がぜん息を吹き返した。
ミシュランの日本における数少ない功績だと思ってます(笑。

木村さんを、一度新宿の「鳥茂」にお連れしたことがあるんです。
毎日10席未満の客を相手にしている中で、百席ちかい店内を常に満席にし、クオリティの高い料理を過不足なく出し続けている店に、相当驚愕し、「鳥茂」の料理をものすごくおいしそうに食べてたのが印象的。常に感動し吸収する姿勢が違うんでしょうね。それが、他の鮨店ではできないご自身の道を究めるモチベーションにもなってるのかなあと思います。

蛇足ですが、「㐂邑」の㐂という字、インターネットで普通に出るようになってきましたね。人形町の㐂寿司(が隆盛を極めてた頃って決して出なかった。それも「㐂邑」が人気店になったおかげかなあと、少し考えたりします。

ぼくも、「㐂邑」同様、孤高で崇高に独自の道を歩む日本料理店「くろいわ」を取り上げます。

「くろいわ」は、5年前のオープン当初も少し話題になりましたが、店の敷地に巨大マンションが建つということで立ち退きになり、一年半ほど前、徒歩数分の近い場所に、相当グレードアップした新たな店舗を設けました。

賞を獲りたい、有名になりたいをモチベーションに頑張る若い世代も個人的には頼もしく感じているのですが、「くろいわ」の店主はまさに正反対。食文化を探求すること継承することに余念がなく、食マスコミやインターネットの雑音もほとんど興味がない様子。

ぼくは、この「くろいわ」をすばらしいと感じる人こそ、本当に日本料理が好きなんだろうなと、実は思っています。今、特に東京の日本料理は極端な話題先行型で、一部の店にのみ興味や高評価や客が集まるという、なんともいびつな状況。
そして、その一部の店が本当に優れていたらいいんだけど、妄信的なファンによって評価や人気が誘導されているようで残念なんですね。まさにここでも、先月さとなおさんが言った、落語の独演会ばかりが開催されてるんです。

「くろいわ」は、料理ももちろんですが、それに加えて日本の季節や文化そのものを全身で客に感じてもらおうと、入口から席に着き、帰り支度をして辞するまで、様々に喜びや感動が享受できる趣向を凝らしています。食事の席を日本人のイベントとして捉え、四季折々の祭事とともに、日本料理の持つポテンシャルを発揮できるようようトータルで思考し提案している店です。

もちろん、一席10万円ぐらいする高級料亭に行けば、上記のような所作はごく自然に表現されているのかと思いますが、「くろいわ」のご主人のような若さで、その点に気づき日々勉強しながら自分の親ぐらいの歳の客にも堂々と伝えていく姿が、魅力的なんですね。

「くろいわ」の椀は、塩・醤油などの調味料を一切使わずダシだけで味を調えるのだそう。信じられないぐらい奥深くて、「うま味」とは何かという基本を、改めて知らされます。
くろいわ」では5年寝かせた昆布を使っているそうで、オープン当初に買い込んだ昆布が、年経ってやっと真価を発揮してくれるようになりました。やっぱり料理屋って、5年はやってみないと何も分かりませんね。という言葉がとても印象に残りました。

日本人の冠婚葬祭に特別な場を提供するため、日曜日の昼から夜まで、ほぼ通しで営業し月曜休みにするという英断も、なかなか他ではできない度量だと思っています。
posted by 伊藤章良 at 22:08| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月28日

さとなお:すし㐂邑(二子玉川)二回目

伊藤さん、一回飛ばしてすいません。
全体に「外食」(外で食べること)自体が少しカッコ悪くなりつつもありますよね。若者中心にハレとケの区別がなくなってきて(というか、ケで十分楽しいという背伸びしない方向になってきて)、時代は「家メシ」に大きく舵が切られている気がします。外で食べるとしても高級系より身の丈系。

それと、

>と同時にぼくは、予約が全く取れなくなってしまった店は
>興味も失います。答えは単純で、予約が取れなくなった時点で
>お店はその場に安住し自分のスタイルに疑問を持たなくなり
>変化や発展、進化は見込めない可能性が高いからです。

これ、同じようなことをある噺家さんがおっしゃっていました。「独演会ばかりする噺家は成長しない」と。
寄席だと「自分の噺」を聞きに来た人じゃない人もたくさん来ているけど、独演会は自分を聞きに来る人しか来ない。そうすると笑いのハードルがものすごく下がり、そんなに面白くなくても好意的に笑ってくれる(最初からその人の噺に笑いに来てるから)。

それに対して、寄席は、アウェイのことも多く、ファンじゃない人たちが集まる中で笑いと取らないといけない。これはとても鍛えられる、と。
寄席中心か独演会中心かで、長い間にはとても大きな差になるとおっしゃっていました。独演会中心だと、一部の天才を除いて成長が止まる、と。

レストランでも同じようなことは言えますね。
若くして独立し、予約が取れない店になったりすると、一部の人を除いて、“変化や発展、進化は見込めない可能性が高い”とボクも思います。

とはいえ、美味しいとどうしても人気店になるわけで、仕方ない部分もありますけどね。

その点、5年前にも一回書いたと思うけど(さとなお:すし㐂邑(二子玉川))、二子玉川の「すし㐂邑」は、あの立地にして全く予約が取れない人気店なのに、「変化・進化」を止めない点だけをとっても、天才のひとりなのかなと思っています。

自己模倣に陥らず、常に変化し続ける。
ものすごく人気がある現在の自分を、意識的に変化させていく。

成功体験を常に脱ぎ捨てていくって勇気がいります。
それを軽やかに実践している印象が、この店にはあります。

全部で20回は通っているでしょうか(いや、もっとかな)。
縁あって、ここのところ立て続けに伺ってるんですが、特にここ数年の「変化・進化」がすごいです。

熟成鮨って、腐る寸前まで熟成させるせいか、アプローチを間違えるとどのタネも違いがなくなってくるところがあると思うんですよね。どれもアミノ酸系の似た味になってくる。タネの個性が薄れるというか、同じ味の方向にまとまっていくんですよね。

数年前まで「㐂邑」はそうでした。
おいしいんだけど、どのタネも味が似ていた。

でも、ここんとこ、使う魚によっての熟成具合を掴んだのでしょう(個体差含めて)。タネごとに見事に個性が出ています。ここに至るまでの試行錯誤の道程を思うと本当に気が遠くなります(いったいどのくらいの魚を腐らせて無駄にしたのか)。

握り以外の料理も常に変化し、むちゃくちゃうまい。
いや、㐂邑、いま本当にオススメです。
親方の木村さん、他店もよく食べに行っているし、イタリアンシェフとコラボしたりして、刺激を自ら作っているようにも見えます。

変化・進化を止めない「㐂邑」。
特にいま乗っていると感じています。

posted by さとなお at 08:28| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月31日

いとう:メゼババ(亀戸)

2017年、一回目ですね。今年もゆっくり続けていきましょう。
昨年の暮れにさとなおさんが書かれていることは、逐一納得ができて、自分自身も、おおかたの期待を裏切りながら(笑、まさに同じような感覚のお店選びになりつつあります。

「美食家」という言葉にも、挨拶代わりに「どこが一番オススメ?」と聞かれるのも、そこに軽い嘲笑が入ってると感じることも多く、そんな自分たちは確かにマイノリティなんです。

で、さとなおさんが言う「今日の気分に合う数店」。実は2017年の今、そんな店の確保が一番難しくて、ガイド本やサイトも皆無。ただぼくとしては、今日の気分に間に合う店(今夜の予約が当日取れる店)をどれだけ知っているかが最近の一番の関心事だったりします。

と同時にぼくは、予約が全く取れなくなってしまった店は興味も失います。答えは単純で、予約が取れなくなった時点でお店はその場に安住し自分のスタイルに疑問を持たなくなり、変化や発展、進化は見込めない可能性が高いからです。
もちろんそれを責めているわけではなく、逆に頂点に至るまでの過程はすばらしいと思うし、イチローのような強靭な精神力の持ち主ではない限り、そこまで自分に厳しくはなれないでしょう。

ただ、一年ぶりに行った「メゼババ」は進化をしていて、持論に自信を失いました。亀戸のイタリア料理店「メゼババ」もご承知の通り大変な人気店。さらに、客を選んでいる食べログ掲載も拒否と、外敵というか他からの意見すら耳にしない状態。にもかかわらず、きちんと体系だってイタリア料理の情報入手や勉強を続け、イタリア本場からの仕入れの工夫をし、提供するワインについてもかなり入念にセレクトしている様子を感じたんですね。

「メゼババ」は自著でも紹介をしているお気に入りの店だったものの、ここまで予約が取れなくなると行く機会もないかなとあきらめていたところ、ひょんなことでお誘いをいただき訪問。相変わらずシェフひとりで、慌てず動じずマイペースでしたが、逆に客に迎合しないご自身の流儀での仕事ぶりが、進化につながっているのかなあと気づいたんです。

「メゼババ」は、皆がいうところのイタリア本場な塩辛さ(それが正しいかどうかは別として)が特徴の一つでした。過去には頬をすぼめるぐらいの塩辛さに驚くこともあったけど、その個性は守りつつも、胡椒、唐辛子、ハーブ、カラスミなどを使って塩味を起点とするベクトルがさまざまな方向に伸び、すでに塩辛さにすら気づかない完成度になっていました。

なんだかすごくうれしくて、そして、予約の取れない店にも労をいとわず行くべきだと自戒。さとなおさんにもお伝えしたいと思った次第です。
posted by 伊藤章良 at 17:00| イタリアン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月31日

さとなお:食べ方がずいぶん変化してきました(雑談)

まぁボク自身の食べ方がずいぶん変化しましたからねえ。
以前は「とにかく新店! 話題の店! うまい店!」って思って、数週間前から予約入れてワクワク食べていたし、週5店くらいは新規開拓していたけど、今はそういう食べ方が激減しました。

情報やトレンドを追うのに飽きたこともあるし、味的には「いろいろ想像つくようになっちゃった」感じでしょうか(偉そうな意味ではなく、自分が驚くタイプの味に関して、という)。

まぁちゃんとしたクオリティの新店がとても増えた、のも大きいんですけどね。
傾向的に「味より気分」「料理より人」になってきました。

だから、店選びのときに頭に真っ先に出て来るのは「今日の気分に合う数店」。
そしてそれら数店は「予約して行きたくない」。

なんか、もっと自分のその夜の気分や疲れを、さらっと溶かしに行きたいんですよね。
もちろんおいしい思いもしたいんだけど、そういう「今の気分の溶解とか共有」が目的だから、前から予約して行くのでは無理なんです。予約しちゃうと、気分じゃなくて味が目的になってしまう感じ。うまく言えないけど。

その次に頭に出て来るのは「応援したい数店」。
これも予約して行くというよりは「空いてるなら行くよー」って感じが自分的には心地よい。
だから、その夜、電話したいんです(ネット予約もいや。予約時の声のニュアンスを聞きたい)。

「おいしそな店、いつか行きたいと思ってた店」はそのあとに出て来るかなぁ。
これは「味目的」なので、数週間前から予約したいし、そうしないと行けない店も多いんだけど、上記二つの方がずっと心地よいこともあって「ずいぶん前から予約して満を持して行く」という行動が激減してしまいました。

まぁ独立して働き方が変わったこともありますけどね。
特に最近は夜にラボをやっていることも多いので、ディナータイムが潰れちゃう(もしくは深夜めに行く)ことも多く、新規開拓がままなりません。

だから、この「対談」でも、ネタがなくて困ってますw
ということで、すいません、久しぶりにこんな雑談で一回お茶を濁させてください。

2016年、伊藤さんとは偶然ちらりと会えましたね。
来年は早めに一度、食事をしましょう。

2017年もよろしくお願いします。
posted by さとなお at 16:11| 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月30日

いとう:角屋(西麻布)

断片的ではあるものの、昨今のさとなおさんの料理店に対する見方に接すると、自分自身の考えが軌道修正されていく様子がよく分かります。
SNSにしても、自分のタイムラインにはファインダイニングや予約の取れない店での会食の様子ばかりが延々と連なるので、日々ブラウジングしているとその状態が普通のように思えてきますよね。それが今一つ納得できず、昨今はほとんどタイムラインを追っかけなくなりました。

食通というあくまでマイノリティな存在が飲食業界を左右するようになってしまっても、それはいびつで不健康に他なりません。そんな意味でも、さとなおさんからの居酒屋つながりでも、健康的な、そして「東京十月」とはちょっと趣が異なりますが、やっぱりオシャレな居酒屋「角屋」を今回は紹介します。場所は西麻布なので、さもありなんですが。

居酒屋と書きつつ、分類的には日本酒バルとかになってるみたい。だいたい日本酒バルって何なのか。というより、あまりにも本格的な日本酒の勢ぞろいと酒飲みの心を震わせる的を射た料理やつまみが多数あり、バルといった軽い言葉で押し込めてしまうにはもったいない良店なんです。

場所は西麻布の広尾側。「葡呑」の隣りかな。「角屋」の字のごとく角にあり、外に向かってフルオープンなので混雑ぶりなど中の様子もよくわかり、まず第一に入りやすい店。
店内は決して広くなく横に長いL字のカウンターと小さな向かい合わせのテーブルがいくつか。そんな環境ながら、ゆったりとしてスペースに過不足を感じさせず、ゆとりさえあります。

客のダイニングスペース以上に狭いのがカウンターの中。にもかかわらず、どこに入れてあるのか相当な種類の日本酒が脱兎のごとく出てきて、しかも蔵への愛情だっぷりかつ的確なポイントを突いたコメント。多くのソムリエや利き酒師、ひいてはやたら説明の長い鮨職人までも、ここのスタッフの日本酒解説を参考にするべきかと感じます。

加えて特筆すべきは、燗つけのうまさ。少ないスタッフで回してるので本当にバタバタなんだけど、その中においても、きっちりと温度を合わせた最適な状態での提供ぶりに驚き、日本酒がここまで膨らむものかと幸せになります。

料理も実はとても充実してまして、バックバーの黒板にびっしりと書かれたメニューの豊富なバリエーションにも瞠目。いわゆる珍味の盛り合わせに始まり、唐揚げ、さつま揚げのような揚げ物、そして野菜・魚介類の炒め、〆の蕎麦やカレーまでとどまるところを知りません。というのも、この店はすぐ近くにある「旬味 森やま」の姉妹店で、レシピや食材もそこと共有しているとか。

何しろ居心地がよくて、スタッフの皆さんの対応がとても気持ちいい。さらに銘酒と美味が揃っている。西麻布だし、表から見るとあまりそんな感じに見えないんですが、かなり中身の濃いところが、やはりバルではなく愛すべき居酒屋としたい所以なのです。
posted by 伊藤章良 at 16:57| 居酒屋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月31日

さとなお:「東京十月」(南青山)

そうなんですよ、鮨って天井知らずに高くなりましたよね(特に東京は)。

ボクは鮨にずいぶんお金を使ってきた方だと思うけど、もう今の新店トレンドはお財布的に追えません。インバウンドで惜しみなくお金を使う方が増えたのでしょうか。でも超高くても「その価値はある!」って満足できた店、最近一軒も出会えません。いいとこ半額だろ、と思う店ばかりです。ひとり鮨探訪も気持ちが挫けてきました。

中国料理店はボクはそんなに通ってないのでわかりませんが、鮨と同じ流れなんですね。
それは残念だなぁ。
最近では「前々からわざわざ予約して店に出かける」という習慣が(周りの人を含め)急速に減ってきて、前日とか当日に急に集まって出かけることが増えているのだけど、そうなるとなぜか高級中国料理店に行くという選択肢って激減するんですよね。高級な中国料理でうまいのにありつくためには前もって予約してコース組んだ方がいい、という先入観がボクの中で強いからでしょうか。

おいしくて気楽な「方哉」みたいな店、ふらっと行きたいな。でもそういう店は予約が取れないからふらっと行けないんですよねw

さて、10月も今日でおしまいですが、10月のうちにこの店をご紹介。

南青山は骨董通りの「東京十月」

骨董通りの小原流会館の地下にある居酒屋です(ちょっと前に紹介した「ふーみん」と同じ階です)。

居酒屋といっても、ものすごくオシャレなのでハードルは高めです。
内装のディレクションを彫刻家(アンテ・ヴォジュノヴィック)が手がけ、ほの暗い中にオレンジの壁と古民家風木材が浮かび上がってとても落ち着く作り。ホールの中央にその彫刻家制作のでかいテーブルがどんとあり、そこに水が流れている。その水の音と静かな音楽が混ざっていいBGMになっています(ちなみに、ここまで凝るならオーディオももうちょい凝って欲しいとは思いましたが)。

気になる店名ですが、なんか「Autumn in NY」みたいな感じで洒落たのかなと思ったのだけど、店主に聞いたら「いや、東京って十月が一年の中で一番アートイベントなどが行われるんです。そういうところに集まるクリエイティブな方々が集まるような店にしたくて」とのこと。

つまりはそういうコンセプトなので、まぁおしゃれなわけですよ。
だから「ガハハハ!」と楽しむ居酒屋というよりは、低音でこっそり語り合うのが似合う感じ。カウンターがなく、ホールと座敷ふたつなので、男一人でしっぽり飲むには向きません。でもカップルとか、4人くらいの静かで親密な会とかにはとっても良い店ですね。

日本の小さな酒蔵の日本酒と、なぜかアルゼンチン・ワインが揃ってます。
和を基調とした雰囲気の中でワインと和食を楽しめるという意味で、場所柄もあって「外国人接待」に覚えておくといいかもです。

料理は和食と創作和食と無国籍料理がいろいろ並んでいる感じ。とか書くとイヤな予感しかしませんが、でも手を入れすぎておらず芯はしっかり感じられるおいしい料理群でした。そして土鍋ご飯もおいしかったな。

その雰囲気から「きっとかなり高い」と思いがちだけど、まぁ青山なりではあるものの、それほどでもなく、想像の範囲(5000円〜10000円)で収まります。

この店、カウンターがあって無口でおしゃれなオヤジが向こう側に立っていたりしたら、ふらっと飲みに通うのになぁ。。。毎回惜しく思います。ま、いまのボクのオフィスから至近ということもあるのですが。


posted by さとなお at 16:46| 居酒屋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月30日

いとう:方哉(恵比寿)

「天春」、ここもぼくにとっては、さとなおさんのイメージなんですよね。
この界隈はぼくの基本的なら生活圏なので、店の前を通るたび、「あ、さとなおさん、どーしてるかなあ」とか思います。

それにしても、あのしじみ汁の、しじみの数を数えたんですか。
やっぱり、そこに挑戦してみようという人はいるんですね。
数えている間に冷めそうな(笑。

さとなおさんは東京の人なので、「天春」を昭和という表現を使われてましたが、ぼくにとっては「天春」は、古き東京のイメージもあります。天丼に載っている海老天が小さいのも、いかにも江戸前な感じ。
ただ、ぼくが東京に暮らし始めたとき、東京生まれ・育ちの先輩が、東京の人間は、しじみ汁のしじみは食わないんだよ。あれはダシを味わうものだからね。と言われて信じらないなあと思った記憶が(笑。

油についての論説も、ぼくたちにとっての朗報とともに、確かにその通りですよね。油自体の改良もあるし、店側のプレゼンテーションも変わってきました。
油ギトギト、なんていうのは、もう死語がもしれません。
そんな意味で、天ぷらやトンカツとともに、油ギトギトの代名詞だった中華料理も変わってきました。中華料理と中国料理を、日式大陸式としてすみ分けるという人もいるようですが、そんな話はまた長くなるので・・・。

今回は中国料理店を紹介します。恵比寿の「方哉」
中国料理らしくない店名、おや、中国にこんな地名はあったかなあとか、ふと考えていしまいますが、オーナーシェフのファーストネームとか。
子供のころから、まさやとは呼んでもらえなかったみたいで、逆に思い入れがある、みたいなお話しでした。

恵比寿は、もともとイタリアン・フレンチのイメージが強かったですが、最近中国料理店がポツポツと増えてるような気がします。
さとなおさんも、こちらで「廣安」を紹介されてましたけど、最近の中国料理店は、大陸のさまざまな地域、広東とか四川とか、はたまた台湾とか、それぞれ特徴をだして、専門料理店化してますし、それがある種の信用を得ている気もします。
ただ、恵比寿にできる店は、なぜかオールマイティなアプローチが多い。古老肉も黒酢で決めて、麻婆豆腐はがっつり辛く、点心や麺も多種類あったりと、オールラウンダーながら、いずれも特徴をとらえておいしく仕上げている。と、そんな感じ。

最近急激に飲食店が増えてきた、通称ビール坂と言われる通り沿いのビルの二階。このビルは少し前からあり、通りから奥まっていてこぶりな感じなので、飲食ビルとしてはなかなかのロケーションなんですが、どうも全体的には苦戦してる模様。この「方哉」が新風を巻き起こすかな、といった風情です。

クラゲとかローストポークとか、そういった前菜も、一つ一つ丁寧に味わい深く作ってあって、いいサンマが入りましたのでというオススメで試してみた中華風の刺身も、これまたピュアで白ワインが進む感じ。
炒め物をと思ってお願いした青菜も、火の入れ方が絶妙で修業の底力を見せてますし、その青菜のみずみずしさや苦みから、食材の仕入れにもかなり吟味をされているようです。それは前菜でいただいたサンマからも見受けました。

麻婆豆腐はお得意だとのシェフの話で、思いっきり辛いものを特別注文したら、調理の最中からダイニングのぼくまで目が痛くなるぐらいの利かせよう。ただ食べてみると。単に辛さが強いだけではなく、コクやうま味も十分にあって、ああおいしー、うわ辛いの繰り返し。さすがにお得意というだけの説得力がありました。

最後に、お会計を手にしたときの第一印象がとてもリーズナブル。
これは本当にありがたいことで、シェフの努力がしのばれます。
恵比寿が、ということではありませんが、最近、強烈に高い中国料理店が増え始め、中華がリーズナブルだという時代は終焉し、鮨のように天井知らずの高額化が進むのかなあと危惧しています。
そんな中で、ぼくたちは「方哉」のような店の登場を待望していたのかもしれません。
posted by 伊藤章良 at 20:52| 中国料理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月31日

さとなお:天春(四谷三丁目)

「よろにく」は(いま見てみたら)2009年にボクもここで書いてますね。
やはりいい店は時代の流れ、たとえば肉なら「サシから赤身、新鮮から熟成」という流れを掴んできちんと進化していっているんですね。オフィスからも近いし、今度久しぶりに行ってみたいと思います(予約とれないらしいですが)。

時代の流れという意味では、「油」が悪者だった(カラダに悪いと思われていた)時代がずぅっと長かったですが、最近では「油はカラダに悪くない」という実験結果などがアメリカから広まり、油を使った料理が再注目されている気がします。

たとえばとんかつとか天ぷらとかの揚げ物も、以前の「おいしいけどカラダにちょっとねえ」という偏見が消え、中年のボクたちにも敷居が低くなった感じがしませんか?(少なくともボクはすごくよく行くようになりましたw)

最近頻繁に伺っているのが、四谷三丁目の「天春」

毎週木曜日に近くで仕事があることもあり、木曜のランチに行くことがとても多いです(以前ならランチに揚げ物とか意識的に避けていました)。

ここ、基本の天ぷらがおいしいのはもちろんなんだけど、名物「しじみ汁」(700円)が魅力で、水曜夜に深酒した日なんかはこのしじみ汁のために四谷三丁目に向かうくらいですw

ま、しじみを具にした赤だしなんだけど、名物というくらいですから強烈な個性があります。なにしろしじみが多い。三度ほど数えましたが、だいたい200〜230個くらいしじみが入ってます。ひとつひとつほじって食べてると箸を持つ指がつりますw そのくらいの量。だからしじみ汁だけでかなり時間がかかるわけです。

で、天丼(ランチは1200円)も実においしいので、ここからが難問になります。
しじみ200個超を攻略していると、天丼が冷める。
天丼を熱々のうちに掻き込んでると、しじみ汁だけ残ってしまう。
ううむ・・・

ボクの中の解としては、
・熱々のうちに海老をおかずにごはんを掻き込む。
・しじみにとりかかり、1/2くらいしじみを食べる。
・赤だしで残った天丼(かき揚げとごはん)を食べる。
・最後に1/2くらいのしじみを味わう
ですかね・・・
まぁ毎回迷うのですがw

カウンターで食べていると、夜の仕込みをしているご主人の手元をずっと見ながら食べられます。惚れ惚れするような手さばきと丁寧さです。そして、いまはなき「楽亭」のご主人にもなんとなく似ていて・・・つまりは、夜もかなりおいしい、ということですね。

内装も昭和の天ぷら屋さんぽくて好ましいし、おばちゃんたちの接客も昭和っぽくて好き。四ッ谷近辺だと荒木町に行ってしまうことが多いのですが、常に「天春」は候補に入れる感じです。

posted by さとなお at 21:39| 天ぷら | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする