2017年09月30日

いとう:やす秀(四ツ谷)

馬込の環七沿いですか。とてもいい響きですね。隠れ家とも出会いそう。
街中華とネーミングされ絶滅危惧種となりつつある日本人による中華料理店。大きな特徴は意外にもオープンキッチンであることなんですが、それは、キチンとした食材を扱っているアビールでもあるんですよね。
個人的には、カレーやカツ丼までこなして定食屋的になっている店は、ちょっと違うカテゴリとも思っているんです。

さて、懐かしさつながり、というほど懐かしいわけではないのですが、以前さとなおさんに案内して、仕事仲間と行ってくださった四ツ谷の「後楽すしやす秀」、ご記憶かと思います。

この店は、親子二代にわたって四ツ谷の地で40年以上営業してきました。
そして9月の初め、少しだけ四谷三丁目寄りに移転オープン。
以前の店は、初代の起こしたいわゆる街場の寿司屋で、ランチにはバラすしを提供。夜も飲んでつまんで、少し握って・・・みたいな展開。ところが息子の代になり、ランチは廃止して夜もおまかせで勝負。様々な鮨の名店や築地の仲卸から本格江戸前鮨の極意を学び続けながら、こつこつと自分流の鮨を完成させつつありました。
ただ二代目曰く、以前の店はトイレが外だったり、つまみ中心でやってきたのでキッチンが狭く空調も効かない状態で、いつか移転したいととずっと探していたそう。

新しい店は、以前にもまして四ツ谷の深い路地裏にあり、表は「やす秀」という小さい看板のみ。近くに「すし秀」なる店があって、そちらに対する配慮とも聞きました。店内に入ると、本人曰くちょっとした仕掛けもあったりと(客はあまり気づかないんですが 笑)、思いが詰まっています。
席数は以前の店より絞って快適さは格段に増し、二代目との距離も、よいバランスで近くなりました。プライスは少し上がりましたが、以前の店が安すぎたので、ようやく適正価格の印象。それでも市井の予約の取れない鮨店と比較したら格段に安価。
新店舗では、酢飯を羽釜で炊くことにこだわり、開店まで羽釜で炊いている店に研修に赴き、その後も何度となく炊いて自分のものとすべく研鑽を積んでいます。
今後がますます楽しみな「やす秀」。さなおさんもぜひ新しい店にも足を運んでください。
posted by 伊藤章良 at 22:27| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月31日

さとなお:光楽亭(南馬込)

同姓同名の佐藤尚之さんがやっていた西麻布のポルトガル料理店の跡地!
懐かしすぎます(笑)。
あそこにはいろいろな思い出があるなぁ。。。いい店でしたよね。あの、佐藤さんに腕を見込まれた若いシェフはいまどこにいるだろう? 豚のアレンテージョ風とか、好きだったな。

では、懐かしつながりで。
というか、別にボクが個人的に懐かしいのではなく、「懐かしい匂いがする店」ということで、馬込の環七沿いにある『光楽亭』を紹介したいと思います。西馬込駅からでもかなりあるし、JR大森駅からも歩いて20分くらい。池上からも遠いしなぁ・・・陸の孤島にぽつりとある店です。

ある日、道を歩いていたら、某グルメ雑誌の編集の人とばったり会ったんです。
こんなところで出会うはずのない人なので「あれ〜?」と素っ頓狂な声あげつつ「どしたの?」と訊いたら、「いやいやいや、穴場の名店見つけちゃって」と関係ない話をし出す。

そのとき教えてもらったのが、『光楽亭』なんですね。
大森〜池上〜馬込近辺はそれなりに詳しいんですが、まったく知らず、「マジか!」と思ってすぐ出かけました。

いや、笑っちゃうくらいな穴場でした。
環七沿いではあるけど、開発から取り残されたような店なんです。元々はたばこ屋も兼ねていたみたいで、角地の小さなたばこ屋と合体したような不思議な外観。古いのれんも趣あって、昭和初期の匂いがぷんぷんします。

「行ったことないけど懐かしい」って店、あるじゃないですか。特に街場の中華店で。まさにそんな感じなのです。

カウンター6席のみ。
カウンターの中ではおばあちゃんがひとりで鍋をがしがし振ってます。
痩せて華奢そうに見えるのに、大鍋をがしがし振ります。どこからそんなパワーがと思わず見とれる風景。

で、くだんの編集者のオススメ通り「タマゴ入り肉ショーガヤキ(大)」(店内メニュー表記ママ)を頼みました。750円。
これが想像を超えてました。
なんと力強く、魂の根源を揺すぶるショーガヤキ!

皿一杯に広がったキャベツのみじん切りの上に、コーティングされてるかのごとくタマゴと絡み合った生姜焼きがどどんと乗っておるのです。そのでかさと迫力に気圧されつつひと口食べるとガツンと塩が舌に来る。「あぁ、これは昭和の労働者の味!」と目を閉じて味わいました。

生姜焼きって、そう、こういう荒っぽい食べ物だったよなぁ、最近のは上品すぎるよなぁ、と、なにかを思い出すような味なんです。あぁそういえばこういうのが欲しかったんだ。

瞬間的に「ビール欲しい!」と思ったけど、この店、ビールを置いてないんです。惜しいな、キリンラガーとか似合うのにな、と思ったけど、6席なんで仕方ないですね。

そうこうしているうちに、つなぎの兄ちゃんが揃って入ってきます。
ラーメンだギョーザだタマゴ入りレバーイタメだ肉入りモヤシソバだ肉入り中華丼だと頼み始めます。短い昼休みを邪魔してはいけないのでさっさか食べて外に出ました。

目の前にメニューがたくさん貼ってあるんですが、本当におばあちゃんひとりでこんなにたくさんの種類に対応できるの!というレベル。あぁ次は「タマゴ入りレバーイタメ」かなぁ。

営業時間は11時頃から20時頃まで。
夕方、腹減ったときとかに、飯かっこみに来たい良い店でした。

こういうタイプの街場の中華、あと数年でばたばたと消えちゃうでしょうね。
ボクたちはシアワセな時代を生きられましたね。

posted by さとなお at 22:52| 中国料理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月31日

いとう:Osteriaあんじゅ(西麻布)

「カフェ・オニヴァ」、すばらしいですね。
読んでいて絶対に行きたくなりました。
徳島って、テレビがNHKと民放一局しか入らないので、それが不満な県民によって一気に新しいインフラが広まったと聞きました。

実は、ぼくは2年ほど徳島に住んだことがあるんです。
そのときは、保守的な県民性を感じながら(例えば阿波踊りのような、爆発的な踊りの文化があるエリアって保守的ですよね)、一太郎のジャストシステムや大塚製薬が生まれる土壌で、すごくワクワクする将来性を秘めていたように覚えていました。

さて、懐かしい徳島の話が出たからではないですが、都内での懐かしい思い出から。
さとなおさんと同姓同名の方がスタッフにおられた、西麻布のポルトガル料理店。
一度、さとなおさんに連れ行っていただいたかと記憶しています。
対談でも姉妹店を紹介されたりしてました。

先日、新しくできた西麻布のレストランにお誘いいただき、地図をたどりながら行ってみたら、なんと、あのポルトガル料理店があった場所。というか、まさかここではないだろうとの先入観が強くて、なかなか目的の店が見つからず右往左往しました(笑。

この7月にオープンしたばかりのここは「Osteria あんじゅ」
オステリアというぐらいだからイタリアンだろう、あんじゅってフランス語かな、となるとフレンチとイタリアンの融合、ということか・・・。などと思い巡らせながら入店。

種明かしをすると、もともと桜新町で「あんじゅ」という日本料理店を営んでいた料理人に加え、自由が丘にある気鋭のイタリア料理店「mondo」で修業したシェフ、そのお二人による競演、いや饗宴が、実は「Osteria あんじゅ」となった訳です。。
「あんじゅ」という名前も、料理長の名前が安住さんで、子供のころからアンジュと呼ばれていたのかもなとか、これは全くのぼくの想像ですが。

最近時々、違うカテゴリの料理人が二人共同でお店を始めるという形態も出始めてますよね。例えばご兄弟だったりとか。今回の「Osteria あんじゅ」は、お二人とも同郷、鳥取県出身とのこと。

まずなにより、この店のデザイン、厨房の造りが素晴らしいんです。
大きなまな板があって冷たいものを用意する場に日本料理担当、鉄板やコンロなど、火を入れる厨房機器の前にイタリア料理担当がそれぞれ立って、彼らを囲むような形でゆったりとしたカウンター席が設けられています。
さとなおさんの記憶にあるポルトガル料理店とは、まったく違うレイアウトです。

そして客は、フルオープンキッチンの中で、時には離れて別の時には重なり合って動く二人の料理人の仕事ぶりを観つつ、次々と出来上がってくる料理に舌鼓を打つという趣向。エンターテイメント性のある楽しい空間で、客も一緒に参加しているような臨場感を味わいながら、時間の経過を忘れます。
とはいっても、昨今の似非劇場型(笑)みたいな、過剰な説明やトークはありません。というか、今はまだそんな暇はない、といった感じでしょうか。

コース料理は、最初ゆっくり日本料理でスタートし、お造りや八寸的なものも登場。時折りその中にイタリアンのエスプリも感じてハッとしたり。後半に至るにしたがって、スープ〜バスタ〜魚料理〜肉料理と、畳みかけるようにイタリアンのテイストが加わり、料理はどんどん洋風へと変化していきます。初めあっさり後半がっつり、日本人の最も好むパターンかなと思える展開。さすがにすごい量となるので(ぼくは満足でしたが 笑)、前菜だけをコースにし、あとはアラカルトでメインを選ぶことも可能。もちろん料理のキャラクターに合わせた自然派ワインも日本酒も完備。

もう一つ特筆すべきは、冒頭にも書きましたが店全体に流れるデザインのすばらしさ。変則的な形のカウンターだけではなく、カウンター席とテーブル席の間仕切りや天井など細かいところまで木を多用。持ち味である温かみがふんだんに放出され、料理人・ソムリエールの人柄と重なります。

加えて器。こちらも、店のデザインとうまく調和しつつ、時には強い色合いで全体を引き締める役割も果たしています。見た目と異なり驚くほど軽やかなものもあるので、ぜひ手に取っ手いただきたいです。
優れたデザインがここまで寛ぎに結びついていることに改めて嘆息。超一流のプロの仕事だよなあと感心しきりでした。

二人の料理人のぶつかり合いや融合は、まだ始まったばかり。多くの引き出しを持つであろう二人の今後がさらに期待できそうです。
posted by 伊藤章良 at 21:10| イタリアン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月30日

さとなお:カフェ・オニヴァ(徳島県神山町)

伊藤さん、せっかくだからカレーの話を続けようと思ったのだけど、たまたま5月に地方創成の先進事例である徳島県神山町に行ってきたので、その話を今日は書きますね。

徳島空港からクルマで約1時間半。山間のいわゆる寒村と言ってもいいような小さな町なのだけど、ネット環境は完璧だわ、東京の企業のサテライトオフィスは十数棟あるわ、シェアオフィスはあるわ、移住する若者も増えているわ、受け入れ側の住民の理解も(長い時間を経て)浸透しているわ、本当にすごい町でした。

2泊していろいろ見学したのだけど、本当に(本当に)感動的な取り組み事例でした。
なにより、地方にありがちな助成金頼りの数年の取り組みではなく、20年以上かけた息も長ければ気も長い取り組みなんですね。そういう視点に「何かが起こりそう」と若者たちが共感し、集まってくる感じでした。

そして、驚いたのが、神山町の食への意識の高さと、レストランのうまさなんです。

数千人しか住んでないような寒村なんですよ?
でも、東京レベルを越えるほどのビストロ、食堂、ピザ屋、カフェ、弁当屋などがぼこぼこあります。そこに地元のおじいちゃんとかおばちゃんとかが集まってきて、おしゃれかつ自然に食事している姿が、なんか奇跡的かつ感動的なんです。いやぁすごい町だわ・・・。

今日はその中でも象徴的な存在であるビストロ「Café on y va (カフェ・オニヴァ)」をご紹介します。

フランス語で「さぁ、行こう!」という意味の南仏家庭料理レストラン。
東京のアップルに勤めていた斉藤さんという女性が、神山を気に入って移住し、古民家を改装して2013年12月にオープンしたレストランです。

まずその古民家の外観と内装がすばらしいのだけど(カウンターも二階席もあります)、なによりいいのはそこに流れている空気。それはオーナーの斉藤さんの生き方に寄るものかもしれません。

週休3日で、年に一度は1ヶ月半ほど(それも一番いい季節に)ヨーロッパに研修旅行に行く。ランチが3000円、ディナーは5000円以上。使うのは地元の有機食材。ビオワインが揃ってる。薪で料理する。。。伊藤さん、お客さんが多い東京にあったとしてもかなりの先端かつ強気経営ですよね。小さな町でこれでなりたつと思えないじゃないですか?

それが、毎日すごい流行ってるんです。
研修旅行で1ヶ月半休んだ後なんて、住民に渇望感があるらしく、行列ができるほどの繁盛らしいです。
それも移住してきた若者じゃなくて、地元の農民たちが通ってくるんです。
地元に溶け込んでちゃんと成立しているところがすばらしいし、この店が核になってまた移住してきたり、(斉藤さんの海外人脈やブログ、FBの影響もあって)外国人もとても多く集まってきています(わざわざ神山を目指して旅行にくるヨーロッパ人とか多いらしいです)

そして、ここの料理のクオリティ。
そんなに期待してなかったのだけど、(比べるものでもないけど)都会でも十分競争力があるレベル。いや、この雰囲気や空気のうまさ、意外性などがおいしさを3割増しくらいしてくれるので、都会より勝ってるくらいです。いやぁ、なんだかすごいわ。。。

なんか、いろんな意味で「日本の未来」を感じるレストランでした。
いっしょに行ったメンバーも「神山全体も感動的だったけど、特にオニヴァにまた行きたい」という人多数です。

ミシュランの元々の考え方ですよね。
日本もこんな町、こんなレストランが少しずつ増えて行ってますね。

伊藤さんも機会があったらぜひ行ってみてください。

posted by さとなお at 22:10| フレンチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月31日

いとう:キッチン富ヶ谷(代々木八幡)

さとなおさん、南インド料理の力作、ありがとうございました。
やはり現地で体験すると違いますね。ぼくはインドには未訪なので、とても参考になりました。
かくいうぼくも、東京でインド料理といえば、南インド料理店しか行かないんです。でも中野の店は未訪でした。

ぼくの友人にも、手でインド料理を食べるつわものがいますが、彼は実に巧みに(かなり練習したとのことだけど 笑)指を動かすので、どんな店でも堂々たる姿。全く違和感がありません。あそこの領域まで達すると、きっと勇気など不要になるのかもしれませんよ。

もう一点なるほどと思ったのは、北インドのカレーは油や塩を多用するということ。ぼくも日本でカレー全般を食べるときにもいつも同じことを考えていて、カレーは、日本でいうところのダシや食欲のわくスパイスで食べるべき。日本の一般的なカレーは塩辛くて閉口します。

特に焼肉店などで、肉の切れ端を煮込んだと胸を張るカレー。そこそこ肉からのダシは出ているでしょうけど、ものすごく塩辛い。また塩辛くすればヒトは単純においしいと錯覚しゴハンもすすむので、評価も上がる。
でも、個人的には違うと言うか、真逆と思っています。

そこで、ずっと塩辛さではなくおいしく食べさせるカレーを探していて密かに発見した店を今回は紹介します。代々木八幡の「キッチン富ヶ谷」です。

ここって、かなり不思議な店。好立地なのにランチしか営業せず、スタッフは全員女性。スカーフを巻いた外国の方もおられて説得力も十分です(笑。謎は謎でいいと思い、持前の好奇心は発揮せず、毎回ゆるゆると楽しんでいます。

カレーの種類もいろいろで、個々には書きませんがすべて試してみました。中には少々塩味の濃いものもあります。なのでまずは「チキンカレー」をぜひ。上記したように、これぞスパイスとスープの妙味でゴハンを食べさせる、個人的に思うプロのカレーとしての、あるべき姿です。

カレーのスープを熟成させるためという理由で毎週水曜日はカレーがなく、その日のみラーメンを提供します。もちろんラーメンも食べましたが、内緒にしたいぐらいの美味しさ(笑。

スタッフは女性のみで全体的にラブリーな店内。カレー以外にヘルシー感あふれるサラダとか飲み物とかも付いてカフェ風の展開。もちろん女性の一人客多しとくると、個人的には苦手なタイプなんですが(笑、男性でも十分な量もあり、ここのカレーは病みつきです。

posted by 伊藤章良 at 11:25| カレー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月30日

さとなお:南印度ダイニング(中野)

伊藤さん、「くろいわ」すばらしいですね。
って、まだ行ってないのですが、読んでいるだけで伝わってきます。ありがとうございます。

日本料理つながりも考えたのですが、今回はまだ新鮮なところで「インド料理」を書いてみたいと思います。

3月にインド(デリー)に仕事で行ったんです。
で、いまさらですが、“南”インド料理に目覚めまてしまいました。

日本では、昭和時代から、基本的に「インド料理=北インド料理」でしたよね。
カレーも(北インド経由でイギリスで発展した)欧風カレーが多く、意外と南インド料理風なカレーは日本には入ってきてなかったと思います。

銀座で「ダバ・インディア」とか「ダルマ・サーガラ」とかが開店したころからでしょうか。南インド料理を日本の食べ好きたちがちゃんと認識しだしたのは(もうちょい前かもしれません)。北と南で料理が違う、という認識は、ちょっと前まで、一部のマニア以外ほとんど具体的には知らなかったと思います。

で、デリーの話。
最初の夜は北インド料理店に行ったんだけど、現地在住の人に「北インド料理は油と塩を多用して胃にもたれるから意外とインド人は食べない(日常的には)」とか言われて、それからは南インド料理が多くなりました。

確かに、比べると北インド料理は(特にカレーは)油と塩がきつい。
そして日本のカレーに近い。
でも、南インド料理はそれがなく、胃にもたれないんですね。野菜を多用するし。

また、北インド料理はナンやチャパティが中心なのに対して、南インド料理はライス(ジャスマティ・ライス)中心です。
※ちなみに日本では普通に出るナンですが、インドでは高級料理店でしか出ないらしく、普通はもっと薄いチャパティ。

そして、北インド料理は、定食をターリーと呼びますがが、南インド料理は定食をミールスと呼びます。

あと、北インドはノン・ベジ(ノン・ベジタリアン用料理)も普及してますが、南インドはベジ(ベジタリアン用の料理)が多いようですね。これはヒンドゥー教が基本ベジなので、ヒンドゥーの方が多い地域はその傾向にあるようです(ノン・ベジを食べられる店も多いです)。

などなど。
他にもいろいろあるのですが、なんというか、いろいろ違うものですねぇ。

こうして、現地在住の日本人に「デリーでのオススメの店」を次々に回らせていただきながら、北、南、東、タンドリー、ビリヤニ、ドーサ、独特のデザート群、屋台のチャイ、などなどを味わっていったわけです(一番印象的でうまかったのは、アーンドラ州がやってる食堂で食べた安いミールスでした)。

現地では、基本、朝からカレーです。
泊まったホテルの朝食もカレーでした。

日本の味噌汁にあたるような日常食「サンバル」(野菜ダールカレー)が常備され、そこに「本日のカレー」みたいのが並び、あとはおかず、って感じです。

そのサンバルに、ラッサム(野菜スープカレー)とポリヤル(野菜のスパイス炒め)を揃えて、バナナリーフのお皿の上に並べると、もうほとんど南インド料理のミールスになるわけです。

さて、インド現地での話は長くなるのでこの辺にするとして。

ボクは現地で南インド料理を食べ、北インド料理やベンガル料理などと比べた上で本当に大好きになりました。

そのうえ、ここでも書きましたが、カレーって手で食べるとおいしいんですよ!
http://www.satonao.com/archives/2017/03/post_3594.html

だから、日本に帰って、「南インド料理を手で食べられる店はないものか」と探しました。

有名なところでは大森の「ケララの風」でしょうか。
ここは客席横に手を洗うところがついている本格的なもの。

まぁ他の南インド料理店でも、手で食べれば良いんですが、やっぱりみんながスプーン使っているところで手で食べるのって、勇気いりますよね。うーむ・・・

とか考えているうちに友人が見つけてきてくれたのが、今日ご紹介する『南印度ダイニング』(中野)です。

堂々と手で食べられるカジュアルな名店ですね(それでもランチで手で食べるのは勇気がいると思いますが)。

この店は夜のミールスを予約して行くことをオススメします。
予約すると、本場さながらにバナナ・リーフをお皿にした本格ミールスが食べられます(本物のバナナリーフを使う店は日本でも数少ないと思います)。

そうなると、当然、手で食べるのが似合うわけです(バナナリーフの上でスプーン使うのって逆に難しいかも)。

バナナリーフをお皿に、右手だけを使って(左手は不浄なので使わない。右手も小指は使わない)食べるその楽しさ、うれしさ、アーンド「インドに小旅行してる感」と言ったら!

上にリンクしたブログでも書いたように、手で食べるときにトスすることによってカレーの混ざり方が深く均一になります。これでカレーが3倍うまくなる! 手を使っているおかげで「工作感」もあり、なんだか楽しいんですよ。

ただ、手で少量ずつ食べるせいでしょうか。わりとすぐお腹いっぱいになります。

スプーンだと大きな塊を食べられるけど、指だけだと小さなスプーンほどの量しか掬えず、掬ってはトスし、トスしては捏ね、捏ねては掬い、掬っては食べ、食べてはトスし、と忙しく繰り返しているうちに満腹中枢が「もうたくさん食べたよ、そろそろ満腹だよ」って信号送ってくるんですね。

だから最後のころはみんな無言でミールスと闘う感じになりました。腹一杯すぎて動きたくないとか、久しぶりに経験しました。これで定食3000円なんです(インドの定食は基本、おかず食べ放題のわんこそば状態ということもあります)。

なので、この店で夜のミールスを頼むなら、追加メニューを注文しないことです。
「最初にビールに合う何か一品でも頼んで」とか段取り踏んでると、ミールスを食べるころには後悔することになります。もう最初からミールス行っちゃってくださいね。

それと、どうせなら、サンバル、ラッサム、ダールを混ぜる妙味を経験していただきたいので、予約時に「ベジ」を予約するのをお勧めします。チキンやマトン入りの「ノンベジ」だと、サンバルが出てこなかったりするので、南インド料理のおいしさを十二分に楽しめません。

ということで、長くなりましたが、南インド料理、深いです。楽しいです。美味しいです。

伊藤さん、そのうち是非、ご一緒しましょう!

posted by さとなお at 20:01| カレー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月31日

いとう:くろいわ(恵比寿)

「㐂邑」って、少し前ですが一時期低迷してたことがありましたよね。木村さん自身にも迷いがあったと思います。でも、ミシュランで突然二つ星を取って話題をさらい、がぜん息を吹き返した。
ミシュランの日本における数少ない功績だと思ってます(笑。

木村さんを、一度新宿の「鳥茂」にお連れしたことがあるんです。
毎日10席未満の客を相手にしている中で、百席ちかい店内を常に満席にし、クオリティの高い料理を過不足なく出し続けている店に、相当驚愕し、「鳥茂」の料理をものすごくおいしそうに食べてたのが印象的。常に感動し吸収する姿勢が違うんでしょうね。それが、他の鮨店ではできないご自身の道を究めるモチベーションにもなってるのかなあと思います。

蛇足ですが、「㐂邑」の㐂という字、インターネットで普通に出るようになってきましたね。人形町の㐂寿司(が隆盛を極めてた頃って決して出なかった。それも「㐂邑」が人気店になったおかげかなあと、少し考えたりします。

ぼくも、「㐂邑」同様、孤高で崇高に独自の道を歩む日本料理店「くろいわ」を取り上げます。

「くろいわ」は、5年前のオープン当初も少し話題になりましたが、店の敷地に巨大マンションが建つということで立ち退きになり、一年半ほど前、徒歩数分の近い場所に、相当グレードアップした新たな店舗を設けました。

賞を獲りたい、有名になりたいをモチベーションに頑張る若い世代も個人的には頼もしく感じているのですが、「くろいわ」の店主はまさに正反対。食文化を探求すること継承することに余念がなく、食マスコミやインターネットの雑音もほとんど興味がない様子。

ぼくは、この「くろいわ」をすばらしいと感じる人こそ、本当に日本料理が好きなんだろうなと、実は思っています。今、特に東京の日本料理は極端な話題先行型で、一部の店にのみ興味や高評価や客が集まるという、なんともいびつな状況。
そして、その一部の店が本当に優れていたらいいんだけど、妄信的なファンによって評価や人気が誘導されているようで残念なんですね。まさにここでも、先月さとなおさんが言った、落語の独演会ばかりが開催されてるんです。

「くろいわ」は、料理ももちろんですが、それに加えて日本の季節や文化そのものを全身で客に感じてもらおうと、入口から席に着き、帰り支度をして辞するまで、様々に喜びや感動が享受できる趣向を凝らしています。食事の席を日本人のイベントとして捉え、四季折々の祭事とともに、日本料理の持つポテンシャルを発揮できるようようトータルで思考し提案している店です。

もちろん、一席10万円ぐらいする高級料亭に行けば、上記のような所作はごく自然に表現されているのかと思いますが、「くろいわ」のご主人のような若さで、その点に気づき日々勉強しながら自分の親ぐらいの歳の客にも堂々と伝えていく姿が、魅力的なんですね。

「くろいわ」の椀は、塩・醤油などの調味料を一切使わずダシだけで味を調えるのだそう。信じられないぐらい奥深くて、「うま味」とは何かという基本を、改めて知らされます。
くろいわ」では5年寝かせた昆布を使っているそうで、オープン当初に買い込んだ昆布が、年経ってやっと真価を発揮してくれるようになりました。やっぱり料理屋って、5年はやってみないと何も分かりませんね。という言葉がとても印象に残りました。

日本人の冠婚葬祭に特別な場を提供するため、日曜日の昼から夜まで、ほぼ通しで営業し月曜休みにするという英断も、なかなか他ではできない度量だと思っています。
posted by 伊藤章良 at 22:08| 和食(小料理・割烹・郷土料理) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月28日

さとなお:すし㐂邑(二子玉川)二回目

伊藤さん、一回飛ばしてすいません。
全体に「外食」(外で食べること)自体が少しカッコ悪くなりつつもありますよね。若者中心にハレとケの区別がなくなってきて(というか、ケで十分楽しいという背伸びしない方向になってきて)、時代は「家メシ」に大きく舵が切られている気がします。外で食べるとしても高級系より身の丈系。

それと、

>と同時にぼくは、予約が全く取れなくなってしまった店は
>興味も失います。答えは単純で、予約が取れなくなった時点で
>お店はその場に安住し自分のスタイルに疑問を持たなくなり
>変化や発展、進化は見込めない可能性が高いからです。

これ、同じようなことをある噺家さんがおっしゃっていました。「独演会ばかりする噺家は成長しない」と。
寄席だと「自分の噺」を聞きに来た人じゃない人もたくさん来ているけど、独演会は自分を聞きに来る人しか来ない。そうすると笑いのハードルがものすごく下がり、そんなに面白くなくても好意的に笑ってくれる(最初からその人の噺に笑いに来てるから)。

それに対して、寄席は、アウェイのことも多く、ファンじゃない人たちが集まる中で笑いと取らないといけない。これはとても鍛えられる、と。
寄席中心か独演会中心かで、長い間にはとても大きな差になるとおっしゃっていました。独演会中心だと、一部の天才を除いて成長が止まる、と。

レストランでも同じようなことは言えますね。
若くして独立し、予約が取れない店になったりすると、一部の人を除いて、“変化や発展、進化は見込めない可能性が高い”とボクも思います。

とはいえ、美味しいとどうしても人気店になるわけで、仕方ない部分もありますけどね。

その点、5年前にも一回書いたと思うけど(さとなお:すし㐂邑(二子玉川))、二子玉川の「すし㐂邑」は、あの立地にして全く予約が取れない人気店なのに、「変化・進化」を止めない点だけをとっても、天才のひとりなのかなと思っています。

自己模倣に陥らず、常に変化し続ける。
ものすごく人気がある現在の自分を、意識的に変化させていく。

成功体験を常に脱ぎ捨てていくって勇気がいります。
それを軽やかに実践している印象が、この店にはあります。

全部で20回は通っているでしょうか(いや、もっとかな)。
縁あって、ここのところ立て続けに伺ってるんですが、特にここ数年の「変化・進化」がすごいです。

熟成鮨って、腐る寸前まで熟成させるせいか、アプローチを間違えるとどのタネも違いがなくなってくるところがあると思うんですよね。どれもアミノ酸系の似た味になってくる。タネの個性が薄れるというか、同じ味の方向にまとまっていくんですよね。

数年前まで「㐂邑」はそうでした。
おいしいんだけど、どのタネも味が似ていた。

でも、ここんとこ、使う魚によっての熟成具合を掴んだのでしょう(個体差含めて)。タネごとに見事に個性が出ています。ここに至るまでの試行錯誤の道程を思うと本当に気が遠くなります(いったいどのくらいの魚を腐らせて無駄にしたのか)。

握り以外の料理も常に変化し、むちゃくちゃうまい。
いや、㐂邑、いま本当にオススメです。
親方の木村さん、他店もよく食べに行っているし、イタリアンシェフとコラボしたりして、刺激を自ら作っているようにも見えます。

変化・進化を止めない「㐂邑」。
特にいま乗っていると感じています。

posted by さとなお at 08:28| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月31日

いとう:メゼババ(亀戸)

2017年、一回目ですね。今年もゆっくり続けていきましょう。
昨年の暮れにさとなおさんが書かれていることは、逐一納得ができて、自分自身も、おおかたの期待を裏切りながら(笑、まさに同じような感覚のお店選びになりつつあります。

「美食家」という言葉にも、挨拶代わりに「どこが一番オススメ?」と聞かれるのも、そこに軽い嘲笑が入ってると感じることも多く、そんな自分たちは確かにマイノリティなんです。

で、さとなおさんが言う「今日の気分に合う数店」。実は2017年の今、そんな店の確保が一番難しくて、ガイド本やサイトも皆無。ただぼくとしては、今日の気分に間に合う店(今夜の予約が当日取れる店)をどれだけ知っているかが最近の一番の関心事だったりします。

と同時にぼくは、予約が全く取れなくなってしまった店は興味も失います。答えは単純で、予約が取れなくなった時点でお店はその場に安住し自分のスタイルに疑問を持たなくなり、変化や発展、進化は見込めない可能性が高いからです。
もちろんそれを責めているわけではなく、逆に頂点に至るまでの過程はすばらしいと思うし、イチローのような強靭な精神力の持ち主ではない限り、そこまで自分に厳しくはなれないでしょう。

ただ、一年ぶりに行った「メゼババ」は進化をしていて、持論に自信を失いました。亀戸のイタリア料理店「メゼババ」もご承知の通り大変な人気店。さらに、客を選んでいる食べログ掲載も拒否と、外敵というか他からの意見すら耳にしない状態。にもかかわらず、きちんと体系だってイタリア料理の情報入手や勉強を続け、イタリア本場からの仕入れの工夫をし、提供するワインについてもかなり入念にセレクトしている様子を感じたんですね。

「メゼババ」は自著でも紹介をしているお気に入りの店だったものの、ここまで予約が取れなくなると行く機会もないかなとあきらめていたところ、ひょんなことでお誘いをいただき訪問。相変わらずシェフひとりで、慌てず動じずマイペースでしたが、逆に客に迎合しないご自身の流儀での仕事ぶりが、進化につながっているのかなあと気づいたんです。

「メゼババ」は、皆がいうところのイタリア本場な塩辛さ(それが正しいかどうかは別として)が特徴の一つでした。過去には頬をすぼめるぐらいの塩辛さに驚くこともあったけど、その個性は守りつつも、胡椒、唐辛子、ハーブ、カラスミなどを使って塩味を起点とするベクトルがさまざまな方向に伸び、すでに塩辛さにすら気づかない完成度になっていました。

なんだかすごくうれしくて、そして、予約の取れない店にも労をいとわず行くべきだと自戒。さとなおさんにもお伝えしたいと思った次第です。
posted by 伊藤章良 at 17:00| イタリアン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月31日

さとなお:食べ方がずいぶん変化してきました(雑談)

まぁボク自身の食べ方がずいぶん変化しましたからねえ。
以前は「とにかく新店! 話題の店! うまい店!」って思って、数週間前から予約入れてワクワク食べていたし、週5店くらいは新規開拓していたけど、今はそういう食べ方が激減しました。

情報やトレンドを追うのに飽きたこともあるし、味的には「いろいろ想像つくようになっちゃった」感じでしょうか(偉そうな意味ではなく、自分が驚くタイプの味に関して、という)。

まぁちゃんとしたクオリティの新店がとても増えた、のも大きいんですけどね。
傾向的に「味より気分」「料理より人」になってきました。

だから、店選びのときに頭に真っ先に出て来るのは「今日の気分に合う数店」。
そしてそれら数店は「予約して行きたくない」。

なんか、もっと自分のその夜の気分や疲れを、さらっと溶かしに行きたいんですよね。
もちろんおいしい思いもしたいんだけど、そういう「今の気分の溶解とか共有」が目的だから、前から予約して行くのでは無理なんです。予約しちゃうと、気分じゃなくて味が目的になってしまう感じ。うまく言えないけど。

その次に頭に出て来るのは「応援したい数店」。
これも予約して行くというよりは「空いてるなら行くよー」って感じが自分的には心地よい。
だから、その夜、電話したいんです(ネット予約もいや。予約時の声のニュアンスを聞きたい)。

「おいしそな店、いつか行きたいと思ってた店」はそのあとに出て来るかなぁ。
これは「味目的」なので、数週間前から予約したいし、そうしないと行けない店も多いんだけど、上記二つの方がずっと心地よいこともあって「ずいぶん前から予約して満を持して行く」という行動が激減してしまいました。

まぁ独立して働き方が変わったこともありますけどね。
特に最近は夜にラボをやっていることも多いので、ディナータイムが潰れちゃう(もしくは深夜めに行く)ことも多く、新規開拓がままなりません。

だから、この「対談」でも、ネタがなくて困ってますw
ということで、すいません、久しぶりにこんな雑談で一回お茶を濁させてください。

2016年、伊藤さんとは偶然ちらりと会えましたね。
来年は早めに一度、食事をしましょう。

2017年もよろしくお願いします。
posted by さとなお at 16:11| 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする