2016年11月30日

いとう:角屋(西麻布)

断片的ではあるものの、昨今のさとなおさんの料理店に対する見方に接すると、自分自身の考えが軌道修正されていく様子がよく分かります。
SNSにしても、自分のタイムラインにはファインダイニングや予約の取れない店での会食の様子ばかりが延々と連なるので、日々ブラウジングしているとその状態が普通のように思えてきますよね。それが今一つ納得できず、昨今はほとんどタイムラインを追っかけなくなりました。

食通というあくまでマイノリティな存在が飲食業界を左右するようになってしまっても、それはいびつで不健康に他なりません。そんな意味でも、さとなおさんからの居酒屋つながりでも、健康的な、そして「東京十月」とはちょっと趣が異なりますが、やっぱりオシャレな居酒屋「角屋」を今回は紹介します。場所は西麻布なので、さもありなんですが。

居酒屋と書きつつ、分類的には日本酒バルとかになってるみたい。だいたい日本酒バルって何なのか。というより、あまりにも本格的な日本酒の勢ぞろいと酒飲みの心を震わせる的を射た料理やつまみが多数あり、バルといった軽い言葉で押し込めてしまうにはもったいない良店なんです。

場所は西麻布の広尾側。「葡呑」の隣りかな。「角屋」の字のごとく角にあり、外に向かってフルオープンなので混雑ぶりなど中の様子もよくわかり、まず第一に入りやすい店。
店内は決して広くなく横に長いL字のカウンターと小さな向かい合わせのテーブルがいくつか。そんな環境ながら、ゆったりとしてスペースに過不足を感じさせず、ゆとりさえあります。

客のダイニングスペース以上に狭いのがカウンターの中。にもかかわらず、どこに入れてあるのか相当な種類の日本酒が脱兎のごとく出てきて、しかも蔵への愛情だっぷりかつ的確なポイントを突いたコメント。多くのソムリエや利き酒師、ひいてはやたら説明の長い鮨職人までも、ここのスタッフの日本酒解説を参考にするべきかと感じます。

加えて特筆すべきは、燗つけのうまさ。少ないスタッフで回してるので本当にバタバタなんだけど、その中においても、きっちりと温度を合わせた最適な状態での提供ぶりに驚き、日本酒がここまで膨らむものかと幸せになります。

料理も実はとても充実してまして、バックバーの黒板にびっしりと書かれたメニューの豊富なバリエーションにも瞠目。いわゆる珍味の盛り合わせに始まり、唐揚げ、さつま揚げのような揚げ物、そして野菜・魚介類の炒め、〆の蕎麦やカレーまでとどまるところを知りません。というのも、この店はすぐ近くにある「旬味 森やま」の姉妹店で、レシピや食材もそこと共有しているとか。

何しろ居心地がよくて、スタッフの皆さんの対応がとても気持ちいい。さらに銘酒と美味が揃っている。西麻布だし、表から見るとあまりそんな感じに見えないんですが、かなり中身の濃いところが、やはりバルではなく愛すべき居酒屋としたい所以なのです。
posted by 伊藤章良 at 16:57| 居酒屋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月31日

さとなお:「東京十月」(南青山)

そうなんですよ、鮨って天井知らずに高くなりましたよね(特に東京は)。

ボクは鮨にずいぶんお金を使ってきた方だと思うけど、もう今の新店トレンドはお財布的に追えません。インバウンドで惜しみなくお金を使う方が増えたのでしょうか。でも超高くても「その価値はある!」って満足できた店、最近一軒も出会えません。いいとこ半額だろ、と思う店ばかりです。ひとり鮨探訪も気持ちが挫けてきました。

中国料理店はボクはそんなに通ってないのでわかりませんが、鮨と同じ流れなんですね。
それは残念だなぁ。
最近では「前々からわざわざ予約して店に出かける」という習慣が(周りの人を含め)急速に減ってきて、前日とか当日に急に集まって出かけることが増えているのだけど、そうなるとなぜか高級中国料理店に行くという選択肢って激減するんですよね。高級な中国料理でうまいのにありつくためには前もって予約してコース組んだ方がいい、という先入観がボクの中で強いからでしょうか。

おいしくて気楽な「方哉」みたいな店、ふらっと行きたいな。でもそういう店は予約が取れないからふらっと行けないんですよねw

さて、10月も今日でおしまいですが、10月のうちにこの店をご紹介。

南青山は骨董通りの「東京十月」

骨董通りの小原流会館の地下にある居酒屋です(ちょっと前に紹介した「ふーみん」と同じ階です)。

居酒屋といっても、ものすごくオシャレなのでハードルは高めです。
内装のディレクションを彫刻家(アンテ・ヴォジュノヴィック)が手がけ、ほの暗い中にオレンジの壁と古民家風木材が浮かび上がってとても落ち着く作り。ホールの中央にその彫刻家制作のでかいテーブルがどんとあり、そこに水が流れている。その水の音と静かな音楽が混ざっていいBGMになっています(ちなみに、ここまで凝るならオーディオももうちょい凝って欲しいとは思いましたが)。

気になる店名ですが、なんか「Autumn in NY」みたいな感じで洒落たのかなと思ったのだけど、店主に聞いたら「いや、東京って十月が一年の中で一番アートイベントなどが行われるんです。そういうところに集まるクリエイティブな方々が集まるような店にしたくて」とのこと。

つまりはそういうコンセプトなので、まぁおしゃれなわけですよ。
だから「ガハハハ!」と楽しむ居酒屋というよりは、低音でこっそり語り合うのが似合う感じ。カウンターがなく、ホールと座敷ふたつなので、男一人でしっぽり飲むには向きません。でもカップルとか、4人くらいの静かで親密な会とかにはとっても良い店ですね。

日本の小さな酒蔵の日本酒と、なぜかアルゼンチン・ワインが揃ってます。
和を基調とした雰囲気の中でワインと和食を楽しめるという意味で、場所柄もあって「外国人接待」に覚えておくといいかもです。

料理は和食と創作和食と無国籍料理がいろいろ並んでいる感じ。とか書くとイヤな予感しかしませんが、でも手を入れすぎておらず芯はしっかり感じられるおいしい料理群でした。そして土鍋ご飯もおいしかったな。

その雰囲気から「きっとかなり高い」と思いがちだけど、まぁ青山なりではあるものの、それほどでもなく、想像の範囲(5000円〜10000円)で収まります。

この店、カウンターがあって無口でおしゃれなオヤジが向こう側に立っていたりしたら、ふらっと飲みに通うのになぁ。。。毎回惜しく思います。ま、いまのボクのオフィスから至近ということもあるのですが。


posted by さとなお at 16:46| 居酒屋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月30日

いとう:方哉(恵比寿)

「天春」、ここもぼくにとっては、さとなおさんのイメージなんですよね。
この界隈はぼくの基本的なら生活圏なので、店の前を通るたび、「あ、さとなおさん、どーしてるかなあ」とか思います。

それにしても、あのしじみ汁の、しじみの数を数えたんですか。
やっぱり、そこに挑戦してみようという人はいるんですね。
数えている間に冷めそうな(笑。

さとなおさんは東京の人なので、「天春」を昭和という表現を使われてましたが、ぼくにとっては「天春」は、古き東京のイメージもあります。天丼に載っている海老天が小さいのも、いかにも江戸前な感じ。
ただ、ぼくが東京に暮らし始めたとき、東京生まれ・育ちの先輩が、東京の人間は、しじみ汁のしじみは食わないんだよ。あれはダシを味わうものだからね。と言われて信じらないなあと思った記憶が(笑。

油についての論説も、ぼくたちにとっての朗報とともに、確かにその通りですよね。油自体の改良もあるし、店側のプレゼンテーションも変わってきました。
油ギトギト、なんていうのは、もう死語がもしれません。
そんな意味で、天ぷらやトンカツとともに、油ギトギトの代名詞だった中華料理も変わってきました。中華料理と中国料理を、日式大陸式としてすみ分けるという人もいるようですが、そんな話はまた長くなるので・・・。

今回は中国料理店を紹介します。恵比寿の「方哉」
中国料理らしくない店名、おや、中国にこんな地名はあったかなあとか、ふと考えていしまいますが、オーナーシェフのファーストネームとか。
子供のころから、まさやとは呼んでもらえなかったみたいで、逆に思い入れがある、みたいなお話しでした。

恵比寿は、もともとイタリアン・フレンチのイメージが強かったですが、最近中国料理店がポツポツと増えてるような気がします。
さとなおさんも、こちらで「廣安」を紹介されてましたけど、最近の中国料理店は、大陸のさまざまな地域、広東とか四川とか、はたまた台湾とか、それぞれ特徴をだして、専門料理店化してますし、それがある種の信用を得ている気もします。
ただ、恵比寿にできる店は、なぜかオールマイティなアプローチが多い。古老肉も黒酢で決めて、麻婆豆腐はがっつり辛く、点心や麺も多種類あったりと、オールラウンダーながら、いずれも特徴をとらえておいしく仕上げている。と、そんな感じ。

最近急激に飲食店が増えてきた、通称ビール坂と言われる通り沿いのビルの二階。このビルは少し前からあり、通りから奥まっていてこぶりな感じなので、飲食ビルとしてはなかなかのロケーションなんですが、どうも全体的には苦戦してる模様。この「方哉」が新風を巻き起こすかな、といった風情です。

クラゲとかローストポークとか、そういった前菜も、一つ一つ丁寧に味わい深く作ってあって、いいサンマが入りましたのでというオススメで試してみた中華風の刺身も、これまたピュアで白ワインが進む感じ。
炒め物をと思ってお願いした青菜も、火の入れ方が絶妙で修業の底力を見せてますし、その青菜のみずみずしさや苦みから、食材の仕入れにもかなり吟味をされているようです。それは前菜でいただいたサンマからも見受けました。

麻婆豆腐はお得意だとのシェフの話で、思いっきり辛いものを特別注文したら、調理の最中からダイニングのぼくまで目が痛くなるぐらいの利かせよう。ただ食べてみると。単に辛さが強いだけではなく、コクやうま味も十分にあって、ああおいしー、うわ辛いの繰り返し。さすがにお得意というだけの説得力がありました。

最後に、お会計を手にしたときの第一印象がとてもリーズナブル。
これは本当にありがたいことで、シェフの努力がしのばれます。
恵比寿が、ということではありませんが、最近、強烈に高い中国料理店が増え始め、中華がリーズナブルだという時代は終焉し、鮨のように天井知らずの高額化が進むのかなあと危惧しています。
そんな中で、ぼくたちは「方哉」のような店の登場を待望していたのかもしれません。
posted by 伊藤章良 at 20:52| 中国料理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月31日

さとなお:天春(四谷三丁目)

「よろにく」は(いま見てみたら)2009年にボクもここで書いてますね。
やはりいい店は時代の流れ、たとえば肉なら「サシから赤身、新鮮から熟成」という流れを掴んできちんと進化していっているんですね。オフィスからも近いし、今度久しぶりに行ってみたいと思います(予約とれないらしいですが)。

時代の流れという意味では、「油」が悪者だった(カラダに悪いと思われていた)時代がずぅっと長かったですが、最近では「油はカラダに悪くない」という実験結果などがアメリカから広まり、油を使った料理が再注目されている気がします。

たとえばとんかつとか天ぷらとかの揚げ物も、以前の「おいしいけどカラダにちょっとねえ」という偏見が消え、中年のボクたちにも敷居が低くなった感じがしませんか?(少なくともボクはすごくよく行くようになりましたw)

最近頻繁に伺っているのが、四谷三丁目の「天春」

毎週木曜日に近くで仕事があることもあり、木曜のランチに行くことがとても多いです(以前ならランチに揚げ物とか意識的に避けていました)。

ここ、基本の天ぷらがおいしいのはもちろんなんだけど、名物「しじみ汁」(700円)が魅力で、水曜夜に深酒した日なんかはこのしじみ汁のために四谷三丁目に向かうくらいですw

ま、しじみを具にした赤だしなんだけど、名物というくらいですから強烈な個性があります。なにしろしじみが多い。三度ほど数えましたが、だいたい200〜230個くらいしじみが入ってます。ひとつひとつほじって食べてると箸を持つ指がつりますw そのくらいの量。だからしじみ汁だけでかなり時間がかかるわけです。

で、天丼(ランチは1200円)も実においしいので、ここからが難問になります。
しじみ200個超を攻略していると、天丼が冷める。
天丼を熱々のうちに掻き込んでると、しじみ汁だけ残ってしまう。
ううむ・・・

ボクの中の解としては、
・熱々のうちに海老をおかずにごはんを掻き込む。
・しじみにとりかかり、1/2くらいしじみを食べる。
・赤だしで残った天丼(かき揚げとごはん)を食べる。
・最後に1/2くらいのしじみを味わう
ですかね・・・
まぁ毎回迷うのですがw

カウンターで食べていると、夜の仕込みをしているご主人の手元をずっと見ながら食べられます。惚れ惚れするような手さばきと丁寧さです。そして、いまはなき「楽亭」のご主人にもなんとなく似ていて・・・つまりは、夜もかなりおいしい、ということですね。

内装も昭和の天ぷら屋さんぽくて好ましいし、おばちゃんたちの接客も昭和っぽくて好き。四ッ谷近辺だと荒木町に行ってしまうことが多いのですが、常に「天春」は候補に入れる感じです。

posted by さとなお at 21:39| 天ぷら | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月01日

いとう:よろにく(南青山)

一日遅れてしまいました。
週末、普段になくプライベートなことでバタバタしてしまいまして・・・。
申し訳ありません。

田町〜品川の海側って、もっともっといい店ができてもいいのにと思います。
以前、そっち側にあるレストランの店主に、なぜここを選んだの?と聞いたら、なんたって港区ですから、との回答でした。

レストランを楽しむ要因のひとつに、シェフの容姿や人柄ってありますよね。
チャウチャウに似ているシェフってええなあ(笑。

今回の店、都心だし有名店なんだけど、久しぶりにさとなおさんのいう「芯の太さ」を感じ痛み入ってしまった「よろにく」です。
「よろにく」は以前、さとなおさんも紹介されてましたね。

本当に久しぶりに行ってきました。
あまりサシの入った肉やホルモンが得意ではないけど牛肉は大好きというご夫妻と食事をすることになり、真っ先に頭の中にあがったのが「よろにく」でした。

骨董通りの裏にある立地や店内のスッキリ大人感、シルクロースという言葉まで生み出した和牛の赤身を中心とする品ぞろえ、驚きのデザートなどなど、ご承知の通り焼肉店における革新的なことをいくつも手掛けた店です。
現在ちまたであふれる赤身肉のブームは、ここ「よろにく」から端を発したと記憶しますが、それ以降の店は「よろにく」のコンセプトを拡大再生産することでも人気を博しました。

店主は昨今、日本料理店に通っているそうで、そこでの手法や素材の組み合わせにもヒントを得ているみたいですが、どこでもやってるウニ載せなどのありきたりではなく、魚介類と肉との融合にも瞠目の料理が登場しました。

ただ何より、肉をおいしく楽しく食べさせようというスタッフ全員に共通したサービス精神。食べるだけではなく、肉を通じて様々な驚きや発見までも導くエンターテイメント性は、もはや焼肉店にとどまらず、こんな店こそ日本独自の牛肉料理店として世界に発信したいものだと痛感します。

でも、やっぱり改めて感じたのは「よろにく」らしさ、なんですね。
つまり最初に戻って、芯の太さです。
数々の種類の赤身部位を様々な焼き方、タレ、合わせ技で食べさせる。この店がスタートしたときと基本は何も変わりません。料理もスタッフも、常にさわやかで鮮やかです。でも、その箱の中身は驚くほど進化を遂げているんです。

さとなおさんも乗ってた(笑)20年前のベンツしか見たことがない人が、今のベンツを見ても「あ、ベンツだ」と思える、そんな例えが分かりやすいでしょうか。

posted by 伊藤章良 at 18:49| 焼肉・韓国料理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月30日

さとなお:ラ・チャウ(田町)

伊藤さん、またまた魅力的な店のご紹介、ありがとうございます。

とはいえラストオーダー1930ってw
まぁでも住宅街ですもんね。

これからはレストランも地域に溶け込んで地域で機能するカタチが理想だと思いますが(そしてそういう店がじわじわ増えている実感がありますが)、東京近郊の場合、どうしても勤めで都心に出る人が多いので地元の専業主婦たちのたまり場になり、雰囲気が ”そちら側” に偏っていく傾向にあると思います。奥様ウケする料理や盛りつけになるというか・・・

まぁそれはそれで需要ですからいいと思いますが、その延長線上にトウキョウ・イタリアンとかがある気がします。芯の太いそのお店の料理が百合ヶ丘という住宅街に根付くかどうか、注目したいです。

では、ボクも芯の太いイタリアンを。
田町の「ラ・チャウ」です。

ここはね、まずシェフの見た目が太いw
これは良い意味です。昨今、こんなに美味しそうなシグナルを発しているシェフはあまり記憶にありません。もちろん太ったシェフは多いのですが、なんだかホント、美味しそうなんです。しゃべり方も笑顔も。

そして、ヒマがあると客席にすぐ出てきます。

ホールを任された男性のサービスも「やって当然のことのひとつ上を行くサービス」で、実に目端が利いていてそのうえジョークもしつこくない程度に入れて、本当に感心したんだけど、そんな彼の後ろからシェフが頻繁にニコニコ出てくるんです。このダブルのプッシュは効きました。料理の味と楽しい時間を二倍にも三倍にもしてくれます。

実は味についてはそれほどの期待はなかったんです。
田町の海側、あまり美味しそうな匂いのしない地帯にあるせいもあって、まぁ美味しいだろうけどどうかな、と、期待せず出かけました。で、その甘い予想は見事に裏切られます。うまい。ひ弱なトウキョウ・イタリアンではなく、芯の図太い土着イタリアン。いい意味でびっくりでした。メニューも多くバリエも豊富。そしてどれを頼んでも裏切られないレベルの高さ。

店名の「ラ・チャウ」は、鍵という意味らしいです。
シェフがピエモンテ州の「La ciau del Tornavento」で修行したらしく、そこから取ったみたいですね。シェフが少しチャウチャウ犬に似てるのでそこからと誤解してたのは秘密ですw

一階にはよりカジュアルな「Vineria La Ciau」があります。
ある日のこと、地下の「ラ・チャウ」の席が取れず、一階のその店にしたんですね。そしたら地下からサービスの人やシェフが様子を見に来てくれただけでなく、「料理、地下にオーダーしていただいても持ってきますので!」と。

そういう、なんというか、さりげないサービスがうれしいお店です。


posted by さとなお at 17:13| イタリアン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月31日

いとう:トラットリア ピッツェリア クチーナ イタリアーナ ウルグス(百合ヶ丘)

なるほど、ザーサイがペアリングの相手ですか・・・。
「ふーみん」のザーサイがどんなテイストだったか、今はもう記憶にないんですが、そこまでさとなおさんに言われると、ザーサイ目的で「ふーみん」に久しぶりに行きたくなりました。

そしてぼくもさらに、ペアリングと言えそうな面白い体験はなかったかなあと、考えを巡らしていたんですが、先日、それよりも先に(笑)お伝えしたい店と出会ったので、そちらを先に紹介させていただきたく思います。というのも、場所が飲食をするには相当外れていて、店舗はもっと奇想天外(なんでここに)。さらなる驚きはそこの料理にアリというわけでして・・・。

場所の説明からしますと、小田急線の百合ヶ丘、もしくは新百合ヶ丘からタクシーでしょうか。あの界隈ってかなりの高級住宅街なんですが、大きなお屋敷の塀を見ながら、タクシーは細い道を巧みに走っていきます。途中、東京の都心がすべて見渡せそうな高台もあり、なかなか眺めはいいですよ。
ぼくが乗ったタクシーは、実はお店のことをご存知でした。お迎えの車の依頼がけっこうあるのだとか。なるほど、帰りもお願いしますといいつつ(笑、店に到着。

坂の中腹といいますか、もともとはガレージだったという話も聞く、そんなお屋敷の一角にある不思議極まりないスペース。入口こそガレージっぽいけど、店内に入ると天井が高くて厨房も広くピザ焼く薪窯も見えたり。意外と席数もある快適なダイニング。ギンガムチェックのテーブルクロスや壁に掛かった絵画のセンスも抜群で、はるばるやってきた感は一瞬で吹っ飛び、その反動と長年のカンで、ここでは間違いなくおいしいものと出会える確信が芽生えてきます。

そんななか、さっきまでサッカーやってました!みたいな感じの青年が一人。彼が「ウルグス」のシェフ。彼ひとりきりでこの店と広い厨房を切り盛りしています。聞けば、シチリア最大の町、パレルモで修業をしたとのこと。
以前、パレルモ近郊の空港からレンタカーでパレルモの中心に向かった際、そのあまりの混沌ぶりと全く英語が通じない環境に青ざめ、いったん空港まで引き返そうかと思った、そんな記憶がよみがえってきました。

まずなんといってもメニューが魅力的。
シェフの手書きゆえ、その文字のクセに慣れるのに少々時間がかかりますが(笑、読み解くにつれ、えええっ、そんな料理がここで味わえるのかと相当アガること間違いなし。イタリア語メニューの横には日本語でも表記されているものの、イタリア語をローマ字読みして注文したくなる、そんな臨場感なのです。

シチリアでとかパレルモのとか、解釈が付け加えられているメニューを目ざとく探して、しかも魚介中心にピックアップしていきます。ブリのカツレツを見つけてシェフに聞くと、本来シチリアならカジキマグロで揚げるところだけど、それをブリでやってみました、という。日本にある食材を工夫しつつも現地のママの味を届ける柔軟性も見えてきます。

最初に瞠目したのは、ピッツァ。
ピザよりはパスタ派で、東京の有名店すべてを網羅するほどピッツェリアは体験してませんが、最初の一口でウマイ!と叫び、その味は過去に東京で食べたどの店よりも好印象。具が載っている辺りの生地が特に薄く仕上げてあり、ソースや具材とのバランスがちょうどいい。薄くて軽い分、食べるピッチもどんどん早くなります。
我こそはピザフリーク、そして「ウルグス」のピッツァを未体験の方はぜひトライしていただきたく。ランチは、ピッツァの週とパスタの週とを交互に行っているそうで、ランチでもこの味は堪能できそうです。

トータルとして、野菜を多用することなく色彩に富む皿でもなく華美なデコレーションもない。まさにトウキョウイタリアンと対極の、小手先や手数でのアレンジは加えない出来栄え。写真に写してもあまりおいしそうには見えないんだけど(笑、食べるととんでもなくウマイ。しかも、これはぼく自身がシチリアで実感したんですが、本場シチリアの料理って意外と塩が強くないんですね。
そして「ウルグス」もまた、塩を利かせるというよりは、ハーブやソースのうま味で食べさせるといった、そんな幸せな仕上がりなんです。

いやはや、久しぶりにあらゆる面で驚きました。
突然、亀戸のイタリアンが流行るような時代。
情報にのみ貪欲な魑魅魍魎の餌食にはならないでと願いつつ、
真のイタリア料理好きには、ぜひぜひオススメです。
なお、シェフ一人の店なので、予約は必須。
そしてラストオーダーが19時30分ゆえ、ご注意のほど。


posted by 伊藤章良 at 17:34| イタリアン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月30日

さとなお:ふーみん(表参道)

ティーペアリングって面白いですね。
ブレンドしたり抽出方法・温度・時間を変えたりするのって、ありそうでなかったし、それをフレンチに合わせる&ワイングラスで出すなんてことも、まったく発想しませんでした。なるほどー。しかもきっとここに書かなかった驚きも多いのでしょう。近ければすぐにでも行くんだけどな・・・すばらしい店のご紹介、ありがとうございます。

では、広い意味でのペアリングつながりで。
今回は表参道は骨董通りの「ふーみん」を書いてみようと思います。

表参道や骨董通り近辺の方で知らない人はいないくらい有名な中華風家庭料理のお店ですね。ボクは通い始めて10年ほどでしょうか。30年以上も通っている人が多い店なのでまだまだヒヨッコです。

店名は、オーナーシェフの斎風瑞(さい・ふうみ)さんの名前から取られています。
台湾出身の彼女、もうかなりのご高齢のはずですが、毎日キッチンのど真ん中に立って背中を丸めてせっせとフライパンを振っています。この姿を見るのが好きなので、ボクは、開いていれば、カウンターの一番左端に座って、食べている間ずっとキッチンを眺めています。

夜ももちろんいいのだけど、ここはランチが特にいいですね。
16時までやっているので遅いランチにも便利ですが、とにかく美味い。美味いので混んでいて、15時すぎでも行列なことがたまにあるほど。12時〜13時のラッシュ時は推して知るべしです。

人気の定番メニューはいくつかあって、「豚肉の梅干煮定食」(超定番)、「納豆ごはん」(納豆チャーハンなのですが、これが癖になる味)、「中華丼」(盛り沢山でとてもうまい)、「五目うまにそば」(具だくさんで濃厚)などをよく食べます。あとは「日替わり」「おこわ」「ふーみんそば」「ワンタンメン」かな。毎回とても迷います。美味いので。

中でひとつ、と言われたら、中華丼が好きですね。
ふーみん超初心者には勧めません。他に特徴ある美味しい料理が多いから。でも、慣れてくると勧めます。なんか満足度が異様です。ほんとクセになる。あぁ食べたい。

で、ペアリング、です。
別に一品一品になにかペアリングがあるわけではありません。
この店のペアリングは「ザーサイ」なんです。

昼はザーサイの大きめの器がテーブルにどんと置いてあり、取り放題なのですね(夜は別料金)。
このザーサイの味が「ふーみん」を象徴していて、入店するとまずテーブルのザーサイを小皿にとって食べながら料理を待つわけです。で、ザーサイを食べた途端「あぁ〜、ふーみんだ〜」と脳と胃袋が「ふーみん化」するわけですね。これは料理にも影響を与え、どの料理もこのザーサイによって「ふーみん化」します。

こういう「一定のペアリング」って、ボクはすごく有効だと思っています。
ザーサイをどっかで見るたびにふーみんを思い出すし、ふーみんの味付けのザーサイを食べたくなります。メイン料理もバラエティ富んでいるのに、ザーサイという副菜で味がふーみん方向に変わり、独自の「統一された個性」になります。

この「いつ来てもあり、必ず食べる同じ味の副菜(前菜)であるザーサイ」は、実はこの店の裏主役だと思っています。
どの料理も、このザーサイによって「ふーみん化」する。料理ごとにいろいろ味のマリアージュを作ってくれるのもうれしいけど、常に同じ味で迎えてくれるのも得難いペアリングかなと思います。

posted by さとなお at 12:07| 中国料理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月31日

いとう:祇園MAVO(京都)

もう少し、ランチ特集で続けてみます。
といっても、店へのアプローチとか陽光とか、ましてや発見感とか、そういったものとは少し違って・・・。しかも12時一斉スタートという、あまりフレキシブル性にも富んでいない(笑。場所は祇園、しかも高名な「浜作」の前。おやおやという感じで恐縮ですが、京都のフランス料理店「祇園MAVO」のご紹介です。

もともとこの店は小田原にあり別の名前で営業していました。小田原時代に友人のsinpさんの誘いで訪れ、きめ細やかな食材へのアプローチや前衛的な料理との向き合いに驚き、共感したものでした。
そのときから、近々京都に移転して新たなコンセプトでレストランをスタートすると聞いており、やっと訪問することができた次第。八坂神社の近く、まさに高名な日本料理店が立ち並ぶエリアへの堂々たる参戦です。

「祇園MAVO」のステキなところは様々にあり、書くと長くなってしまうのですが、今回のテーマ、ランチに適したという面で言うと、ティーペアリングなる試み、つまりフランス料理とお茶のコースが選べるのです。
シェフも、京都で店を開いたからには、京都らしさを出したいとのコンセプトを掲げずっと試行錯誤されて来られたと聞いていたものの、ティーペアリングなる挑戦が、どこまで実現されているのかについては、ハッキリいって半信半疑でした。

ワインとお茶の両方出すコースもあるのですが、とにかくここはノンアルコールでいってみようとティーのみを選択。ちゃんとしたフランス料理の食事でワインを飲まなかったのは恐らく人生初、ですよ。ところが結論から述べると、あまりにも完璧にハマりすぎて、食後感としてはもしかしたら途中でワインを飲んでたのではないかと自問自答したほど。

これから試される方の愉しみをとっておくために中身を詳しく書くことはしません。世界中のお茶を抜群のセンスで何種類かブレンドしたり(それ自体が奇想天外なことですが)、抽出方法や抽出温度、抽出時間を変えたり(それを変えるだけで、まるでお椀のような旨味まで感じられるんです)。なにより特筆すべきは色。ほとんど全て(実は最後のコーヒーまで)ワイングラスで提供され、透明の中に色まで楽しませてくれます。例えば肉料理とのペアでは真っ赤なお茶だったり。

いやー、本当に驚き感激しました。そして、アルコール抜きでもフランス料理を愉しめることに気づかせてくださった、MAVOチームに大感謝です。
聞けば、こちらでブレンドしたお茶を何通りか小さな瓶に詰めて販売する計画もあるそう。酒飲みの妊婦さん、産後すぐのお母さんのために。というか出産のお祝いに今でもすぐにほしいですよ(笑。
また、このティーペアリングのみの店(アルコールを出さないレストラン)を東京に出す計画もお持ちのようで、そんな日が実現したら、また改めて、東京でのランチの名店として紹介させていただきます。

posted by 伊藤章良 at 17:55| フレンチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月29日

さとなお:ル・ビストロ・ドゥ・マ(南青山)

> 最近のイタリア料理店は、やっとトウキョウイタリアンの縛りから脱却し、それぞれがキチンとイタリアの地方色を出してくるようになりました

本当にそうですね。
一時期、東京の流行っているイタリアンって画一的でした。まさにトウキョウ風。でも最近は地方色がよく出てきていて食べていて楽しいですね。

あと、ランチ、わかります。

> ディナーの予習的な意味合いとかリーズナブルだからという観点ではなく、その店の個性や立地がランチに訪れたいと思うかどうか

これは意外とない。
ちょっと郊外に出るとわりとあるんですが、オフィス街や繁華街には特に少ないですね。すぐ思い浮かぶのは、築地「魚竹」とか西麻布「三河屋」とかの有名どころになりますが、意外と、駅の近くで老夫婦がやっている小さな定食屋さんなんかもボクにとってはそんな店かな。

去年の夏に、オフィスを乃木坂から骨董通りに引っ越して、まず探したのはそんな小さな定食屋さんです。でもまだ近くには見つかってません。ランチの名店としてはすぐ近くに「ふーみん」があるんだけど、ビルの地下という立地もあって伊藤さんが言う条件にちょっと届かない。

そういう意味で「ル・ビストロ・ドゥ・マ(Le Bistro de MA)」は、そんな感じに近いかもしれません。

 ※2016年にて閉店する予定らしいので、行かれる方はお電話を※

夜も行ったことがありますが、この店はランチかなぁ。
ちょっと天気のいい日の午後遅く、ひとりでふらりと訪れたい店だったりします。

骨董通りを青山通り方面からぶらぶら歩いて、小原流会館越えてスタバ越えて、最近よく行列ができている「クリントン・ストリート・ベイキング・カンパニー」を右手に見ながら左に曲がってひとつめの小道を右。その先に岡本太郎記念館があるのだけど、右に曲がってすぐの右側をよく見ると小さな小さなビストロがあるのです。

本当に小さいし、入り口が全く目立たないので、まず「発見感」があります。
入ってからもそのこぢんまりさに驚きます。小さなテーブルを無理矢理並べて12席ほど作ってる感じなので、人によっては落ち着かなく感じる方もいらっしゃるかもしれません。

混んでると確かに落ち着かない。
でも、すいているといきなり寛ぎの店に変わります。フランスの友人の部屋っぽくてちょっといいんです。耳を澄ますとBGMもフランスのラジオ。薄暗い奥のテーブルに陣取ってゆっくり時間を過ごしたくなります。

この店、素晴らしいことに、ランチを16時までやっているのですよ。
なので、15時くらいに行くとすいています。最近はカフェが増えてこの「午後遅めのランチ」需要を吸収してますが、ちゃんとしたビストロで午後遅いのはありがたいです。

ランチは夜のメニューをピックアップしたもの中心。
キッシュとかラタトゥイユとかの軽いセットがあってそんなに大量に食べたくない遅めのランチでも大丈夫です。
ちなみに夜は典型的なビストロ料理で美味しそうなメニュー名が安価に並びます。うれしいのは「オニオングラタンスープ」が「メインの前後に」という項目で常備されていること。最近ビストロから姿を消しているのでとてもありがたいです。

そして、この店の得意分野はこのあとに待っています。デザートです。

そう、この店、実はデザートがいいんです。
オーナーがパティシエで、もともと梅ヶ丘にあった「レ・トラス・ドゥ・マ(Les Traces de MA)」というパティスリーがレストランになったという経緯らしいので、まぁ想像つきますね。レジ横で焼き菓子やマカロンも売ってます。

でもって、ここのマカロンは「DEAN & DELUCA」でも売ってるとか。
外観が本当にさりげないので、そういう展開も意外性があって、これも「発見感」。

そんなこんなで、幸せな気持ちになってオフィスに戻る。
なかなか充実感ある、いい午後が過ごせます。

posted by さとなお at 22:46| フレンチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする